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長い長い昔話を語り終えて、カンナは呟いた。
「私は、ジンを生き返らせたいんですよ」
カンナは剣によって傷だらけにされた畳に正座している。
「私の魔法が再び進化すれば、スミカ様の命を救う事も出来るでしょうし、ジンを生き返らせる事も出来ると思うんです」
「だからって、なんでスミカを裏切るような事をしたんだ」
彼女がどんな気持ちで兵士達に連れ去られて行ったか。それを考えるだけで、胸が張り裂けそうになる。「それは申し訳ない事をしたと思っています。でも、理由だってちゃんとあるんですよ」
「どんな理由なんだ」
僕は吐き捨てる。クソみたいな理由だったら、許さないかもしれない。
「安全に”聖域”に向かうためですよ」
聖域。聞きなれない単語に、眉が上がる。だが、前に一度カンナとスミカがそんな事を言っていたなと思い出す。
「魔力超過を封じ込める為に、生贄が向かう場所です。要は、魔力超過を封じ込める為の儀式を行う場所のことですよ」
カンナは一通り説明してくれた。
スミカを売ったのは、聖域に向かう為に兵士達からの信用が欲しかった事。
聖域に向かえば、僕とスミカの魂を使って、魔力超過を止められる事。
聖域に向かえば、ジンの魂の残りカスがその場にある事。
その魂を五百年前のように体内に取り込める事が出来れば、彼女の魔法は再び進化する事。
ジンとスミカ、ひいては僕の魂を元に戻せる事。
カンナは魔法の進化の秘密も、聖域の事も、どうやって聖域に向かえば良いのかも、全部、五百年かけて調べ上げているらしかった。つまり、ここ最近の僕達の努力は、全部、茶番だったというわけだ。
「ごめんなさい。貴方達にも計画を打ち明けようと思ったんですが。下手を打って計画が兵士達にバレたら五百年の思いが台無しになると思ったので黙ってました」
これが、カンナが五百年前から計画していたことらしかった。
★☆★☆★☆
「多分、スミカ様を貴方の世界に飛ばしたのはジンでしょうね」
説明の後に、カンナは上空を見上げながら言った。先ほどの戦いで、天井はぶち抜かれている。
「封印されて暇すぎて、違う世界でも覗いていたんじゃないですか? それでスミカ様と同じ魂を持つ貴方を見つけたんですよ、きっと」カンナは続ける。「アヤトさんの魂とスミカ様の魂の二つを使えば、自分みたいに一人にならなくて済むと思ったんじゃないですかね」
ジンの空間魔法が、僕とスミカを引き合わせた。
思えば、スミカが僕の世界に来たと説明した時、カンナは泣いていた。その時から、ジンの仕業だと気付いていたのかもしれない。
「スミカ様は助けますよ。五百年前から、もう二度と犠牲は出したく無いと思っていましたから」
カンナは苦笑いを浮かべる。
「多少荒っぽくなってしまったのは、私に知恵が無いからですよ」
カンナは立ち上がる。
「さあ、聖域に向かいましょう。助けるんですよ、そして、全部終わらせてやるんです」




