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長い夢を見ていた。
雨が降る中、アスファルトの地面が黒く染まっている。
後ろを向いた髪の長い女性が傘も差さずに立っていた。
僕はそれを後ろから眺めていた。
目が覚めると、朝の六時だった。
通っている高校に行くまでまだ時間がある。
部屋のカーテンを開けると、日差しが差し込んできた。
僕は机に座り、参考書を読む。
高校三年生に今日からなる。
自分でもあまり実感はなかった。
それなりに普通に生きてきたし、成績だって悪くない。
卒業したら東京に行くつもりだ。
しばらく勉強をした後にリビングへ行くと、母親が朝食を作っていた。
「今日は新学期だから早く起きたの?」
「ただ目が覚めただけだよ」
父親は出張に出ている。
食品会社の営業をしていた。
父親がこの辺りに配属されたので、僕らの家族はここに住んでいる。
僕が生まれた時は家族は東京にいた。
小学生まで東京の団地に住んでいた記憶がある。
だから東京に憧れがあるわけではなかったが、やっぱりあの風景を求めているのかもしれない。
僕は炊飯器からご飯をよそい、鍋にある味噌汁をお椀に入れた。
母親が焼いてくれた目玉焼きと鮭の切り身を皿に載せ、朝食を食べ始めた。
家族は僕と父親と母親の三人家族だった。
朝食を食べ終えると、部屋に戻った。
僕はまた勉強を始める。
ふと今、通っている高校について思いを馳せる。
元いたクラスには可愛い子もいたが、他の男子生徒と付き合っていた。
僕は時々話をすることもあったが、彼女と一緒にいることはなかった。
なんだか恋愛は難しいと思う。
いったいどれくらいの確率で、互いに好意を持ち、付き合うことになるのだろうか。
朝の七時半になると、僕はパーカーを羽織り、バッグを持って家を出た。
高校までは駅まで歩いて、電車に乗る。
この辺りは田んぼや畑が散在している町だったが、高校の周りにはファミリーレストランやカフェがあった。
僕は晴れた空と、心地よい風の中を歩いて行った。
その時、夢の中で会った女性のことを思い出した。