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第三話 森の中で襲い来る狼

呪文を解読したり呪文を使って限界を調べたり色々しているとついに正式サービスが開始した。

 これで本の外の世界に出られるようになるわけだね。


 ソニスから何処をスタート地点にするかと問われたので森と答えた。

 資材がいっぱいあるからここで散策すればたくさんのものが手に入るからね。

 ちなみにこのゲームではインベントリは無く、手に入れたものは全て直接本の内側の世界に放り込まれる形になるらしい。


 水なんかは容器に入れないと悲惨なことになるね。

 後、極度に熱い代物なんか入れた時はとんでもないことになりそうだ。

 そのことを考えて行動しないとね。


「今から本の外に出ると念じれば外に出られるよ。いろんなもの集めてたくさん売りさばいてね」


 ほんと、ソニスは買い物することを私に強要してくるね。

 まあ、森では手に入らないものとかは購入するかもだし出来るだけ多く素材を手に入れておこうかな。


 私はソニスに見送られつつ本の外に出た。

 念じると目の前が真っ白になったあと徐々に色づいていく形で目の前の風景が変わっていった。

 後ろを振り返ると宙に本が浮いておりここから出たのだと分かる。

 その本は私のブックホルスターに収まるように飛んで来てそのまま動かなくなった。


 外に出るときの演出なんだろうね。

 他の人の演出でどんな形で出てきているのか見たくなるね。


 それにしても・・・・・・本の外となると感じる五感が全然違う。

 肌をなでる風に、踏みしめる地面の感覚、森の中の空気のにおいに視界いっぱいに広がる景色・・・・・・情報量が凄い。


 これこそまさに現実に極めて近い最新のゲームの力なんだろうね。

 私が健康であれば感じることの出来た極めて身近な感覚。

 それらを全て再現したこのゲームは本当に良いできだと思う。


 深呼吸すれば口の中に空気が入っていく。

 こんな物まで再現するなんて極めて難しいからね。

 私みたいに外に出られないなんてのは稀だとは思うけど自由に動けない人なんてたくさんいるしそういう人達にとっては凄く良いゲームだと思う。

 かなり人を選ぶような仕様がなければ超絶人気ゲームになって他と断言できるしね。


 さて、そろそろ感覚を堪能するのは辞めて色々と探さないとね。

 近くにしゃがんで草をむしる。

 目をこらして鑑定なんてのはこのゲームには無い。

 手に入れたアイテムの詳細を知るのには地力で調べる必要があるというのはリアリティがあるけど結構人を選ぶよね。


 臭いは問題ない。味は・・・・・・苦いね。

 ごく僅かだけど薬効成分がある。

 推定、薬草っと。


 ・・・・・・結構めんどくさいねこれ!?

 流石に図鑑なしで薬草とか採取しろってハードモードすぎない!?

 かなりめんどくさいよこれ!?


 とりあえず、片っ端からいろんなもの採取してあとで鑑定しようか。

 図鑑とかは地力で作らないといけないだろうね。

 ああ、町も地力で作れるから図鑑も地力で作れと?

 本当に人を選ぶゲームだねこれは・・・・・・


 ちなみに素材とかいろんなアイテム類は目の前に出現するステータスウインドウに収納なんていうほかのゲームに出来ることはこのゲームでは出来ない。

 そもそもステータスウインドウそのものが無いからね。

 だから本の中に収納する。

 本の中の世界に直接入れられるみたいだね。


 本の中の世界に入ったときにどうなっているかは分からないけどとりあえずぽんぽん入れていく。

 本に触れる必要は無く収納したいものに触れて収納と念じればしまえる。

 ただ、ソニス曰くしまえるのは意思のない無害なものだけとのこと。

 意思のあるものは特殊な行程を踏まないと本の中の世界に入れることが出来ないとかなんとか・・・・・・


 まあおかげでうっかり危険なものを入れてとんでもないことになるという事態は起きないから安心だけどね。

 そんなわけだからいろんなものをどんどん入れていく。

 《スラシァ》を使って木を切り倒して収納というのもしていくよ。

 良い水辺を見つけたからその付近に建物を作りたいしね。


 水がないと出来ない作業が多いのに本の中の世界に水を持ち込むのは樽に入れて往復というめんどうな工程を踏まなきゃいけないからね。

 建築系は正直この体で出来るのかとも思うけどまあやらないと工房が出来ないからね。


 でも、上手く木を切り倒せたのは良いけど・・・・・・切り株どうしようかな。

 流石に道具が無いと掘り起こせないよね。

 悩みどころだね。


 そんなことを考えていると後ろで妙な気配を感じた。

 後ろに誰か潜んでる?

 しかも意図的に隠れてるみたいだ。


 何故隠れる必要が?

 そう思っているとなんか小さな声で何かをつぶやいて・・・・・・!?

 こいつ、PKだ!


 慌てて回避した。

 頭上を風の球が通り過ぎる。

 奇襲とはやってくれるね。

 向こうはこっちが気付いてるのに気付いてなかっただろうしこのまま反撃と行きますか。


「《ブイフト》!」


 手のひらをPKに向かってかざして火の玉を発射する。

 こんなすぐに反撃されるとは予想してなかったみたいでそのまま火の玉は命中した。

 まあ、そっち見ずに適当に出しただけに見える呪文がピンポイントで飛んでくるなんて普通思わないよね。


 私はこういう空間把握能力に優れてるから目で見ずともだいたいは分かっちゃうんだよね。

 ゲーム仲間のロギには「オ前ノソレハ正直言ッテ異常ダ」と言われてるくらいには把握できてるっぽいからね。ペガサスみたいとか訳の分からないことも言われたね。

 普通は出来ないんだろうし本気で困惑するだろうね。


「熱いんだよ《ヒュスブレ》!」


 PKは呪文を唱えたあと大きく息を吸い思いっきりはき出した。

 それにより引き起こされたのは暴風のブレス。

 切り倒して椅子代わりにしていた木も吹き飛ばされる。

 これだと三匹の子豚の家みたいに吹き飛ばされるだろうね。


 というかなんでこんな馬鹿げだ威力の呪文がこんな初日で!?

 《ブイ・スラシァ》もこんな巫山戯た威力は出せないよ!?

 吹き飛ばされそうになりながらも私はこらえる。


「こっち見て無くて良いのか?《ヒュ・グナダァス》!」


 まずい、暴風のせいで見失ってて接近に気がつかなかった。

 そのまま風の拳をお腹に受けてしまった。

 グウゥゥゥ、すっごい痛い!


「このまま仕留めて・・・・・・」


「《スラシァ》」


 半透明の剣ですぐ目の前に居るPKに向かって振り下ろす。

 三撃いれられて慌てて飛び退いた所にすかさず《ブイフト》を叩き込んだ。


「ガァ・・・・・・しょぼい呪文しか使わないくせにやけに強えぇな!《ヒュスラン》!」


「《ブイフト》」


 PKが風の槍を投擲するのにあわせて火の玉を飛ばす。

 どうやら風の槍は投擲モーションが必須になるみたいで攻撃軌道が読みやすかった。

 おかげでPK曰くしょぼい呪文でも逸らすことくらいは出来た。

 にしてもこれってもしかして・・・・・・


「風スキル単の呪文か・・・・・・」


「ははは、一週間の事前参加のこと知らねぇのか!」


 事前参加で訓練すれば普通に新しい呪文とか手に入るの!?

 ってことはあの暴風のブレスも風スキル単独の呪文の可能性が高いね。

 こっちは数時間しかないのにこれは・・・・・・正直勝ち目薄いかもしれないね。


 でも、向こうは戦い方が下手くそだ。

 そこを突けばなんとかなるかもしれない。


「なら問題はねぇな。テメェで実験してやるよ《ヒュコート》」


 また新しい呪文。

 今度は一体!?


 空気の動きがおかしい。

 それに何故か上手く呼吸が出来ない。

 《ヒュコート》は風の操作の呪文ってことえね。


 となるとスキル構成が三つなのだとしたらおそらく風、操作、拳の三つなんだろう。

 スキルが増えてないんだとしたら確実にさっきのブレスは風のスキルの三番目以降の呪文だろうね。


 三つの呪文が出てくるくらいには風スキルは徹底的に鍛えているんだろうしこれを強引に突破するのは厳しい気がする。

 正直体も動かしづらいし空気で無理矢理押さえつけられているんだろうね。


 これは詰みか?

 でも、こんなので負けたくは無いかな。

 一か八か試してみようか。

 元々光スキルなんてのを手に入れたのはこういうのが出来ないかなって思ったからだしね。


「《ぅぃぅぉ(ブイフト)》《ぇぃぅぉ(レイフト)》」


 右手に火の玉、左手に光の球。

 それを合体させるようにしてそのまま射出す・・・・・・!?


 射出はされずその場でとんでもない大爆発が引き起こされた。

 私はノーダメージで無事だけどPKはそのまま爆発に飲み込まれて蒸発した。

 ・・・・・・自分の呪文ではダメージを受けない仕様があるみたいだね。

 大失敗してとんでもない爆発を引き起こして周辺を吹き飛ばしてしまったよ。


「・・・・・・・とりあえず、地形整備しようか」


 正直よく分からないまま倒してしまったので脳内整理も踏まえつつ周囲のあれた地形を整備することにした。


ソニス「今回紹介するのは《ヒュスブレ》、暴風のブレスで蹂躙する呪文だね。

風の四番目のスキルだけどあそこまで強力ってことは風スキルを一点強化したんだろうね。

ちなみに呪文のヒュは風じゃなくて空気って意味なんだけどスブレが息って意味なんだよね。

空気だから本来は暴風にはならないんだけど息というのが口から吐き出す流動する空気である風だからこそ風の息になるわけだね。と言うわけで今回の解説は終わりだよ。次回もお楽しみに。

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