因果の糸
同じ国とはいえ、本土とは違う空気を感じる……
小さな空港に降り立った葛西は、澄んだ空を見ていた。
本土から遥か南にある中ノ表島は、まさに絶海の孤島の名にふさわしい場所であった。
周囲どこを見渡しても見えるのは水平線のみ……
(隔絶した世界で解放感に浸るのも悪くない……)
そう思っていた葛西に一人の女性が声を掛けた。
「……こんにちは、中ノ表島へようこそ」
葛西は車の中にいた。
隣で相良瀬奈と名乗る女性が鼻歌を口ずさみながら運転している。
内地の人間が珍しいのだろうか?あれこれと質問され、多少面をくらった感じはあった。
「もうすぐ着きますよ」
ホテルと名のついた建物を紹介されたが、2階建ての民家と言った感じだ。
それでも門構えなどは、一応宿泊施設の体裁は整えてある。
瀬奈は手早く葛西の荷物を持ち上げた。
「大丈夫だよ。自分で持つから」
「いいんですよ。お客様なんですから」
まだ二十歳前後と言った所だろうか?
そう言ってニコニコと笑う様は、健康的な印象だった。
宿の中は一応フロントの様なものがあり、近くにテーブルと椅子が置かれくつろげる様になっているようだ。すでに先客がおり、椅子に座って島のパンフレットを見ていた。
「普段はたまにしかお客さんが来ないんですけど、今は結構人がいるんですよ」
どうやらそうらしい……
行きの飛行機の中でも何人か内地からの観光客と思われる人間がいた。
島自体は300年ほど前から開拓され、多少の増減はありつつもおおよそ1000人前後の島民がいるらしい。
主に漁業が主だそうだが、最近は観光業にも力を入れていると……瀬奈は言っていた。
「こちらが葛西さんのお部屋です」
通された部屋は8畳ほどの一般的な民宿の一室といった所か……
違う点と言えば……部屋の真ん中で老婆が座り、念仏を唱えているくらいだ。
「おばあちゃん、ここはお客様の部屋だよ!」
瀬奈の祖母らしい。
すみません、という表情をしながら祖母の元に向かおうとしていたが、
突然その首が180度回り、葛西の顔を凝視して叫んだ。
「この島は呪われておるっ!!」