最後の槌音と新しい世界
エリアンが放った超高熱 (Chō Kōnetsu) のエーテル球体は、目標に吸い込まれるように命中した。
ズドドドドン!!
爆発音はなかった。その代わり、主要エーテル導管 (Shuyō Ēteru Dōkan) の 5 メートルのエーテル合金壁が、紙のように溶け落ちた。熱流は一瞬で合金の臨界点 (Rinkai Ten) を突破し、内部を流れる混濁エーテル (Kondaku Ēteru) を直撃した。
導管は切断され、蓄積されていたエーテルが制御不能な逆流 (Gyaku-ryū) を始めた。それは広間全体を飲み込むような、恐るべきエネルギーの奔流 (Enerugī no Honryū) となった。
「しまった… エリアン!」ライラは絶望的な声を上げた。
エリアンは、導管の切断面から 1 ミリも動かなかった。彼の体には既にエーテルは残されていない。しかし、彼の瞳は輝いていた。
「『制御された爆発の原理 (Seigyo sareta Bakuhatsu no Genri)』だ! ライラ、心配するな! これは解体 (Kaitai) だ!」
彼は、天空の鍛冶師 (Tenkū no Kajishi) の称号の真の力を発動した。自身の意識と構造鑑定 (Kōzō Kantei) を、暴走するエーテル流の波動 (Hadō) に同調させたのだ。
「再構築 (Sai Kōchiku) しろ… 熱 (Netsu) を… 衝撃波 (Shōgeki-ha) に変換しろ!」
暴走していたエーテル流は、エリアンの意志によって形状を歪められた。それは破壊的な爆発になる代わりに、中央シャフトの壁面に向かって一方向に押し出す指向性衝撃波 (Shikōsei Shōgeki-ha) となり、要塞の構造安定性 (Kōzō Anteisei) を根底から揺さぶった。
その隙に、ライラは動いた。 Zeon は、エリアンの信じがたい力に目を奪われ、一瞬動きが止まっていた。
「あたしを忘れるな、ゼオン!」
ライラは、流星 (Ryūsei) の弓に最後の力を込めた。彼女の矢は、衝撃波によって破壊されたゼオンの鎧の一筋の亀裂を正確に貫き、彼の再構築コア (Sai Kōchiku Koa) を完全に破壊した。
バキッ!
ゼオン騎士の体は黒いエーテルと共に崩壊し、二度と再構築できない塵となった。
勝利。しかし、その代償は大きかった。要塞は悲鳴を上げ、天井からは大量の瓦礫が落ちてきた。
「早く脱出するぞ! この要塞は 5 分で崩壊する!」エリアンはライラの手を掴み、脱出経路を探した。
彼らは、複雑なエーテル導管の迷路を、エリアンの構造鑑定が示す唯一の安全経路 (Anzen Keiro) を頼りに駆け抜けた。
要塞の外に出た二人の目に飛び込んできたのは、夜明けの空だった。しかし、それだけではない。
彼らが破壊した主要導管のおかげで、空を覆っていた分厚い混濁エーテルの層が、上層に向かって急速に薄れ始めている。その先に、ライラの故郷がある下層世界が、かすかな希望の光を取り戻していた。
エリアンは、中央シャフトから持ち出したエーテル安定装置を抱きしめた。
「これで、第一段階は終了だ。奴らの計画は阻止した」
「ええ、でも大公爵はまだ健在よ」ライラは、弓をしっかりと握り締めた。「次はどうする? 大公爵の首都 (Daikōshaku no Shuto) に向かうの?」
エリアンは、崩壊しつつある要塞の残骸を見つめ、冷静に答えた。
「その前に、一つ修理 (Shūri) するものがある。『原理の再定義 (Genri no Saiteigi)』が必要だ。」
彼の瞳には、遠く、上層世界にある、大公爵の巨大な権力構造が、修理すべき巨大な機械として映っていた。そして、彼の手に残る天空の鍛冶師のタトゥーは、静かに、しかし力強く、脈打っていた。




