通りかかった巡査
仮定として、あの蛸壺が呪いを封印するものだったとしたら……
封印が解けた事が、直樹の死に関わっているのかもしれない。
葛西の頭の中にはあらゆる仮定が飛び交っていた。
どれもそうだと思うし、そのどれも違うとも思える。
「何かヤバイ事が起こってるのは俺でも分かりますよ……」
車を運転しながら和真も神妙な面持ちでつぶやいた。
あの蛸壺にヒントがある……そしてこの怪文書にも……
葛西は直樹にもらったメモを見ていた。
「なんすか……それ?」
「……危ないっ!!」
和真がよそ見をした瞬間、車は大きく曲がり、片輪が側溝に落ちた。
「いてて……これも呪いってヤツですかね?」
葛西は和真を引っ叩いた。
「いてっ、殴る事ないじゃないですかぁ~」
「アホな事言ってないで脱輪を戻すぞ!」
とりあえず和真が車を持ち上げ、葛西がバックに入れて車を戻そうとするが上手くいかない。
「思ったより深く埋まってるな……」
「電話して助けを呼びますか?」
直樹の葬儀の日に車で脱輪したなんて言ったら、和真は親に怒られそうだが仕方がない……
助けを呼ぼうとしたその時だった。
「おーい、何やっとるんだ?」
海岸で出会った巡査がやってきた。
「おー、和真のボウズじゃないか。それとそっちの人は海岸で会った……」
状況を見て巡査はすぐに察した。
「なんだ、脱輪したのか。ちょっと待ってなさい……」
そう言うと、どこからか大きな木の板を持ってきた。
「これをこうして……これで、やってみなさい」
葛西が改めてバックすると、脱輪はすんなり元の道に戻った。
「や、助かりました……」
「うん、田舎だからと言って油断したらいかんよ」
2人はお礼をすると、巡査は自転車に乗って去って行った。
改めて運転を和真に譲る。
「頼むよ和真くん……呪いじゃなくて不注意であの世行きなんてたまったもんじゃない」
「わーかってますって!任せて下さい!!」
まるで悪びれる様子もなく和真は勢いよく発進……したせいでまたもノッキングした。
(……大丈夫かな?)