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魔女と白兎の夢

星を追いかける事になった白兎と、花の魔女のエピローグ

 消えたあの子を見送って、私は後ろを振り返る。


「覗き見とはいい趣味をしてるじゃない? 見知らぬ誰かさん?」


 振り返った先には何も無い。


 いや姿が、無い。


 でも、確かに此処に居るのだ、私とあの子とは別に、もう一人。


「しらばっくれても無駄よ。此処は私達の精神世界、世界そのものである私から隠れる事はできないわ」


 キツイ口調で問いかけると、何かが動揺した様に気配が揺れた。


 見つかる事を想定していなかったのか、あたふたとした気配がする、


 やがて、目の前に現れたのは、一羽の兎だった。


 空色をした兎は左耳に六花の耳飾りをしている。深紅の瞳を所在なさげに彷徨わせ、此方を窺っている様だ。


「あら、可愛らしい。でも、それが本当の姿じゃないでしょう? ん? ……え、本体じゃないし、弱ってるから?」


 念話で伝えられる兎の事情に、私は額に手を当て、嘆息する。


 何で、こんなややこしい事になってるの、あの子は。


 如何やら、この兎はあの子を旅に送り出した、高次元の存在がまた別の思惑によって、送り出したらしい。


 らしいとは、兎の方も事情が呑み込めないまま、飛ばされたからだ。


 しかも、弱ったままなので、姿を顕現するのも難しく、小さな分身を飛ばしてやっとなのだと言う。


 言われた事は、あの子の旅を最後まで見届けて、自分がどうしたいか決める事。


 いきなり現れた見知らぬ二人に、そう言われて放り込まれた。


 で、姿が見えない事を良い事に、私達の会話を聞いていた……聞くしかなかった、と謝られた。


「で? 現時点であの子をどうするつもりなの? 何かするつもりなら……」


 と、凄んでみると兎は慌てて、否定した。


 身体ごと横に振っての否定っぷりに、ちょっと苦笑する。


 そして、ポソリポソリと自身の事を話し出す。


 語り終えた兎は、耳を抱える様に蹲って、全力で恥ずかしがっていた。


 その様子を私は楽し気に見詰めてから、兎の事を突いた。


「ふっふふ……なぁるほど……」


 これは、面白い事になってきたわ。


 なら、少し弄ってみましょうか? 魔女らしく。


 私は兎の首元に、緩く薔薇を巻き付けた。


 棘の無い深紅の薔薇。


 あの子とは色違いで対の薔薇を。


「さあ、行きなさい……あの子をよろしくね」


 兎に手を振ると、兎の姿も消えていく。


 あの兎も送られていくのでしょうね、あの子の所に。


 旅の果て、あの二人が見つけるのは……


「幸せだと良いなぁ……」


 何だか、凄く眠い。


 立っているのが辛くなって、座り込むとクラリと身体が傾く。


 ちょっとだけ、休もう……ちょとだけ。


 プツンと私の意識が途切れたのだった。

――――目覚め向かう花達の夢


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