衝撃的な報と先制計画
遺跡の塔を出たエリアンとライラは、塔から 1 キロほど離れた岩陰で休憩をとっていた。彼らが手に入れたエーテル安定装置 (Ēteru Antei Sōchi) は、エリアンの天空の鍛冶師 (Tenkū no Kajishi) の力によって完全に制御下に置かれている。
「すごいわ、エリアン。この装置が、本当に穢れたエーテルを中和 (Chūwa) している。空気が澄んできた気がする」ライラは、故郷を救う道具を抱きしめながら言った。
エリアンは装置の制御盤に、自身の鑑定 (Kantei) で分析した古代の回路を接続していた。彼は装置を安定化だけでなく、通信傍受 (Tsūshin Bōju) のためのアンテナとして再設定しようとしていた。
「この塔は、元々、広大なエーテル流を管理するための中継点 (Chūkei Ten) だった。ならば、この装置はエーテルの波動 (Hadō) を受信できるはずだ」エリアンは集中した。「『波動解析の原理 (Hadō Kaiseki no Genri)』を使って、大公爵の通信を盗聴する。」
彼の指先から微細なエーテルが制御盤に流れ込み、静電気のようなノイズが聞こえ始めた。
ジジジ… [ノイズ]… 「大公爵閣下へ、下層の回収は失敗。ゼオン騎士は…」 [ノイズ]
ライラは身を乗り出した。「聞こえる! 大公爵の兵士たちの声よ!」
エリアンは、ノイズの中から特定の周波数だけを抽出するために、頭の中で複雑なフーリエ解析 (Fūrie Kaiseki) を行っている。これは、彼の機械工学の知識が、この魔術世界で最も役立つ瞬間の一つだった。
数秒後、ノイズは消え、クリアな声が響いた。
「…回収は失敗したが、問題ない。第二段階に移行する。明日夜明けまでに、中央要塞 (Chūō Yōsai) の主要エーテル導管 (Shuyō Ēteru Dōkan)** を 100\% 稼働させろ。全ての穢れたエーテルを、天空の亀裂 (Tenkū no Kiretsu) へと逆流させるのだ。」**
エリアンとライラは、顔を見合わせた。その情報は、単なる敗北以上の意味を持っていた。
「逆流…だと?」ライラは震え声で呟いた。「天空の亀裂に穢れたエーテルを逆流させたら、エーテル流そのものが爆発 (Bakuhatsu) する。下層世界どころか、全ての大地が崩壊する!」
「そうだ。奴らは最初からエーテル抽出ポンプなんて生ぬるいことは考えていない」エリアンは装置の回路図を睨んだ。「『連鎖反応の原理 (Rensa Hannō no Genri)』。下層の世界を破壊し、その膨大なエネルギーを高次元攻撃 (Kō Jigen Kōgeki) の燃料にするつもりだ。」
それは、大公爵が、エーテルを独占するだけでなく、世界そのものを兵器化 (Heiki-ka) しようとしていることを意味していた。
「時間が無い。明日夜明けまでだ」ライラは弓を強く握りしめた。
エリアンは冷静だった。彼は、この巨大な陰謀を一つの巨大な機械的欠陥 (Kikai-teki Kekkan) として捉えていた。
「大公爵の中央要塞。そこには、穢れたエーテルを天空の亀裂へ送るための最終制御ユニット (Saishū Seigyo Yunitto) があるはずだ」
エリアンは、手元の安定装置に新たな修正を施した。彼は装置の演算能力を借りて、中央要塞までの最短ルート、そして要塞の防御機構を破るための最も効率的な破壊公式 (Mottomo Kōritsu-teki na Hakaishi Kōshiki) を計算させた。
「ライラ。ここからは、ただの冒険じゃない。これは、時間との戦いだ。俺たちが止めなければ、全てが終わる」エリアンは立ち上がった。彼の背後には、天空の鍛冶師として、崩壊する世界を修理するという重い責任がのしかかっていた。
「わかっているわ、エリアン。流星の弓がお前を守る。教えてくれ、天空の鍛冶師。次は、何を破壊すればいい?」ライラは弓を背負い、決意に満ちた瞳でエリアンを見つめた。
「主要エーテル導管だ。あそこを熱過負荷 (Netsu Kafuka) で溶断する。『臨界点突破の原理 (Rinkai Ten Toppa no Genri)』を使う」
二人は、大公爵の中央要塞へと続く、新たな旅路へと足を踏み入れた。




