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蛸壺の島  作者: 成田ごんぞう
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次の標的

葛西達が再び直樹の家に訪れた時はすでに日は傾きかけていた。

家族のもてなしを受けていた葬儀の参列者も徐々に帰り始めており、ようやく仕事が終わった瀬奈も帰り支度をしていた。


「葛西さんも和真ちゃんも……なんで泥だらけなの?」


「いやあ…まあちょっと……」


脱輪してたなんて言えないのか、和真はバツの悪そうな顔をしていた。

葛西は住職を探している。


「葛西さん、どうしたの?」


「あぁ、ちょっと聞きたい事があるんだ……」


聞きそびれていたが、封印された蛸壺の事。住職なら心当たりがあるかもしれない。

ちょうど住職は帰る所だったらしく、直樹の両親が挨拶をしていた。

挨拶が終ったらちょっと聞いてみよう……葛西がそう考えていた時だった。


「いてっ……」


「……どうしたの和真ちゃん?」


「いや、何か背中が痛くなったんだよね……」


それを聞いた葛西が和真に駆け寄った。


「ちょっと背中を見せろ!」


「どうしたのさ、葛西さん」


「いいからっ!!」


半ば強制的に和真のシャツをめくり上げる葛西……

住職もその異様な様子を見て和真の元に飛んできた。


「これは……」


葛西と住職……どちらも血色を失っていた。

和真の背中には直樹についていた様な痣が出来ていたのだ……



…………



「俺…死んじゃうんすかね……?」


住職の車の中で和真はそう呟いた。


まだ残っていた和真の両親にあとで寺に来るように伝え、住職は自身の車に和真を乗せ、急いで寺に向かっていた。


「死なない!和真ちゃんは死んだりしないのっ!」


隣にいる瀬奈は既に大粒の涙を流している。

住職は消耗している瀬奈は置いていくつもりだったが、頑として聞かず乗り込んできた。


「健志くんは呪いの兆候が見えてから、2ヵ月ほどで亡くなったと聞きます」


葛西は言葉を続けた。


「つまり和真くんの呪いもその速さで進行する可能性があると……」


住職の表情は冴えない。


「……先代の住職が呪いを抑え込んでそこまで持たせたので、実際は……」



それを聞いた瀬奈はわっと泣き出した。



「大学とかは、どうなるんですかね?」


「……休学するしかないだろうな」


「……まあ、死んじゃうんなら関係ないですよね」


どこか達観した感じさえ見受けられる和真。

幼いながら健志の死に触れ、そして今直樹の死を目撃し、ある程度の予感と覚悟はしていたのだろう。


「かずま……ちゃんっ……」


和真の腕を取り、ぎゅっと握りしめる瀬奈……


幼い頃に友達を失くし、悲しい事が続いた中でも同い年の2人、寄りそって来たのだろう。

死を受け入れた様な和真を逃がさまいとする瀬奈を見ると、葛西もいたたまれない気持ちになっていた。


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