プロローグ わかれめとうゆめ
これは、分かれ目を問いかける夢の旅路
繰り返す世界。
繰り返す結果。
行動だけが違うはずなのに、行きつく結果は皆同じ。
それでも、諦められなかった。
望む未来を……諦められなかった。
だから、何度も繰り返した。
でも、次第に選択肢が繰り返す様になった事に、気が付いた時。
初めて、迷った。
このまま、繰り返して良いのかと。
本当は、望む未来なんて無いのだと。
余計な痛みを産む前に、諦めた方が良いのではないのか? と。
けれど、喪失の痛みと記憶が、諦めさせてくれない。
繰り返しても進む? 諦めて止まる?
あぁ、もう……どうしたら良いのか、解らない。
世界の狭間で立ち止まり、顔を両手で覆った。
誰か。
誰か。
私に教えて。
この痛みの、迷いの答えを……教えて。
「なら、問いかけてみるか? 何処かの誰かに」
「……え?」
自分以外の声に、手を離す。
広がった視界に映ったのは、見た事が無い紅い青年だった。
全部が紅いわけじゃ無いのに、紅いと感じる不思議な人をただ、見詰める事しか出来なかった。
「自分だけで、答えが出ないのなら……別の誰かに問いかけてみるしかないっしょ」
そうだけれど……でも。
「此処には誰も……居ない」
「居ないな、この狭間に居るのは俺達だけ」
「なら……いったい誰に聞けばいいの?」
出来ないでしょう?
そう視線に籠めると、青年はニヤリと人が悪そうな笑みを浮かべた。
「だから言ったろ? 何処かの、誰かに聞けば良いって此処から、抜け出してさ」
「抜け出すって……それじゃあ……」
また、繰り返しが始まってしまう。
それでは駄目だと、続けようとした時、青年からデコピンをされた。
「解ってるっての。だから、俺が送ってやるよ。夢を通して此処とは違う世界へと」
「夢を?」
「そう、夢ならば何処へでも行けるし、何でもやれる」
それこそ、世界を越えてと青年は続けた。
「だから、少しくらい寄り道してこい。お前さんは真面目過ぎるんだよ」
そう言って、青年の手が視界を覆い隠す。
世界が真っ黒に染まるが、不思議と恐怖は感じなかった。
意外と彼の手が温かいから、かもしれない。
そして、緩やかに意識が何処かへと落ちて行った。
「さてと……ふーやんに力、借りないとなぁ」
旅へと送り出した後、俺は幼馴染の居る世界へと足を向けた。
これは、ふーやん案件。
きっとだが、この真面目ちゃんには必要なんだ。
本当の意味で並び立ってくれる、誰かが。
あーでも、閲覧者でも駄目かもなぁ……真面目ちゃんは対等とは見ないで、守る対象にしちまうだろうし。
負担が増えるだけだな。
「ん? あっ!」
逆ならどうだ?
閲覧者と手紙を逆にすれば……いけるかもしれない。
「よし! ふーやんに見繕って貰うか!」
膨大な想いの欠片の中には、一人くらい居るはずだ。
真面目ちゃんの想いに応える、誰かが。
心なしか早く、世界を渡る。
早く、繋いでやらないと。
真面目ちゃんの心が完全に壊れてしまう、その前に。