黒と灰色に塗れた道
一部分を切り抜いて書いた作品なので、かなり荒い作りになってしまいました。
重めな形の終わりになりましたが、彼は今幸せな人生を歩んでいますので、それを念頭に置いて読んでいただければ、辛い事も経験の一つとして見ていただけるのかもしれないです。
兄貴が逮捕されたらしい。
自宅に掛かってきた一本の電話は警察からだった。
後から分かった事だが、警察は網を張っていたそうだ。
既に9件、余罪の疑いがあり、次に行われるであろう現場を予測して、範囲を絞っていたとの事。
犯行に入られたコンビニの所在範囲から、犯人像を特定して、それが兄貴であると目星をつけていたのかもしれない。
警察は優秀だから。
衝撃はあったが、正直な話、ただ単にめんどくさいなとか、迷惑だな程度にしか思わなかった。
はっきり言って他人事に近い感覚を持っていた。
対して連絡を取ることもなく、離れて暮らしていた。
そもそも兄貴の事がそんなに好きではなかったし、どうでもよかったところもある。
でも、母親は頭を抱えていた。
自分の子供が突然犯罪者になったのだ、言葉で簡単に表現できるような感情ではないのだろう。
想像出来ない程、辛いはずだと思った。
とりあえず、心配するフリはしておいたけど、それに構っていられる程、俺も暇じゃなかった。
高校生活が始まったばかりの俺にとって、最優先はクラスの立ち位置と、振る舞いをどう取るか。
今思えば、本当にくだらない事に、当時の俺は命を削り、時間を割いていたと思う。
新聞にも載った。
顔写真はなかった。年齢と犯行の詳細が記されていた。
母親は大人のやりとりに追われ、色々な雑務が続いていた。
当時の俺にはよくわからなかったけど、コンビニ強盗で懲役7年という判決は重いらしい。
みせしめにされたのだと、知らないおっさんが言っていた。
後から、おっさんが兄貴の保護観察官だと知った。
俺自身も、なにかと巻き込まれた。
いい迷惑でしかない。
俺は全く関係ないし、犯罪者の弟だとか、他人様から言われる筋合いもない。
俺は俺だし、兄貴は兄貴だろう。
でも世間様はそういう考え方ではないみたいだ。
社会という、そのシステムそのものが畜生なのだと思った。
親父がいてくれたら、きっと違ったのだろう。
兄貴も強盗だってしていなかったかもしれない。
あくまで結果論ではあるけど。
責める相手が違うのは分かっている。
でも、アンタが生きていてくれたら、どれだけ母親は楽だっただろうか。
そんな風に、誰かのせいにして、不条理な状況から、当時の俺は逃げていた。
逃げるしかなかった。
別に俺は悪くないのだから。
母親はコンビニに歩きまわって頭を下げていた。
兄貴のためにそこまでやらなくてもいいんじゃないのか、出所してから本人にやらせたらいいのに。とか思っていたが、そんな甘っちょろい事が通用する世界ではない。
それから、僅か2週間後の事。
祖母が亡くなったという連絡が叔父から入った。
悪いことは重なるというが、ここまでクリーンヒットさせる神様は、かなり性格が悪そうだ。
母親方の祖母はもともと鬱病で、薬を服用していた。
以前から、自殺未遂はあったけど、そのほとんどが本気ではなく、構って欲しいレベルのモノばかり。
今回はというと、何の予兆もなく、唐突に死んだのだ。
薬を飲み、そこに日本酒を大量摂取。
それが死因だそう。
二度と起きることは無かった。
発見者は叔父で、いい天気だからツーリングでも行っておいでと、祖母に言われたそうだ。
気分が安定していると踏んで、叔父はバイクを走らせてた。
帰ってきた時には、実の母親が冷たくなっていたそうだ。そして、その側にあったのは、空になった日本酒瓶と、いつも服用していた薬の空容器だった。
兄貴の事なんかより、俺にとってはこの悲報がショックで堪らなかった。
祖母のことはどちらかといえば好きな存在ではあったし、思い出もそれなりにあった。
そして、母親の事も、流石に本気で心配になった。
精神的なダメージで、母親が死んでしまうんじゃないかと思ったから。
母親の妹と弟。
俺からしたら叔父と叔母。
三姉弟は支えあいながら育ってきたようで、今回の件も三人で必死に受け止めつつ対応していたみたいだ。
悪いことは、度重なるもので、あれからしばらくして落ち着いてきた頃、俺が高校二年に上がった年。
今度は、母親が癌になった。
ここまで来ると、神様はどうにか俺たちに消えて欲しいのだろうと思えて仕方ない。
前世で余程悪いことをしたのかもしれない。
いい事があれば悪い事もあるとか言う奴に言いたい。
いつになったらいいことはやってくる?って。
俺は薄暗く、前も後ろも見えない、世界に一人だけ放り出された気分だった。
一つわかった事は、神様は絶対にいないという事だ。
いたとしたら、ただの迷惑野郎だ。
それともう一つわかった事は、人生いい事よりも悪い事の方が記憶に残るという事。
これは俺の価値観だから、正解ではないと思う。
でも、今も俺が歩く世界は、バラ色の輝く彩り鮮やかな道じゃない。
灰色一色で、希望だとか夢だとか、そんな甘っちょろい言葉は存在しないイバラの道だ。
出口はあるんだろうか。
あるならだれか教えてくれよ。
俺はどぶネズミのように、いつまでもこの道を歩いてくしかないのだろうか。
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