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蛸壺の島  作者: 成田ごんぞう
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怪文書

曇天……そう形容するのがふさわしいのだろうか?

遠くを見るとわずかに晴れ間は見える。これ以上悪くなる事はなさそうだ。


昨日予定していた通り、今日は2人の男性の所へ赴くつもりだ。


「直樹くんの所が近いですね」


宿泊している所から港は近い。直樹の家は歩いて行ける距離にあった。


「おばさん、こんばんは」


瀬奈が親しそうに話す相手は直樹の母親である。

隣に突っ立っている葛西に怪訝な顔をしていたが、事情が分かると会釈をされた。


「直樹さん、家にいるって」


そう言われ家の中に通される。

昔ながらの家屋で土間が併設されており、そこに漁に使う道具らしきものが置かれていた。

勝手知ったる我が家の様な顔で、ずかずかと奥に入っていく瀬奈。

これだけでも気の置けない関係である事は推察できた。


「直樹くーん、いる?」


襖越しに問いかけると、返事があった。

開けて中に入ると……何か道具を手入れしている男性がいた。

褐色の肌がいかにも漁師といった感じだが、顔は優しそうなどこにでもいる20代男性といった印象だった。


突然の来客……しかもよく分からない男連れといった状況にも特に驚く様子がないので、恐らく事前に話は聞いていたのだろう。脇にあった座布団を2枚置かれ、そこに座るよう促された。


(さて……どこから聞いたら良いものか……?)


瀬奈がどこまで話しているか分からないが、いきなり核心を突くべきではないだろうと判断し、葛西はまず島で起こる不思議な現象について聞いた。


「ええ…昔から時折あったんですが、最近になって増えてきましたね……」


「観光客も見ちゃったそうなんです。でも有名になったら配信者の人とか来るのかな?」


話題を切り出すたびに瀬奈が合いの手を入れて来る。

どちらかというと瀬奈が喋り、それに合わせて直樹が返事をすると言った感じだ。


「直樹くんの家に変な事書いてある手紙とかも置かれてるんだよね?」


そう言えば…と思い出した葛西がそれを見せて欲しいと頼んだ所、机の引き出しから一枚の紙きれを取り出してくれた。



おうおうにして

かりそめを

しをたもうはまで



「ど…どういう意味だ?」


「さあ…意味はまったくわかりませんね」


文は毛筆で、すべてひらがなで書かれていた。


「往々にして、仮初めを、死を給う浜で……?」


恐らく不吉な事を予兆しているようだが、具体的な意味は読み取れない。

ただ不気味な雰囲気は直樹に伝わった様だ……少し怯えた表情を見せる。


「何か……心あたりでも?」


「いえ…そういうわけではないんですが……」


何か思う事があるらしい……


「実は……」


「……」


「わかった!!」


突然大声をあげる瀬奈


「なっ、何が分かったんだ?」


「ほらっ、この文章の最初の文字を縦から読んで」


「たっ、縦?」


「ほら見て、お・か・し……おかしだよ!」


葛西と直樹は頭を抱えた。



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