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第七話 幻想の書と運営の秘密

 私は本の内側の世界に逃げ込んで真っ先に自分の格好を確認した。

 きっちり初期の服を着ている。

 外では裸になってしまったけど戻れば服は修復されるみたいだね。


 すぐに外に出たら多分召喚された剣と同じような理由で何も纏わずに外に出てしまいそうな気もするけどね。

 私自身が召喚されているという設定があるしね。

 装備も召喚された私の一部みたいなところがあるわけだしその辺は仕方ないだろうね。


 だからメンテナンスしなくても一度本の内側で長期間過ごせば破損は全て回復されてるからね。

 こういう所は結構便利だよね。

 まあ直す人が居ないからこういうのが無いとやってられないわけだけどね。


「《イブンハズ・サントリ》」


 とりあえず、宙に浮かぶ拳と言うよりも手を召喚して動かしておいて成長を促す。

 さっきの戦闘で少し成長したのか動きも多少素早くなってるけどまだまだ使い物にならないだろうしね。

 にしても敵との戦闘でのEP取得はどうやら逃げても獲得出来るみたいだね。


「うわ、ちょっと色々としてる間にまた新しいスキル手に入れちゃってるよ。

召喚に操作のスキルは相性いいけども契約もしてないのに召喚しか呪文生成が繋がらなかったせいでちょっと今の実力に見合わない高度な呪文を獲得しちゃってるよ。これじゃあ《グナダァス》を乗せてダメージを与えるのも出来ないんじゃ無いの?」


 ・・・・・・え?

 この宙を舞う手って呪文乗せられるの?

 そうなるとこのちょっと使いづらいこの呪文もいろんな可能性が出てくるよ。

 《ケサン》で武器を召喚して《スラシァ》を使わせるとかも出来るってことだよね。


 ってことは今の私には見合わないかなり高度な呪文ってことだよね。

 どう考えても出来ることが多すぎる。

 簡単には使えるようになってはくれそうになさそうかな。


 こんな高度なのが出てきたのはスキルに一つは付いてくる呪文があるのに配置のせいで低位の呪文を作り出せなかったからだろうね。

 少なくとも召喚の次に結びつけられそうなのが拳だけだったしね。

 呪文そのものが壮絶に弱体化するけど強引に取得させるって事なんだろうね。


「まあ、どう考えても操作、契約なしの召喚で結びつけられそうなのが剣と拳くらいしか無いもんね。そして剣と拳のどちらが低スペックになっても運用できるかで考えたら拳になるからあの配置だとあの浮遊する手を手に入れるのは 必然だったんだろうね」


 あ、この二つしか結べなかったんだ。

 しかも呪文生成の際にスペックが下がってもまだ運用できそうな呪文としてこれが選ばれたってことね。

 まあ、手なら動きが遅くても色々と出来ることはあるしね。


「そういえば、なんで今回戻ってきたとき全裸だったの?

ピンポイントで服だけ全部吹き飛ばされるなんて考えづらいんだけど・・・・・・

PKに剥かれたなら通報できるよ?」


「《ブイフト》と《レイフト》の爆発の反動でPKと巨大イノシシとの連戦でボロボロになってた服が吹き飛んだんだよ。別に剥かれたわけじゃ無いよ」


 まあ、普通は素っ裸になるような物でも無いだろうしね。

 恐らくあの爆発でダメージを負わないのは不自然だろうしソニスが何か反応するはず・・・・・・


「呪文融合の失敗での爆発で死んでないの? ってことは運営が明かせというのはその辺の事情が・・・・・・・」


「運営が明かせって何の話?」


 予想通り反応した。

 そしてどうやら普通ではあり得ない出来事みたいだね。

 それとこれを聞いてほぼ確信した。


「ソニス、一つ聞いていい? このPSOって本当にゲームなの?」


「やっぱり気がついちゃうよね。情報保護がないし仕方ないけどね」


 やっぱりか。

 多分このゲームは普通のゲームじゃ無いんだろうね。

 この本、幻想の書はどこかの場所に本当に存在する代物なんだろう。

 それを利用してゲームみたいに仕立て上げたプロジェクトがこのゲームなんだろうね。


「一応言っておくけど多言無用だよ。この情報は運営が君に明かせと言われてるから君に話す分には問題ないけど一般プレイヤーには絶対知られちゃいけないことだからね」


 そしてソニスが話した。

 このゲームの正体を・・・・・・・


「このゲームはね。異世界の人類復興プロジェクトなんだ。ホムラがゲームだと思っている世界はどこかに存在している本物の異世界なんだよ」


「だから五感なんかが異常にリアルなんだね」


 まるで本物のようとかではなく本当に本物なんだ。

 だからこそ五感がほかのゲームよりも優れているわけだね。

 納得がいったよ。


「でも人類復興プロジェクトって? 確かこの世界に町とか存在しないと言ってたけど何か原因があるって事?」


「魔物だよ。君が遭遇した巨大イノシシのテンペストボア、あれはこの世界の強大な魔物の中でも弱い方なのに凄く強かったでしょ? ああいうのが大量発生したから世界が滅びたんだ」


 あの巨大イノシシって弱い部類なの!?

 ゲームじゃないと分かったからもしかしたら強い奴が紛れ込んだのかと思ったけど違うんだ。


「あれ、《スラシァ》とか全然効かなかったんだけど・・・・・・」


「大量にいるけど色々エリア区切ってボス魔物として配置してるからね。

結界が張られてるから本当に凶悪な魔物は封じ込められてるよ」


 そんなこと出来るならそれを行った人達が復興すればよかったのでは?

 そう思うけど多分出来るならとっくにやってるだろうし何か理由があるんだろうね。

 でもそうなると・・・・・・


「なんで魔物が発生したの?」


「さあ? 元々幻想の書はこの世界に後から持ち込まれた物だからね。私達もこの世界がどうしてこんな危機に陥ったのかまでは知らないんだ。その辺は運営が把握してると思うけど・・・・・・流石に運営との接触までは許可されてないからね」


 ソニス達も詳しく知らないって訳ね。

 と言うよりこの本って元々この世界にあったものじゃないんだね。

 ならこの本はどこから持ち込まれた物なんだろうか?


「ちなみに私達幻想の書がどこで生まれたかとか聞かないでね。自分のルーツはほとんど分かってないんだから」


 どこから持ち込まれた物なのかは本人達も理解してないわけね。

 あちこちの世界を転々と渡ってきたのかな。

 ソニスは知らないだけで古い幻想の書の妖精とかなら知ってそうかもね。


「でも、幻想の書で魔物に本当に対抗できるの?」


「出来るよ。運営が介入する前に私達はこの世界の人達と契約して対抗してたからね。数の暴力と裏切り者の存在とか諸々の理由でやられまくっちゃったけどね」


 裏切り者って魔物以外にも幻想の書を持った裏切り者の存在も居る訳ね。

 運営と手を組み始めたのもそのあたりに理由があるのかもね。


「運営が介入してからは私達はプレイヤーのサポートを行う妖精として派遣されるようになった訳なんだ。運営が何を考えてこの世界の救済を行おうとしているのかは正直よく分かってないけど何を考えててももう頼るしか無いんだよね。もうこの世界は生き残りに人々はほとんど残ってないから・・・・・・・」


 なるほどね。

 運営に不信感抱こうがもう従うしか無い位に追い詰められているわけだね。

 多分私にこの情報を開示するってことでもう既に不信感抱いていたっぽいしね。


「・・・・・・正直ここまで話したら嫌でもこのゲームの裏に関わらなきゃいけないから余り話したくは無かったんだけどね。情報保護が外されたせいで隠し通すのが難しくなっちゃってたから気がつくのは時間の問題だった気がするしね」


 多分情報保護ってそういう考えに至らないようにする何かなんだろうね。

 VR技術は直接脳に接続してるわけだからそういうことも出来てもおかしくは無い。

 にしても・・・・・・


「なんで運営は私に全部明かそうとしたのかな?」


「さあね。まあ呪文の反発で無傷だししかも異様な程エネルギーを保持してるしその辺が理由かもね」


 まあ、どう考えてもおかしいもんね。

 いくら呪文が使えなくなるデメリットがあっても中心で自爆すれば勝てるとかそんなことが普通は出来るわけないもんね。

 自爆なのに自爆した本人が無傷ってどういうことなのって話だよね。


 それに、エネルギー量も異常だったっぽいね。

 まあ確かにあのPKがあの程度でエネルギーが枯渇したのに私は呪文を何発も撃っても減らないなとは思ってたけどね。


「異常ってどのくらい異常?」


「そうだね。私の知る最上位呪文を百発連発して撃っても枯渇しそうに無いレベルだね。自然回復速度も凄すぎて普通の方法じゃ枯渇しないと思う。そもそも高位の呪文は連発出来ないから私の知る以上の呪文でも獲得しない限りは枯渇とは無縁だとおもうよ」


 エネルギー量普通に異常すぎない!?

 ってことは呪文さえ唱えられればいくらでも連発できるってこと!?


「だから本来は獲得するだけで唱えても発動させることすらままならない《イブンハズ・サントリ》なんて呪文を扱いづらいとはいえ獲得できてるわけだしね。本来ならこの地点で保持しているエネルギーを最大から枯渇までいってやっと発動させられる消費量だよ。しかも召喚維持にもエネルギー消費してるわけだしね。こんな長時間普通は維持出来ないよ」


 あの呪文、本来ならもっと強くなってから手に入れるべき呪文だから弱体化しているだけじゃ無くて消費エネルギーも凄まじかったんだね。

 最大から枯渇までいってしかも維持にエネルギーまで必要となったら本当に何の意味も無い呪文になっちゃうよ。


「普通のエネルギーの総量って《ブイフト》と比べたら何発分?」


「鍛えてない初期なら十発分。情報保護で平均化されてたらそのくらいでエネルギーは枯渇するんだよ。一週間限界まで鍛えてたとしてもホムラみたいに連発出来る程多くはならないと思うよ。あのPK見る限り《スブレ》系の呪文は三発が限界だろうしね」


 あの暴風のブレスが三発か・・・・・・

 ってことは他の呪文も考えれば実際には一発くらいしか撃てない切り札的なものだったのかもね。

 それにその言い方だと《スブレ》系は《フト》系のとそう大きく変わらない消費量なんだろうね。


「って事はあまり呪文をバンバン撃つとチート疑われそうな気がするね」


「だろうね。でもこのゲームどれだけプログラムに介入しても意味ないからチートなんて出来ないんだけどね」


 現実に存在するものを強化していくわけだからプログラムでチートなんて出来るわけがない。でもそういうのを知られるわけにも行かない訳だし・・・・・・


「でも問題ないよ。情報保護がされてるプレイヤーはチートとか思わないようにされてるから。じゃなきゃベータテスターの人達が活動しづらいからね。あの人達、テンペストボアくらいなら簡単に倒してしまうくらいの実力差があるし・・・・・・」


 あ、そういえばベータテスターが居たんだよね。

 元々が現実だったわけだし正式版で初期化とかされるわけ無いよね。


「ちなみにベータテストって何ヶ月くらいの差なの?」


「百年、テスターは七人居るらしいけどゲームとして成り立たせるために色々としてるらしいよ」


 百年って人間の寿命で出来るとはとても思えないんだけど!?

 本当にベータテスターの人達って人間なの!?


「まあ、幻想の書と本契約を済ませれば寿命なんて無いに等しくなるからね。まあ契約にもリスクがあるからゲームとして成り立たせている仮契約で止めておいた方が良いと思うよ」


 ベータテスターの人達は幻想の書と本契約して寿命が無くなってる訳ね。

 だから百年とかとんでもない年月生き続けられるわけだ。

 でも・・・・・・


「契約したらずっとこの体なの?」


「そうだよ。ホムラはまだまだ子供みたいだし本契約したらもう一生その姿のままだよ。当然子供も産めないだろうしね」


 なるほどね。

 この言い方だとソニスは知らない訳ね。

 私の現実の姿を・・・・・・


「本当にこの体なの?」


「あ、そういえば生成したアバターだったね。でもほとんど弄ってないしそのままの姿で登録されると思うよ。古傷とか消してたんだとしても幻想の書は五体満足の姿で登録するからね。生まれたときから片腕が欠損してても腕が生えるからね。もしかしてホムラって現実では腕とか足とか欠損してたりする?」


 あ、気付いたね。

 まあ、こういうのを聞けば気付くよね。


「そうだよ。下半身欠損、臓器大部分喪失で機械に繋がれてないと生きていけない体だからね。それでもこの姿として登録される?」


「うわ・・・・・・道理でログアウトしないわけだよ。大けがで動けないとかそんなのだと思ってたけどそれどころの話じゃ無いね。それでも五体満足のその姿として登録されるよ。まさか本気で契約する気?」


動けない体でいるよりかはいいからね。

 リスクがあってもどのみちあの体じゃどう足掻いたところで直る道筋は無いでしょ。


「いやいやいや、考え直して! そうだ! この世界で欠損を直すエリクサーとか作ればその体も治るかもしれないよ! だから考え直して?」


 そういえばそうだよね。

 前作のクラフトゲームみたいにエリクサーが作れるならあの大けがでも復活できるかもしれない。

 いろんなゲームで存在してるしこのゲームではないけど世界にも存在しているのかもしれない。

 でも・・・・・・


「作ったところで、どうやって現実まで持って行くの?」


「そこは運営に頼めば良いよ。色々とやって欲しいこととか言われるかもしれないけどそれに従えば薬を向こうに持って行くことくらいはやってくれるよ。だから早まらないで」


 よっぽど酷いリスクがあるみたいだね。

 よくよく考えたら契約したらソニスも巻き込まれることになるわけだし必死になるのも当然だよね。

 ソニスに嫌な思いをさせるのは違うと思うし言う通りにしよう。


「分かったよ。そうなると運営の頼みとか聞きたいところだね」


「考え直してくれてよかったよ。運営の頼みはね。買い物をたくさんしてほしいって所かな」


ソニス「今回紹介するのはPKの使っていた風スキルの呪文達だよ。

あのPKは《ヒュフト》《ヒュスラン》《ヒュシル》《ヒュスブレ》の四つの呪文を一週間極振りでスキルを鍛えたから獲得してるわけだね。以前も言ったと思うけど一つだけを徹底強化するとエネルギーの成長が遅れて酷い消費量になるんだよね。しかも上位の呪文程クールタイムの時間も延びるから変に一つのスキルだけをこだわって上げるのはよろしくないんだよ。何事もバランスだよ。

ちなみにホムラの使う呪文も単体だとヒュをブイに変えた上記の呪文を順番に獲得していくよ。

ホムラもいずれはファイアブレスを吐くって事だね。光のブレスはただ口を光らせてるだけという物になるだろうけども・・・・・・

っというわけで今回の解説は終わり。次回も見てね。

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