死を給う浜
島の東側にある海岸に2人はいた。
居住区は主に西側に集中している為、東側は特に人の手が入っていない様子だった。
所々に漂着物があるが、外国の言葉で書かれた物も多い。
「観光で来た人がよく人影を見かけるらしいですね……」
確かに…人っ子ひとりいなそうな感じでああるが……
浜の先には切り立った崖があり、そこから太い木がせり出す様に生えているのが印象的だ。
死を給う浜で……
西側は漁港があり小さな浜辺がある。それ以外で浜と呼べそうなのはここくらいであった。
(特に何か気になるものもなさそうだな……)
離島の特徴は多少見られるものの、それ以外はいたって普通の浜辺であった。
特に収穫もなく、早々に立ち去ろうとした時、前から自転車に乗って警察官がやって来るのが見えた。
「あっ、駐在さん」
「瀬奈ちゃんか、こんにちは。そっちの人は?」
職務質問ではないだろうが、島民以外の人間はあまり怪しまれない方が良いだろう。
葛西は簡単に自身の紹介をした。
「へぇ、記者さんなんだね。怪奇現象ねぇ……」
「駐在さんは何か知りませんか?」
「こうやって島中を巡回してるけど、特に気になった事はないねぇ……」
40半ば、といった所だろうか?気の良さそうな感じを受ける。
しばらく話をすると去っていったが、自転車に乗っている姿はどこかノスタルジーな気分にさせた。
「こういう島なんで、事件とかは全然起きないんですよ」
島全体から感じるのんびりとした空気やさっきの巡査の雰囲気からもそれは察する事が出来た。
犯罪を取り締まる、というより島民の世話役の様な感じなんだろう。
「もうそろそろ和真くんとの待ち合わせですね」
葛西は時計に目をやる。
針はちょうど12時を差そうとしていた。