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【 80万PV達成!】何度も死に戻りした悪役貴族〜自殺したらなんかストーリーが変わったんだが〜  作者: 琥珀のアリス
武術大会編

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決勝の始まり

 シャルエナの試合が終わると、しばし舞台の修繕時間が入り、それが終わればいよいよ決勝戦が始まる。


「さぁ!ついに最終試合!今年はなんと一年生同士の決勝戦!素晴らしいね!見ものだね!そして楽しみだね!もうこれ以上の言葉はいらない!ということで、選手に入場してもらおう!まずはアイリスちゃん!出ておいで~!!」


 ライムの明るい声と共に右側の入り口から出てきたのは、学生離れした魔力操作と魔力密度をもって勝ち進んできたアイリスだった。


 彼女が入場した瞬間、観客たちは待ってましたと言わんばかりに大きな歓声を上げる。


「その素晴らしい魔力操作はもはや学園内でもトップクラス!魔法のみで勝ち進み、海の竜王すら使ってみせた彼女は努力の天才!そんな彼女は決勝戦でどんな戦いを見せてくれるのか!楽しみだねぇ!!」


 アイリスはライムの紹介に少し恥ずかしそうにしながらも、観客たちに手を振りながら舞台へと上がった。


「対するは同じく一年生のソニアちゃん!かも~ん!!」


 左から姿を現したソニアは、これまで鞭と優れた魔法で勝ち残り、準決勝では俺を模倣したことでシャルエナに勝利してみせた。


「アイリスちゃんが努力の天才なら、彼女はまさに魔法の天才!圧倒的な魔法の才能で、準決勝ではあのシャルエナ殿下を倒してみせた!そんな彼女は、今回はどんな魔法を見せてくれるのか!!この試合でも彼女から目が離せそうにないね!!」


 ソニアは堂々とした姿で舞台へと続く道を歩いていくと、そんな彼女の姿に熱のこもった息を吐く者たちが溢れ出し、アイリスの時とは違って見惚れたことによる静寂が会場を包んだ。


「さぁさぁさぁ!これで両者出揃ったね!!それじゃあ二人とも!悔いの残らないよう、存分に戦い、そしてたくさん楽しんでね!ってことで、ここに決勝戦の開始を宣言するよ!」


 ライムが大きな声でそう言って舞台の上から降りると、その瞬間にアイリスとソニアの決勝戦が始まるのであった。





~アイリス&ソニア~


 試合が始まると、観客たちは二人がどんな試合を見せてくれるのか気になり、彼女たちの動きに注目するあまり会場が静寂に包まれる。


「アイリス。まずは、あなたと決勝で戦えることを光栄に思うわ」


「ふふ。私もですよソニア。あなたという魔法の天才と戦えること、とても嬉しく思います」


 二人はすぐに戦闘を始めるということはなく、まずはお互いに決勝という大舞台で戦えること、そしてここまで勝ち上がってきた相手を讃えあう。


「魔法の天才…か。確かにライム先生も私のことをそう言っていたけれど、あたしはアイリスも十分才能があると思うわ。でなければ、海の竜王もあの魔力操作もできなかったはずだもの」


「ソニアにそう言われると、悪い気はしませんね。嬉しいです」


 二人は決勝戦だというのに楽しそうに会話をするが、それを邪魔するような観客はこの場にはいない。


 それは彼女たちがこの舞台へと上がるために、どれだけの相手を倒してきたのかを分かっているから。


 それは彼女たちが本当の友人であり、お互いに尊敬し、どれだけこの時を待ち望んでいたのかが伝わっていたから。


「私の本心なのだけれどね。そういえば、あたしたちが戦うのって初めてじゃない?」


「えぇ。序列戦の時はお互い負けてしまいましたし、その後も忙しくて機会がありませんでしたからね」


「そうね。あたしたち負けたのよねぇ。だからこの大会で再戦したかったのに……まったく。そもそも出場すらしないなんて」


「ふふ。仕方がありません。ルイス様が参加しないと決めたのならば、フィエラさんたちが参加しないのも当然といえます。彼女たちは一番実力を認めて欲しい人に認められているので、フィエラさんたちがこの大会に出場する意味はありませんから」


「はぁ。ほんと、誰に似たんだか」


「ふふふ。誰に似たのでしょうね」


 アイリスとソニアはそう言って観客席で一際目を引く場所に目を向ければ、じっとこちらを見ているフィエラと、ドーナと一緒に何かを食べているシュヴィーナ、そしてその真ん中で優雅に足を組み、王よりも王らしい雰囲気を放つルイスの姿があった。


今彼女たちが立っている舞台とルイスたちがいる観客席の距離は、まるで自分たちとの実力の差を表しているようで、より一層遠く感じてしまう。


「まだまだ遠いわね」


「えぇ。遠いですね。ですが、必ず追いついて見せます」


「そうね。あたしも必ず追いついてみせるわ」


「ですがまずは…」


「目の前の…」


「ソニアに勝たせてもらいます」


「アイリスに勝つわ」


 二人はお互いの目が合った瞬間、先ほどまでの和やかな雰囲気が無くなり、合図もなく同時に魔力解放を行う。


 アイリスの緻密に操作された深い青色の魔力と、ソニアの炎のように揺らめく暴力的な紫色の魔力が二人の中央でぶつかる。


 魔力量はソニアの方が上だが、密度はアイリスの方が上のため二人の魔力は拮抗し、その衝突から生まれた衝撃派が観客席にいる観客たちにすら届く。


 空気を軋ませ、二人の姿が霞んで見えるほどの魔力同士の衝突を見た観客たちは、あまりの光景に言葉を無くし、恐ろしくも美しいその光景にまるで魅入られたかのように息を呑む。


「『水剣・乱舞(アクアソード・ダンス)』」


「『闇蝶の花弁(プシュケ・ペダル)』」


 二人は同時に魔法を発動させると、アイリスの周りには数十本の水の剣が現れ、ソニアの周りには数十匹の黒い蝶が姿を現す


「行け」


「行きなさい」


 アイリスが腕を振り下ろせば、水の剣たちは刃先をソニアへと向けて踊るように放たれ、ソニアが靴音を軽く鳴らせば、黒い蝶たちがひらひらとアイリスに向かって羽ばたき出す。


 水の剣はゆっくりと迫ってくる蝶を切り裂くように動き、黒い蝶は風の流れに身を任せるかのように剣を躱していく。


 それでも完全に避け切れなかった蝶たちは水の剣によって切り裂かれるが、蝶に触れた剣たちは魔力を吸収されたかのように消滅する。


「なるほど。その蝶たちは吸収魔法が混ざっているのですね」


「正解よ。あたしの蝶たちは相手の魔力を吸うの。だから、無闇に触れない方がいいわよ」


 ソニアの作り出した黒い蝶たちは、触れた相手から魔力を吸収するよう、吸収魔法が複合されていた。


 それはまるで蝶が花から蜜を集めるようで、ひらひらと飛び続けるその姿は散りゆく花弁のような美しさがある。


(ならば、あの蝶たちに触れないよう気をつけながら、ソニアを攻撃してみましょうか)


 このまま蝶を攻撃し続けても意味がないと判断したアイリスは、狙いをソニアへと変更して剣たちを向かわせる。


「『闇の鎖(ダーク・チェーン)』」


 迫り来る剣を前にしたソニアは、小さく魔法を呟き靴を軽く鳴らすと、地面から数十本の鎖が伸びて水の剣たちの動きを全て止めた。


「やはり、意味がありませんでしたか」


「当然よ。それより、アイリスは防がなくていいのかしら?あたしの蝶たちが、あなたの魔力を吸収してしまうわよ?」


「それならお気になさらなくても大丈夫ですよ。『水撃(アクア・ショック)・連鎖』」


 アイリスは目の前まで迫った黒い蝶たちに対して小さな水の塊を一つ作り出し放つと、その塊は蝶たちの中間あたりで爆ぜ、散らばった水滴たちが全ての蝶を撃ち落とす。


「なるほど。あたしの蝶を消すには魔力を吸収させるのが一番だけど、無駄に魔力を使うと不利になるものね。アイリスらしい選択だわ」


「ありがとうございます」


 いくら魔力密度が高いアイリスでも、総魔力量ではソニアに劣ってしまうため、彼女に合わせて魔力を消費していけば、負けるのはアイリスとなってしまう。


「さて、様子見はここまでにしましょうか。お互い、自分の全力を試したいものね」


「そうですね。長期戦になれば不利になるのは私の方ですからね。私が全力を出せる魔力があるうちに、ソニアを地面に平伏させてあげます」


「あら。友達を平伏させるなんて酷いわね。なら、あたしもアイリスを私の前に跪かせて、屈辱を与えてあげようかしら」


 これにて二人の様子見は終わり、言葉にも苛烈さが混じったことで二人の気持ちの昂りが見え始めた頃、アイリスとソニアによる全力の試合が始まる。






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