天空の鍛冶師と世界の再生
あれから 1 年の歳月が流れた。
創造主のロジックが修復されたことで、下層世界とネオ・アルカディアは、物理法則の壁を越えて統一 (Tōitsu) された。空に浮かんでいた都市は、もはや高慢な機械貴族 (Kikai Kizoku) の支配下にはなく、全ての人々が協力し合う、真の技術文明 (Gijutsu Bunmei) の中心となっていた。
虚空の鍛冶師 (Kokū no Kajishi) の力、すなわち次元を操作する全てのエーテル能力を失ったエリアンは、ネオ・アルカディアの中心街の一角で、小さな機械修理工場 (Kikai Shūri Kōjō) を開いていた。彼の店には、壊れたエア・カーから家庭用ドローンまで、様々なものが持ち込まれた。
彼の仕事は、かつてのように**「法則を書き換える」ことではなく、「ネジを締め、油を差し、完璧に調整する」という、極めて具体的 (Gutaiteki)** で人間的 (Ningen-teki) なものになっていた。
「エリアン、また仕事が増えたわよ! 今度はアキラのバカが、演説中にスピーカーを壊したみたい」
ライラが、以前にも増して晴れやかな笑顔で、店に入ってきた。彼女は、今や統合された都市警備隊の隊長を務めていたが、休憩時間には必ずエリアンの店に顔を出した。彼女の流星 (Ryūsei) の弓は、今はただの狩猟道具として使われていた。
「またか。彼は構造的安定性 (Kōzōteki Antei-sei) が欠けているな」エリアンは、油のついた手を拭きながら言った。
アキラは、都市の再建委員会の議長として大活躍していた。彼は、エリアンが修理した世界 (Sekai) の土台 (Dodai) となるという使命を、立派に果たしていた。
ノヴァは、エリアンの店の地下で、統合されたエーテルインフラ (Tōgō sareta Ēteru Infura) の管理を行っていた。彼女の指先は、今も光速でキーボードを叩いている。
「修理屋さん、警告よ! 3 セクターの電力線に 0.0001\% の周波数ズレ (Shūhasū Zure) が発生! 昔なら無視できたけど、今の世界規範 (Sekai Kihan) では即座に修正しないと矛盾 (Mujun) が広がるわ!」
「わかった。ノヴァ、ケーブルの絶縁体を強化合金 (Kyōka Gōkin) に変えよう。物理的な強度を上げれば、エーテルの安定性も上がる。それが、俺の新しい法則 (Atarashii Hōsoku) だ」
エリアンは、特別な力を使わずとも、工学知識 (Kōgaku Chishiki) と経験 (Keiken) だけで、世界を安定させ続けていた。彼が植え付けた**「完璧な法則」**は、この次元の全てを、自律的に安定させていたのだ。
夕暮れ時、ライラがエリアンの隣に座り、コーヒーを差し出した。
「ねぇ、エリアン。あの時、創造主 (Sōzō-shu) の設計図に最後に書き込んだのは、何だったの?」ライラは、ずっと気になっていた質問をした。
エリアンは、少し微笑んだ。「『この世界の全ての生命は、存在価値 1.0 を持つ』という、最も単純 (Tan jun) で、最も非論理的な (Hironri-teki na) コードだ。創造主は、完璧な機械だけを認めようとした。だから俺は、命の価値 (Inochi no Kachi) を、そのシステムに強制挿入 (Kyōsei Sōnyū) した。」
彼の力は失われたが、彼の**「修理人」としての魂は、世界に永遠に刻み込まれた。彼はもはや天空の鍛冶師ではなかった。彼は、ただの、世界を愛する機械技師 (Kikai Gishi)** だった。
エリアンは、手に持った古い工具をそっと握りしめた。その工具の表面には、かつてタトゥーがあった場所から、微かに青い光 (Kasuka ni Aoi Hikari) が瞬いていた。それは、彼の修理の知識 (Shūri no Chishiki) が、物質に転写 (Tensha) された名残だった。
エリアンは、ライラの肩に頭を寄せた。青空の下で、新たな時代が始まっていた。
(完)




