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偽占者 前編  作者: 日進太陽
1/1

「この世に占いなんてない」

 2019年5月15日 浅田拓海 22歳の誕生日である。

身長は普通で顔も普通で髪型は短めの刈り上げで普通だが、日本大学文学部4年生で内定が決まっているので、気楽に生きている。3年付き合っている彼女 瀬戸紗良は、身長は普通で顔は小さくスタイルが良いが、髪型は前髪重ためのフレンチボブで、大きくて四角いメガネをかけている。自己啓発本ばかり読んでいるので、自己啓発本に影響されている。「なんでその髪型なの?」という質問には「楽だから」と答えるし、「なんでコンタクトにしないの?」という質問には「楽だから」と答える。見た目を気にしないサバサバした性格だが、「自称サバサバしている人」には「堂々とネチネチ文句を言ってるだけ」とバッサリ斬っている。

紗良は、拓海の誕生日を忘れていた。

「僕、今日誕生日だよ?祝いの言葉くらいちょうだいよ」拓海にとっては誕生日を祝い合うことはカップルとして当然のことだと思っている。

「はいはい、おめでとう。拓海の誕生日、明日だと勘違いしてた。っていうか令和になってもう2週間も経つんだね」紗良は誕生日を祝うことなんてどうでもいいと思っている。

「いやいや、話逸らさないでよ。令和になって2週間とかどうでもいいよ。誕生日間違えたこと謝ってよ」拓海は笑いながら言う。

「こんなことで謝るの?」紗良は笑いながら言う。

「『間違えたら謝る』これお母さんから言われたでしょ!」

「確かに。ごめんね」

「いいよ〜」拓海は満足気な顔をしている。紗良はこんなことで満足するなんて単純な人だなと思っているが、こういうところを好きになった。


「あのさ、大学卒業して就職して何年か経ったら結婚しよう。20代後半くらいに」拓海は突然言った。

「え!?こういうの普通レストランで言うことじゃない?今アパートだよ。まぁいいけど」紗良はおかしいところを指摘しながら照れて承諾した。

「やったー!これ言うのめっちゃ緊張したんだよ。20代後半まで何年もあるけど、それまで一緒にいようね」

「うん」2人とも照れて言葉が出ない。

長い沈黙のあとに紗良が口を開いた。

「結婚するんだったら、拓海のお母さんの問題解決しないと」紗良の言葉に拓海は絶句した。

「プロポーズの後に言う言葉!?まぁでもお母さんの問題は解決出来ればしたいとは思ってるよ」



拓海の母親 浅田純子は51歳から4年程占いにハマっていて風水、星座占い、動物占い、タロット占い、手相占い、人相占い、誕生日占い、西洋占星術、東洋占星術、四柱推命、数秘術、魂占いなど、この世の全ての占いを信じている。家には占いの本、水晶玉、数珠、パワーストーンが大量に置いてある。整理整頓出来ないくらいあるが、占い師曰く「運気が上がる」ということなので、そのまま放置している。父親は2年前に亡くなって、母方の祖父母は富山県に住んでいて、拓海は一人暮らしなので、注意する人がいないが、人に迷惑をかけなければ信仰するのは自由だと思うので、見て見ぬふりをしている。

1本500円のパワーウォーターというただの水を飲んでいた時はさすがに注意したが、辞める気配は一向にない。

大学を卒業して就職したら、母親と会う機会が少なくなり、さらに占いにハマるのではないかという不安がある。

そして、紗良は占いが大嫌いなのである。

 


そんな中2人で下北沢を散歩していたら、

「拓海のお母さん、いつ占い辞めさせるの?」紗良が拓海に問いかける。

「占いを信じるのは人それぞれ自由だから良いんじゃないかな」と拓海は言うが、紗良は納得しない。

「占いなんて詐欺なんだから早く辞めさせないとダメだよ」

「詐欺っていうのは言い過ぎでしょ」

「いや、言い過ぎじゃない。現に何の見返りもないのにお金取られてるじゃん」

「紗良が占い嫌いなのは分かるけど、信じるものは人それぞれ自由なんだから良いじゃん」

「さっきから人それぞれ自由って言ってるけど、それって見て見ぬふりしてるだけだよ?あのまま見て見ぬふりしてたら、いつか破産しちゃう。破産しても占い師は何もしないんだから」

「確かに」深く納得した拓海だが、また見て見ぬふりするつもりという事を紗良は見抜いた。

「今から拓海の家行く?私が直接お母さんに占いを辞めるように説得しようか?」

「いや絶対やめてそんなこと、僕が何とかするから」

そう言うが、拓海はとても迷っていた。紗良なあんなに強く説得してきたのは初めてだった。紗良の言うことには深く納得したが、かといって母親の信じるものを消し去って良いのか。悩み続けているが、良い具体案は思いつかない。



下北沢駅の近くにある東洋百貨店に入ってみる。色々な商品が並んでいるが、悩みを解決してくれる商品はない。店内には音楽ライブや舞台のポスターが所狭しと貼ってある。そのコーナーの端の方に「占いをなくそう会」というポスターを見つけた。白い紙の上の方に「占いをなくそう」と書いてあり、真ん中には30歳くらいの男の写真が大きく貼ってあり、下の方に「本部の地図」という手書きの地図が書いてあった。とにかくデザインがダサいというのが2人共通の感想だが、「占いをなくそう」という内容に少し惹かれ、地図を見てみたら拓海の家から徒歩5分もないし、大きく貼ってある男の写真を見ると、結構男前だった。

「お母さんには2人で直接説得する必要はないんじゃないかな。この人に任せようよ」

「いいね。喧嘩になる恐れもないし」

良い具体案が思いついてとても嬉しかった。大きな不安から解放された気分だ。早速、母親のことを相談したいので、2人で試しに行ってみることにした。



 拓海の家から徒歩5分、古い木造のアパートの一室に「占いをなくそう会」という手書きの看板があった。とても入り辛くてその場で2人で立ち往生していたが、勇気を出して声をかけてみる。「すいませ〜ん」「はい」一瞬でスーツ姿の男性が出てきて驚いた。

「あ、こんな一瞬で出てくるんですね」

「あなたたちが扉の前で立ち往生してるのが部屋の中から分かってたからね」

「あ、すいません」

「中にどうぞ」

和室の部屋にちゃぶ台、タンス、扇風機など特に変わったことはないが、大きな鏡が二つあるのが不思議で仕方がない。

そのことを指摘する前に

「私は占いをなくそう会の会長の寺山直輝です」

「浅田拓海と申します」

「瀬戸紗良と申します。私達占いをなくそう会というポスターを街で見かけて来たんですけど」

「あ〜私の素晴らしい顔の写真が貼ってあるポスターですね」

「あ、はい」

「間近で見るとこの男らしいオールバック、シャープな輪郭、ぱっちり二重、筋の通った高い鼻、薄い締まった唇全てが素晴らしいでしょ?」

「まぁそうですけど、自分で言わなくても...」困惑する拓海と紗良

「事実を言っているだけです。君達カップル?」

「はい」

「で、今日はカップルで何の用ですか?」

「僕の母親が占いにハマって、占いの用品とかたくさん買っていて心配なんです。僕は来年から就職するので母親と会う機会が少なくなるでしょうからとても不安で...」

「あ〜それは不安だね。来年から就職ということは、君達大学生?」

「何だ大学生か〜」あからさまに態度を変える寺山 

「大学生じゃダメなんですか?」不思議がる紗良

「ダメってことはないけど、ちゃんとお金払える?」

「え、お金取るんですか?」

「当たり前でしょ、こっちは副業でやってるんだから」

「副業?他に仕事やってるんですか?」

「ああ、私の仕事は全相師だ」

「全相師?」

「その人の服装、髪型、所作、面相、喋り方で全てを見ることが出来る」

「そんなこと出来るんですか?」怪訝そうな2人

「ああ、私は占いに頼らない。この世に占いなんてない。だからこそ占いによる詐欺をなくそうと思って、この『占いをなくそう会』を立ち上げたんだ」

「へぇ〜素晴らしい考えですね。僕達もこの会に入っても良いですか?」目を輝かせながら質問する拓海と困惑する紗良「勿論、君達が会員第1号と第2号だ」

「え?」

「この会を立ち上げたのは26歳の時だが、そんな私も30歳になった。まぁ顔のハンサム具合は年々増しているがね」「会員の方っていないんですか?」

「ああ、君達が第1号と第2号だ」

「えぇ、もっと何十人もいると思っていました」失望する拓海

「4年もの間何してたんですか?」少し笑いながら質問する紗良にイラつきながら寺山が答える

「4年間占い師に騙された人に話を聞いて情報収集していたんだが、いつも話の最後の方になると調子に乗ってしまってね」

「調子に乗るってどういうことですか?」

「さっきも言ったが私の仕事は全相師だ。その人の服装、髪型、所作、面相、喋り方でその人のことを判断する。占いには頼らない。だが、その鑑定を尽く失敗してね」

「えぇ」同情する拓海と失望する紗良

「おまけに鑑定料1万円を請求したら怒鳴られたんだ」

「何してるんですか〜」優しく声をかける拓海

「やってること占い師と一緒じゃないですか!」厳しく声をかける紗良

「あんな詐欺師と一緒にするな!」全力で訂正する寺山 「まぁとにかく、4年間で成果はゼロだ。」

「っていうか、寺山さん全相師として何も出来ないのにどうやって暮らしてるんですか?」紗良のトゲがある質問に引く寺山

「まぁそれは優しいマダムにご飯を食べさせてもらってお金を貰っているからだ」

「今流行りのママ活ですね」冷静な拓海

「2種類も詐欺やってるんですか!?」引く紗良

「あれって普通若い男がやるもんでしょ?よく30歳で出来ますね」目を輝かせる拓海

「そこに関心すんな」冷静に訂正する紗良

「まぁこのパーフェクトフェイスがあれば余裕だよ」ドヤ顔の寺山 目を輝かせる拓海 無表情の紗良

「じゃあ、僕のこと鑑定出来ますか?」目を輝かせながら拓海が聞く。

「もちろん出来るよ」自信満々の寺山

「浅田拓海 22歳 服装、髪型、所作、全てが平凡だ。面相は、鼻先が広いので欲に溺れやすいと見る。まぁ実家暮らしでダラダラしてるんだろうな。平凡で欲に溺れやすい大学生というのが鑑定の結果だ」自信満々に寺山は言い放つ。

「一人暮らししてます」失望して口を開く拓海

「人は見た目で判断できないって身をもって証明しましたね。さすが全相師」皮肉を言う紗良

「よく見たら、読み取りにくい顔をしている。こんなの誰も鑑定出来ない」負け惜しみを言う寺山

ため息をつく一同


「そういえば、何で全相師になったんですか?」気まずい空気を察した拓海が質問する。

「その昔ノストラダムスの大予言という予言があってな。1999年7月に地球が滅亡するとテレビで占い師が言うから小学生の私は絶望したんだ。だから勉強も友達作りも全くやらなかった。しかし、1999年7月を過ぎても何も起きない。その頃には勉強、友達作り、全てが手遅れだった。あの時の占い師のせいで私の人生はめちゃくちゃだ。だから占いをなくしたい。占い師は偽善者だ。というか偽占者だ。その気持ちで全相師になった」

「なるほど、つまりノストラダムスの大予言を利用して騒いでた占い師に復讐したいんですね」納得する拓海

「それってただ怠けてるだけだと思うけど」本音を言う紗良

「うるさい!そもそもあの時物心が着いてなかったような奴らに何が分かるって言うんだ!」怒る寺山

「とにかく、僕のお母さんに占いを辞めさせるように言って欲しいんです」お願いする拓海

「こんな詐欺師にお願いするの?」小声で聞く紗良

「お願いするしかないよ。僕が行くよりマシでしょ」小声で言う拓海

「良いだろう。行ってやろう」拓海と紗良の会話が聞こえずに堂々と発言する寺山

「そのかわり、お前らも来てくれ」低姿勢な寺山

「え!?僕たちも!?」困惑する拓海と紗良 

「寺山さんが1人で行くと思ってました」「そうよ、全相師って偉そうに名乗ってるなら1人で行って下さいよ」

「1人では行かない。私の初めての仕事だぞ。それに、お前の母親の問題だろ。代金は無料にしてやるから。」

「はい!じゃあ行きます!」心変わりした拓海

「はぁ?私は行かないよ」断る紗良 

「じゃあ君にはご飯を奢ってやろう」お金をチラつかせる寺山 

「分かりました。行きます!」心変わりした紗良

「すいません、言いづらかったんですけど、寺山さん臭くないですか?ちゃんとお風呂入ってますか?」オブラートに包んでいるつもりの紗良。

「いや、3日入ってない。お風呂に入っている時間は無駄だ。第一、そんなこと人に聞くな。君は本当におせっかいだな」怒る寺山


この人達と一緒で大丈夫かな... 母親の問題よりも不安な拓海



東京都 八王子市にあるマンション これが拓海の実家だ。

「意外と高級そうじゃないか。金払いは良さそうだ」笑いながら寺山が言う。

「無料って言ったでしょ」怒る紗良

「あの〜僕本当に緊張してるんで、ふざけないでもらえませんか?」今にも吐きそうな拓海

「悪かった」

「ごめん。拓海にとっては重要な日だもんね」謝る紗良と寺山

「はぁ〜やっぱり辞めようかな」帰ろうとする拓海

「ちょっと待って。覚悟を決めたでしょ」

「そうだ。わざわざ来てやったんだぞ」引き止める紗良と寺山

「他人事だから気楽でしょうけどね、こっちは実の母親の信じるものをなくそうとしてるんですよ?そりゃ辞めたくなりますよ!」本音を言う拓海


ピンポーン

「はい、浅田です」

「お久しぶりです。拓海くんの彼女の瀬戸紗良です」

「あらま〜お久しぶり。拓海も一緒?是非上がって!」息子と息子の彼女が一緒で喜ぶ純子

「ちょっと!勝手に何やってんの!?」驚く拓海

「さぁ、上がろう」満面の笑みを浮かべる紗良

「ありゃ悪魔だな」小声の寺山

「あぁ心の準備が出来てないのに...」憂鬱な拓海

「お久しぶり〜紗良ちゃん、益々可愛くなってるわね〜拓海と付き合ってどれくらい?」

「3年くらいです。お母さんも変わらずお元気で何よりです〜」久しぶりの会話が弾む純子と紗良

「あら、このお方は誰?拓海のお友達?」

「私は、寺山直輝です。拓海くんとは知り合いなんです」爽やかな笑顔で話す寺山

「まぁ拓海にこんな男前の知り合いがいるなんて驚きだわ〜 私は拓海の母親の浅田純子です」

「お母さん 久しぶり」憂鬱な拓海

「こんな可愛い彼女と男前の知り合いを持って幸せ者ね〜」嬉しそうな純子

「あ、今日は運気が良いって清水先生に言われてたから、こんな幸せなことが起きたのね」笑顔で話す純子

表情が曇る3人

「お母さん、清水先生って誰ですか?」不思議そうに質問する紗良

「最近話題になってる占い師の清水智也先生よ。このカレンダーは日付け単位で運気が分かるのよ」

そのカレンダーには、2019年5月15日 幸運の日 と書いてあった。

他の日にも当たり障りのない似たようなことが書いてあったが、純子はこのカレンダーを信じていた。

「お母さん、実はこのことを話しに来たんです」言いにくそうな紗良

「あぁ、紗良ちゃんもこのカレンダー欲しいの?他にもたくさんあるから持って行って良いよ。元々拓海の部屋だった部屋にたくさん占い用品置いてあるから持って行って良いよ」優しく言う純子

部屋に行く3人

元々拓海の部屋だった部屋には、大量の占い用品があった。思い出の空間が全て占い用品になっていた拓海は悲しい気持ちでいっぱいだった。

「もっと帰って来たら良かった。こんなことになってるなんて思わなかった」悲しそうに言う拓海

「大丈夫よ。お母さんを説得しましょう」優しく声をかける紗良

「しかし、こんなに占い用品買うなんてな...色々な人に話を聞いてきたが、こんなに買う人あんまりいないぞ」心配そうに言う寺山

「よく見たら、同じ商品が何個も買ってある。もしかして、占い師が購入を勧めているのかな」質問する紗良

「そうだろうな。10年前から15年前にかけて、警察による占い師の摘発が相次いだんだ。だから不特定多数より『狭く、深く』少数の信者を狙って大金を搾取するようになったんだ。お前のお母さんは、この戦法で占い師に大量の占い用品を買わされたんだろうな」言葉を選びながら話す寺山

「なんて酷い奴らだ」怒る紗良

「全部僕のせいだよ。見て見ぬふりせずに、もっと帰って注意しておけば、こんなことにはならなかった」後悔する拓海

「拓海のせいじゃない。全部占い師のせいよ。1人で抱え込まないで」

「過去は変えれないんだから、後悔するな」

慰める紗良と寺山

「しかし、どう説得しますか?拓海のお母さん、相当な占い師の信者ですよ」心配な紗良

「大丈夫だ。こんな時のために全相師である私を呼んだんだろう?」自信満々な寺山

「正直、そんなに頼りにならないんですけど」小声の紗良

「よし。私がいこう。何よりこの素晴らしい顔があれば、大抵のマダム達に気に入られる」自信満々な寺山

心配そうな拓海と紗良



リビングにて 椅子に座る純子に話しかける寺山

拓海と紗良は元々拓海の部屋で、今は占い用品が置いてある部屋にいる。

リビングで2人きりの寺山と純子

「あれ、占い用品が欲しいんじゃなかったの?」不思議がる純子

「いえ、大丈夫です」否定する紗良と寺山 悲しそうに黙る拓海

「実は、私達はお母さんを説得しに来ました。私は全相師です。その人の服装、髪型、所作、面相、喋り方でその人を鑑定します。この世に占いなんてありません。どうか目を覚まして下さい。このことを伝えに来ました」必死で喋る寺山

「全相師?占いなんてない?何を言ってるの?気分が悪いわ」表情が曇る純子

「あなたは占い師に騙されています。拓海さんの部屋に置いてあった占い用品で何か変わりましたか?」

「ええ、あの占い用品で運気が良くなりましたし、カレンダーはその日の運気が知れるんですよ。」

「先程見させて頂いたカレンダーはこちらですね」カレンダーを開く寺山

「『2019年5月15日 幸運の日 運気は絶好調 何をしても運気が良い 体調、気分は絶好調』こんなこと誰でも書けますよね?っていうか占い師に日付けをピッタリ当てる予言なんて出来ません 」ハッキリ言う寺山

「なんてこと言うの!清水先生は統計を取って占いをしているのよ。他のインチキ占い師とは違うのよ」怒る純子

「あぁ、それは占い師の常套手段です。『私の占いは統計学』だとか言って信じ込ませる。それと、他の占い師をインチキだとか悪く言っておいて他の占い師にハマらせないようにする。そして、狭く深く1人の信者からお金をむしり取る。立派な詐欺ですよ」早口でまくし立てる寺山

「何よ!清水先生が詐欺師だって言いたいの!?私は騙されてるって!?そんな戯言誰が信じるか!」さらに怒る純子

「それに、清水先生の占いは絶対に外れないのよ!」自信満々な純子

「ほぉ外れない?カレンダーには『2019年5月15日 幸運の日 運気は絶好調 何をしても運気が良い 体調、気分は絶好調』気分は絶好調!?『さっき気分が悪い』って言ってたじゃないですか!」大声でまくし立てる寺山

「な、何よ!少しくらいの誤差はあるわよ」焦る純子

「『 清水先生の占いは絶対に外れない』ってさっき言ったばっかりでしょ」笑う寺山

「純子さん、あなたを責めてる訳じゃないんです。全部占い師が悪い」冷静な寺山

「占い師に予言など出来ない。これはたった今分かりましたよね?」優しく声をかける寺山

「あぁ...」ぐうの音も出ない純子

「とにかく、占い師っていうのは純子さんみたいな優しい人を騙してお金を稼ぐんです。ちょっとでも不信感を見せたら占い師は手を引きます。残ったのは大量の占い用品。高いお金を払ったのに売れる訳もなく、ただのゴミになる。こういう人はたくさんいます。もっと沼にハマらないように、私は説得してるんです」真剣な寺山

「でも、私は清水先生に救われたの。大きな不安に駆られた時、清水先生の占いによって救われた」

「だから占いなんてないってさっき言ったじゃないですか」

「この世に占いなんてなくても、私にとって清水先生は心の支えなの!」熱弁する純子

「占いという非現実的な物を使ってお金を騙し取る奴らを心の支えにしてはダメです!」熱弁する寺山

「非現実的な物を商売道具にする職業なんてたくさんあるじゃない。なんで占い師だけ目の敵するのよ。あと、現実から一旦逃げて夢を見ることも大事よ!」怒る純子


大声の言い合いが聞こえてきたので、急いでリビングへ向かう拓海と紗良

「ちょっと、2人とも何をやってるんだ!」注意する拓海

「2人きりの会話が言い合いになってしまったらダメじゃないですか」寺山に話す紗良

「悪かった。しかし、君のお母さんは占い師のことを心酔しきってる」拓海に話す寺山

「この人何よ!なんでこんな人連れてきたの!」怒る拓海

「まぁまぁ悪気がある訳じゃないんです」諭す紗良

「でも、お母さんが占いという物を100パーセント信じている訳じゃないということが分かったよ」口を開く寺山

「え?どういうことですか?」驚く拓海と紗良

「要は、不安から逃げてるんだ。ずっと1人でいると、不安に押しつぶされそうになるんだろう。これから息子が就職するとなると、さらに不安なんだろう」説明する寺山

「お母さん、どういうこと?」質問する拓海

「ええ、そうよ。占いを100パーセント信じている訳ではない。でも清水先生は私にとっての心の支えなのよ。」」

「心の支え?」不思議がる紗良

「ええ、1人で過ごして不安な時、私の心に光を灯してくれた。占いという非現実的で儚い道具でね」

どう声を掛けて良いか分からない拓海、紗良、寺山

「現実から一旦逃げて夢を見ることは大事なことよ」ハッキリ言う純子

「夢を見ることは良いことです。でも、夢にお金をかけすぎると、現実が壊れます。」反論する紗良

「ああ、紗良の言う通りだよ。お母さん、かつての子供部屋が占い用品を置く部屋になってるなんて...悲しさ、後悔、力不足を痛感するよ。本当にごめんなさい。これからは、僕がもっとお母さんを楽しませるから、もうこれ以上占い用品を買わないでくれ!」熱弁する拓海

「うん、息子をこんな気持ちにさせて母親失格だわ。本当にごめんなさい。これからは、現実をもっと楽しむ」泣きながら話す純子


嬉しそうな顔をする一同



ピンポーン 「占い師の清水です」

ここまで読んでくださりありがとうございます。

誤字脱字多いと思いますが、イライラに耐えた読者様、本当にありがとうございました。

ここまでは前編で、後編が完成したら後編を投稿します。後編もイライラに耐えて欲しいです。前編のイライラに耐えることが出来たら、いつ何時のイライラにも耐えることが出来ると思います。

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