臨界点突破と世界の溶断
エリアンとライラは、打ち倒した衛兵たちの横を通り過ぎ、中央シャフト (Chūō Shafuto) へと足を踏み入れた。シャフトは、要塞の最も深い核へと繋がっており、巨大な主要エーテル導管 (Shuyō Ēteru Dōkan) がまるで怪物の脊髄のように縦に走っていた。導管からは、今にも爆発しそうなほどの混濁エーテル (Kondaku Ēteru) が脈打っていた。
「主要エーテル導管は、このシャフトの最下層にある。熱過負荷で溶断するには、一撃で臨界点 (Rinkai Ten) を突破する必要がある」エリアンは集中した。「だが、降下中に待ち伏せがあるはずだ。」
彼の予感は正しかった。シャフトの壁面から、数十体の飛行防御ユニット (Hikō Bōgyo Yunitto) が出現した。これらは小型のドローンだが、エーテル弾を連射する能力を持ち、彼らの降下を阻止しようと編隊 (Hentai) を組んだ。
「鬱陶しいわね!」ライラは流星 (Ryūsei) の弓を構え、ドローンを狙い撃ち始めた。彼女の矢は正確にドローンを撃ち落としたが、数が多すぎる。
エリアンは、降下用のロープを固定し、エーテル錬成 (Ēteru Rensei) を最大限に活用した。彼はドローンを破壊するのではなく、ドローンの通信網を狙った。
「『共鳴破壊の原理 (Kyōmei Hakai no Genri)』!」
彼は、自身のエーテルを特定の不規則周波数 (Fukisoku Shūhasū) に調整し、それをシャフト全体に響かせた。この周波数は、ドローン同士が情報共有に使う極微細なエーテル波長と共鳴するように設計されていた。
キィィィィィィィン!
ドローンたちは一斉に動きを止め、空中でお互いに衝突し始めた。通信網が混乱し、制御を失ったのだ。
「これで 10 秒は稼げる!」
二人は全速力で降下した。最下層に到着したエリアンを待ち受けていたのは、厚さ 5 メートルの、純粋エーテル合金で覆われた主要エーテル導管だった。導管は、この要塞の全エーテル流を天空の亀裂へと送り出すための、最後の防壁だ。
「これだ… これを溶かせば、全てが終わる」エリアンは息を呑んだ。
そして、その導管の前に、一人の影が立っていた。それは、倒したはずのゼオン騎士だった。しかし、彼の鎧は完全に再構築 (Sai Kōchiku) されており、以前よりも遥かに強力な、黒いエーテルを纏っていた。
「貴様らには、ここを通させない」ゼオンの声は低く、重かった。「大公爵様の計画は、世界の構造そのものを書き換える。お前のような不純物 (Fujuunbutsu) に止められるはずがない。」
「再構築したのか…!」ライラは動揺した。
「構うな、ライラ! 時間がない! 俺は導管を溶断する! お前は、ゼオンの注意 (Chūi) を引きつけろ!」
エリアンは、残った純粋エーテル結晶と、ゼオンから吸収した不純エーテルの全てを手に集めた。彼は、自身の全エーテルを熱エネルギーに変換し、それを一点 (Itten) に集中させる準備に入った。
「『熱収束と破壊の最終公式 (Netsu Shūsoku to Hakai no Saishū Kōshiki)』… 臨界点 (Rinkai Ten) まで、あと 3 秒!」
ゼオンは咆哮し、エリアンに向かって黒いエーテルを放出した。ライラは流星の弓で迎え撃つ。彼女の矢は、ゼオンのエーテル障壁に次々と食い込み、わずかな歪み (Yugami) を作り出していく。
「やらせるか、虚空の鍛冶師!」ゼオンが迫る!
エリアンの手のひらに、全てのエーテルが収束した。それは、太陽の中心のような、青と白の超高熱 (Chō Kōnetsu) の球体となった。
「今だ!」 エリアンは叫んだ。
彼は、その超高熱の球体を、主要エーテル導管の表面の、構造鑑定で発見した最も薄い一点へと、零距離射撃 (Reikyori Shageki) で叩きつけた。




