確信
診療所の医師の診断だと、突発的な心筋梗塞だろうという事だった。
「葛西さん、これ一体どういう事なんですか!」
事情を聴いてやって来た和真が葛西に詰め寄る。
和真の語気ににはぶつけようのない憤りが感じられた。
「……分からない」
「…………っ!!」
湧き上がる感情をぶつける所のない和真を見て、瀬奈は再び顔を手で覆って泣き始めた。
葛西にとっても初めての事だ。呪いで人が亡くなるのを見るのは……
だが、既に確信に近いものはあった。
亡くなった直樹の身体……あれだけ禍々しく覆っていた痣がすっかり消えていたのだ。
恐らくその死をもって呪いが解けた、という事だろう。
葬儀に向けて準備をする住職が、葛西と瀬奈にこう告げた。
「呪いの事は伏せておいて下さい。今島民を不安がらせるのは危険です」
葛西は静かに頷く……
そして和真にもその事を伝えた。
「わかってる……わかってますよ……」
ひなこの時にも呪いの噂が立ち、島内は混乱したらしい。
その事は和真も理解していた。
「でっ、でもこのままじゃ……」
「……分かってる」
葛西は和真の目をしっかりと見て言った。
明確な強い意志――和真もそれを感じ取った様だ。
「俺も協力出来る事はしますよ!」
「あぁ、当事者の助けがなければ解決出来ないかもしれない……よろしく頼む」
「ええっ、任せて下さい!」
和真も葛西の態度を心強いと思ったのか、少し表情が和らいだ。
瀬奈は直樹の死を受け止めきれないのか、うずくまったまま動けないでいた。
これ以上何かを頼む事は出来ない……葛西はそう感じていた。
「和真くん、移動する時に車を出してもらう事は出来るかい?」
「家に2台あるんでたぶん出せますよ。いつでも呼んで下さい」
「……ありがとう」
既に夜の帳が下りている。
葛西は東を向き、闇に包まれたその先を見ていた。
(あの森に……手掛かりはある……)