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ネオ・アルカディアの光と影

巨大都市ネオ・アルカディア (Neo Arcadia)。それは、荒野の果てに突如として現れた、金属と光の怪物だった。

下層世界から見上げていた「空」は、ここでは足元にあった。この都市は、惑星の成層圏に近い高度に浮かぶ、巨大な人工大陸の上に建設されていたのだ。

「でけぇ… 下層の要塞なんて目じゃねえな」アキラは、空を埋め尽くす摩天楼と、その間を飛び交う無数のエア・カー (Ea Kā) を見て口を開けた。

「感心している場合じゃない。入口には検問がある」ライラが鋭く指摘した。都市のゲートには、エーテル・スキャナー (Ēteru Sukyanā) を備えた武装ドローンが列をなしていた。ここでは、市民IDを持たない者は即座に排除される。

「強行突破する?」アキラが拳を鳴らす。

「いや。『信号変調の原理 (Shingō Henchō no Genri)』を使う。静かに入るぞ」

エリアンは、ゲートを通過しようとしている一台の高級エア・カーに目を付けた。彼は構造鑑定 (Kōzō Kantei) を使い、その車から発信されている識別信号 (Shikibetsu Shingō) の波形を瞬時に解析した。

「エーテル波長 450 ヘルツ、暗号化キー『ガンマ』… コピー完了。」

エリアンは、自身の体内のエーテルを振動させ、その車の信号と全く同じ波形を、自分たち三人を包むように放射した。

「行くぞ。堂々と歩け。」

三人が検問ゲートを通過する瞬間、スキャナーの赤い光が彼らを照らした。

『ピピッ。認証完了。ようこそ、第 3 階級市民の皆様。』

ドローンは彼らを素通りさせた。アキラは冷や汗を拭った。「お前のその技、心臓に悪いぜ…」

都市の内部に入ると、そこは別世界だった。建物は全てが純粋エーテル合金で磨き上げられ、街路樹さえもクリスタルで作られていた。しかし、エリアンが気になったのは、行き交う人々だ。

彼らの多くは、体の一部、あるいは大半を機械化 (Kikaika) していた。

「どけ! 生身のクズが!」

前方で怒号が響いた。全身を黄金のサイバー・スーツで覆った機械貴族 (Kikai Kizoku) が、道端で清掃作業をしていた生身の老人を蹴り飛ばしていた。

「貴様の汚い呼吸が、この神聖な空気を汚しているのだ!」

アキラが飛び出そうとするのを、エリアンが腕を掴んで止めた。

「よせ。目立つな。」

「でもよぉ!」

「見ろ、アキラ。あの貴族の背中を。」エリアンは冷ややかに言った。

エリアンの視界には、貴族の背中に埋め込まれたエーテル・ドライブが、不自然なほど赤黒く脈打っているのが見えていた。

「あれは正常な動力じゃない。過剰摂取 (Kajō Sesshu) だ。この都市のエーテルは、濃度が高すぎて、彼らの精神回路を摩耗 (Mamō) させている。彼らは、自分たちが『壊れている』ことにさえ気づいていない。」

「壊れた楽園、ってわけね」ライラは嫌悪感を露わにした。

エリアンはデータパッドを取り出し、座標を確認した。「俺たちが目指す『神の廃棄場 (Kami no Haikijō)』は、この都市の地下深く、エネルギー・プラントのさらに下にある。」

彼は都市の地面を見つめた。構造鑑定を通して、彼は都市全体のエネルギーの流れに違和感を覚えていた。

通常、エネルギーは地下から都市全体へ供給 (Kyōkyū) されるものだ。しかし、ネオ・アルカディアのエーテル流は逆だった。都市全体が巨大な集光レンズのように機能し、上空から集めたエーテルを、地下の一点に向かって注入 (Chūnyū) しているのだ。

「この都市は、人々を生かすためにあるんじゃない」エリアンは結論付けた。「この都市自体が、地下にある『何か』を育てるための、巨大な培養槽 (Baiyōsō) だ。」

その時、都市の警報が鳴り響いた。

『警告。未登録のエーテル反応を検知。第 7 セクターにて、異端者 (Itansha) の侵入を確認。』

「バレたか?」アキラが身構える。

「いや、俺たちの信号偽装は完璧だ。…俺たちじゃない。先客 (Senkyaku) だ」エリアンは視線を路地裏に向けた。そこには、黒いフードを被った小柄な影が、警備ドローンに追われて走っているのが見えた。

その影が放つエーテルは、エリアンがよく知る「下層の匂い」がした。

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