水晶の実験室と宇宙の設計図
エリアンたちが降り立った空間は、これまでの混沌とは対照的だった。全てが水晶 (Suishō) で構成され、床、壁、そして空気中の粒子までもが、完璧な正多面体 (Seitamenshitai) の幾何学構造を保っていた。
「綺麗… だけど、息苦しいわ」ライラは、その完璧さに圧迫感を覚えた。
「ここは法則が絶対的 (Zettai-teki) だ。前の次元のように矛盾がない」エリアンは、周囲のエーテル流が数式 (Sūshiki) のように整然と流れているのを解析した。「ここは、創造主 (Sōzō-shu) が世界を設計した実験室 (Jikken-shitsu) だ。」
ノヴァは、その美しさに興奮していた。「見て、エリアン! このエーテル構造! 全てが無限級数 (Mugen Kyūsū) で成り立っているわ! ハッキングする隙なんて、1 ミリもない!」
彼らが3 歩進んだ瞬間、空間の法則が彼らの**「異物 (Ibutsu)」としての存在を検知した。床の水晶が軋みを上げ、6 体の幾何学防御体 (Kikagaku Bōgyo-tai)** が出現した。それは、完璧な正二十面体 (Seinijūmentai) の形をしたドローンだった。
「攻撃パターンは完全なベクトル (Kanzen na Bekutoru) だ! 逃げ場はないぞ!」アキラが代わりに叫んだ。彼らは、下層世界の戦い方では通用しないことを本能的に理解していた。
幾何学防御体は、一斉に高精度レーザーを放った。レーザーの軌道は、最小作用の原理 (Saishō Sayō no Genri) に従って導かれた、最も効率的で避けようのない死の直線だった。
エリアンは目を閉じた。彼の脳内で、敵の攻撃ベクトルと、周囲の水晶の格子 (Kurisutaru no Kōshi) の構造が、複雑な微分方程式 (Bibun Hōteishiki) として展開された。
「『最適幾何学解の原理 (Saiteki Kikagaku Kai no Genri)』!」
エリアンは、レーザーが到達する**0.01 秒前に、一瞬だけ存在する、防御体のベクトル計算の盲点を割り出した。それは、水晶の格子にわずかに存在する、非ユークリッド幾何学 (Hi Yūkuriddo Kikagaku) 的なズレ**を利用したものだった。
「ライラ! ノヴァ! 今だ!」
ライラは、エリアンが指し示した、空間の特異点 (Tokui-ten) めがけて、渾身の一撃を放った。矢は、まるで空間が 1 度だけ曲がったかのように、6 体の防御体の接続軸を同時に貫通した。
キィィン…
6 体の防御体は、計算を中断し、水晶の破片となって崩れ落ちた。
「完璧だったわ、エリアン! 1 度のズレが、全体の100\% の崩壊を引き起こすなんて!」ノヴァは興奮しながら、崩壊した防御体の残骸から露呈した、操作コンソール (Sōsa Konsōru) に飛びついた。
ノヴァがコンソールを解析すると、彼女の顔色が青ざめた。
「エリアン… 見て。これ…」
コンソールには、彼らの次元の構造図が表示されていた。そのラベルには、冷酷な記述があった。
『ユニバース・プロジェクト。ドラフト 4.7:バグ発生。廃棄済み。』
そして、その設計図の隣には、彼らが住んでいた次元を意図的に歪ませるための、最終欠陥コード (Saishū Kekkan Cōdo) を挿入した記録が表示されていた。
「彼らにとって、私たちの世界は、ただの失敗作 (Shippai-saku) だったのね…」ライラは怒りを込めてつぶやいた。
その時、実験室の中央にある巨大なエーテル計算盤の奥の扉が、ゆっくりと開いた。扉の向こう側には、純粋な高次元のエネルギーで満たされた、広大な空間が広がっていた。
そして、その空間の中央で、創造主 (The Architect) が、彼らを待っていた。それは、肉体を持たず、ただ巨大な思考そのもの (Shikō Sono Mono) として存在していた。




