遠隔錬成と秩序の崩壊
ライラが戦場を駆け抜ける間、エリアンは岩陰で静かに座り込み、目を閉じていた。彼の脳裏には、中央要塞の防衛コア (Bōei Koa) の構造図 (Kōzōzu) が3次元の計算グリッド (Keisan Guriddo) として投影されていた。
「3 分… ライラが供給線を断つまでの猶予だ」
エリアンは、自らに課された極限の集中力 (Shūchūryoku) と戦っていた。遠隔錬成 (Enkaku Rensei) は、物理的な接触なしに 500 メートル離れた場所にある物質の構造を再構築する、天空の鍛冶師 (Tenkū no Kajishi) の高度なスキルだ。これは、彼の体内にある全てのエーテルを、極めて細く、そして正確な信号 (Shingō) として放出することを要求する。
アキラは、懐疑的ながらもエリアンの護衛に徹していた。彼の周りを親衛隊の銃弾がかすめていくが、エリアンの集中力は微動だにしなかった。
「本当にあんなガキの言う通り、このまま突っ込んでいていいのか…?」アキラは不安を隠せない。
その時、ライラの動きが止まった。彼女は、防衛コアの塔へとエーテルを送り込むエーテル供給線 (Ēteru Kyōkyū-sen) が地下から露出している箇所を発見した。
**『あと 10 秒。切断!』**エリアンの意識がライラに警告を送る。
ライラは即座に、流星 (Ryūsei) の弓に炎のエーテルを込め、供給線に致命的な一撃を与えた。
パァンッ!
地下の供給線が断たれると同時に、塔全体が激しく点滅し始めた。
「今だ!」エリアンの目が開いた。その瞳は、純粋なエーテルを燃やし、青く輝いていた。
「遠隔錬成! 共鳴周波数注入 (Kyōmei Shūhasū Chūnyū)!」
彼は指先から、目に見えないほど微細なエーテル流を塔の方向へと放出した。このエーテル流は、防衛コアの内部結合構造と完全に一致する共鳴周波数で振動していた。
キィィィィィィィン!!
空気を切り裂くような高周波音が、首都の戦場全体に響き渡った。この音は、エーテル結界を維持している安定回路 (Antei Kairo) を内側から激しく揺さぶる。
アキラは耳を塞ぎながら、信じられない光景を目撃した。 3 層に重なっていた巨大なエーテル結界が、まるで石膏でできた壁のように、ヒビが入り始めたのだ。
バリバリバリ…
第 1 層が崩壊した。
1 秒後、第 2 層が崩壊した。
そして、第 3 層の結界が、共鳴 (Kyōmei) によって完全に粉々に砕け散った。
結界の崩壊は、親衛隊に計り知れない衝撃を与えた。彼らは防御を失い、武器のエーテル供給も不安定になった。
「結界が… 消えただと!?」親衛隊の指揮官が絶叫した。
レジスタンスは、一瞬の静寂の後、歓喜の雄叫びを上げた。
「結界が破られた! 進め! 中央広場を奪還するぞ!」アキラは興奮で我を忘れていた。彼はエリアンに駆け寄り、その肩を掴んだ。
「お前… やりやがったのか!? まさか、本当に… 天空の鍛冶師だと!?」
エリアンは肩で息をしながら、アキラの手を押し返した。彼の体はエーテル消費で限界を迎えていたが、その顔には微かな笑みがあった。
「まだだ。これは、ただの秩序の崩壊 (Chitsujo no Hōkai) だ。最終目標は、大公爵の制御コア (Seigyo Koa) を完全に修理 (Shūri) することだ。」
彼の視線は、結界が消えたことで露わになった、首都の最奥にある大公爵の塔 (Daikōshaku no Tō) の頂上へと向けられていた。そこには、この世界の全てを支配する、巨大な歯車が回っている。




