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境界層の屈折とキャビテーション

武装集団のリーダーは、エリアンたちが作り出した「静寂な領域」を見て嘲笑った。「結界か? そんな薄っぺらい壁で、この改造チャージガンの出力を防げると思うなよ!」

ズガアアアアアン!

リーダーの銃から、極太のエーテルビームが発射された。それは周囲の不安定なエーテルを巻き込み、不規則に膨張しながらエリアンたちに直撃コースを描いた。

「伏せるな、ライラ。そのまま立っていろ」エリアンは静かに命じた。

ビームがエリアンの展開した半径 5 メートルの安定領域 (Antei Ryōiki) の境界線に触れた瞬間、奇妙な現象が起きた。ビームは彼らに直撃するのではなく、まるで水面に入った光のように、急激に角度を変えて逸れていったのだ。

ジュッ… ドオオオン!

ビームは彼らの横を通り過ぎ、背後の廃工場を吹き飛ばした。

「な、何が起きた!? 貴様、何をした!」リーダーは狼狽した。

「『屈折の原理 (Kussetsu no Genri)』だ」エリアンは淡々と解説した。「俺たちの領域内のエーテル密度は均一だ。対して、外のエーテルは密度が乱雑で高い。密度の異なる媒質の境界では、波は屈折 (Kussetsu) する。お前の攻撃エネルギーが高ければ高いほど、その屈折角は大きくなる。」

エリアンは、ただ防御壁を作ったのではない。物理法則を利用した偏向シールド (Henkō Shīrudo) を構築していたのだ。

「アキラ、右翼の敵を押さえろ! ライラ、リーダーの銃の冷却ユニットを狙え!」

「おう! 任せろ!」アキラは、下層要塞で奪ったエーテルシールドを展開し、領域の端から飛び出して敵の突撃兵に体当たりした。

ライラは流星 (Ryūsei) の弓を引き絞る。「領域内なら、風もエーテルも読める…!」

彼女が放った矢は、安定領域内を真っ直ぐに飛び、境界を出た瞬間に周囲の不安定なエーテルに乗って加速した。それは、リーダーが銃を再チャージしようとした一瞬の隙を突き、銃の冷却タンクを正確に貫いた。

ボオオオン!

銃が過熱し、リーダーの手の中で暴発した。

残りの敵兵たちが、サイバー化された義手や義足からエーテルブレードを展開し、一斉に襲いかかってきた。「小賢しい真似を! 切り刻んでやる!」

エリアンは一歩前に出た。彼の構造鑑定 (Kōzō Kantei) は、敵兵たちの身体に埋め込まれたエーテル循環ポンプ (Ēteru Junkan Ponpu) の粗悪な構造を見抜いていた。

「上層の技術にしては、メンテナンスがお粗末だ。流体の圧力が不均一すぎる」

エリアンは地面に手を触れ、敵兵たちの足元の地面を通して、特定の振動波 (Shindō-ha) を送り込んだ。

「『キャビテーション (Kyabitēshon / 空洞現象) の原理』!」

彼が送り込んだ振動は、敵兵の体内を循環するエーテル流の中に、急激な圧力差を作り出した。すると、エーテル液の中に無数の微細な気泡 (Kihō) が発生し、それが弾ける際の衝撃波が、ポンプや血管を内側から破壊し始めた。

「ぐああっ! 体が… 熱い!?」

「血が… 逆流する!」

敵兵たちは次々と血を吐き、地面に倒れ伏した。外傷はないが、内部のエーテル循環機能が完全に壊死 (Eshi) していた。

「これが… 修理 (Shūri) ?」アキラは、倒れた敵を見下ろして慄いた。

「いや、これは解体 (Kaitai) だ」エリアンは冷徹に言った。「彼らの装備は、これ以上稼働させると自爆する危険があった。だから、止めてやったんだ。」

戦闘は終了した。エリアンは、リーダーの残骸から、半分溶けたデータパッドを回収した。そこには、この上層世界の地図と、**「神の廃棄場 (Kami no Haikijō)」**と呼ばれる場所へのルートが記されていた。

「行こう。このデータによると、俺たちが探している世界の歪みの手掛かりは、この先にある巨大都市ネオ・アルカディアの地下にあるらしい。」

三人は、硝煙とエーテルの匂いが立ち込める荒野を後にし、遥か彼方に輝く、冷たく無機質な光を放つ巨大都市へと歩き出した。

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