4人の子
日も傾き……窓から涼しい海風が流れて来る。
葛西は一人、老婆の話を思い出していた。
結局……子供を亡くした事による一家心中だろうという事で処理された。
建物があった所は既に更地になり、草が生い茂って見る影もないという……
だが…それ以降、島では不思議な事がたびたび起こったそうだ……
島のどこからか人の声が聞こえてくる……
森の中で人影の様なものが見える……
不気味な事が書かれた紙が家の前に置かれる……
これらをはじめとした怪奇現象に恐怖をおぼえる島民も少なくないらしい。
今では島でもネットが使えるとは言え、そういった事を書き込む人間もいなかったので、これらの事が世間に伝わる事もなかったのだ。
(怪奇現象とこの話が紐付くのかもしれないな……)
もちろん呪いの類なのか?というと疑問がある。
もしかしたら、過去の話を利用したイタズラの可能性もあるが、何にせよ七つの子の呪いが何らかの形で関係している事は十分考えられそうだ。
葛西はこれからの取材プランを練っていた。
(まずは島全体の調査から始めて……島民への聞き込み…そしてひなこの家の跡地も見ておくか……)
貰った島のパンフレットに書き込みをしていく。
島の全体地図が掲載されており、位置関係も把握しやすい。
老婆から聞いたひなこの家も既に印を入れてある。
明日の準備を整えると、用意されていた布団に横になった。
(七つの子……か……)
それはひなこの事を意味していた。
子供は島全体の宝という事で、年の近い5人まるで実の兄妹の様な感じで扱われ、名前の他に数え年で呼ばれる事もあった。
そう、ひなこが行方不明になった時が7歳……七つの子として。
(残った4人の子供達……)
ひなこは5人の内のちょうど真ん中の年齢だったらしい。
一番上の男の子は家業を継いで漁師をしており、二番目の男の子は病気で亡くなったそうだ。
三番目はひなこ、四番目の男の子は島を出て行ったが、ちょうど島に戻って来ているらしい。
そして五番目の女の子が……瀬奈であった。