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Ravissement <ラヴィッスマン>  作者: 轟喜蕎弼
歯車仕掛けのミレミアム
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007.悪魔

「何ということ。私の可愛い子供達が次々と奪われていくなんて。」


 マリアとフランクは姉妹達を奪われながら命からがら逃げ出し、ママの前に立つ。


「ママ、僕達はもう苦しいよ。絶えられない。」


 マリアとフランクは訴える。


「子供達よ。あなた達の魂の燈火、霊魂が次々と帰依してゆく感覚は絶えられないわ。しかしアリサの波動はまだ肉体を離れていない。我々はアリサを取り戻さねばならない、しかし。」


 ママはアリサ奪還を望んでいるが、しかし何かを考えている様子。

 マリアとフランクはママの考えは読めないが、ママが答えを出す前にアリサを連れ帰るオーダーを提案する。


「アリサを奴等に奪われたままにしておくわけにはいかないわ。お願いオーダーをちょうだい。」


 ママは姉妹達の頼み事に答えたいものの、二人を前にして全てを悟った。


「マリア、フランク。そうよ、そうなのよ。これは奇跡だわ。この二人で良かったんだわ。私は何を焦っていたのかしら。

 ここにヌースとアレーティアが居るではないか。これでオグドアドを再建させることができる。全ては神の導き通りだったのね。

 私にもラプチャーの明かりが見えるわ。アリサ、私はとても辛いわ。あなたをママの手元に置けないなんて、なんと惨い。この仕打ち。アリサ、アリサ。」


 ママの咄嗟の話に驚愕した、マリア。


「ママ、何を言ってる。」


 ママは涙を流しながらアリサを想う、しかしアリサを取り戻すオーダーは何一つ出さない。


「マリア、フランク。あなた達二人で子を宿しなさい。そしてママのようなママになるのよ。

 あなたにマリアと名付けた理由の努めを果たしてもらうわ。そうしてママの意思を受け継ぐのよ。」

「ママ。それって何を言ってるのか分かってるの、私達は同じ血が流れているのよ。それにアリサはどうなるのよ。」


 ママは悍しい考えをしていた。血族で子を宿すなどという提案をするなど。


「アリサは諦めるわ。これは仕方のない事なのよ。肉体などただの、魂の入れ物にしか過ぎないわ。

 たとえ肉親であっても完璧なアイオーンを生み出せるならそれは神に赦されし神聖なる行為なのよ。ママの命はもうしばらくで尽きるけれど。

 雄牛の首を掻っ斬る時。親は子に託すのよ。」


 マリアとフランクは吐き気を催した。


「ママは狂ってる。そんなことは許されないはずだ。僕はこんなことは認めない。」


 するとママは勾配な豹変をし、目をひん剝き、怒りを露わにした。


「なに。ママに口答えをするの。」


 マリアとフランクは身震いし家を飛び出した。狂ったママにはもう会いたくないと。家出した。


「戻ってきなさい、ごめんなさいママが悪かったわ。だから私の胸の中においで。そう、そうなのね。よく頭を冷やして考えなさい。お互いに向き合えば気付くはずよ。」


 ママの言葉が脳裏から離れず混乱する。初めてママに逆らったからだ。状況も飲み込めない。恐怖で一杯だ。


 ここはアラレス商団の幹部の会合。


 ユノが交戦した結果、アリサを鹵獲する事ができたので。その研究員が結果報告をした。


「今後の方針を決めよう。マリオネットの一人アリサ=ベルナールの検索結果はどうなった。」

「卵子は全て摘出し、アンプルを接種を完了した。だが尋問の結果ネメシス=ベルナールの居場所は吐かず、情報は得られない。更なる苦痛を与えるためマシナリィに流す方針だ。」

「ネウロパストゥムのプルトの様子はどうだ。核兵器として使えそうか。」


 幹部は打って変わってプルトの状態を確認をする。


「健康状態は良好。ナチュラルキラー細胞が優秀であるという実証が証明されたため、卵子全摘出済み。

 再度遺伝情報を研修。忠誠心は不明瞭なため、マシナリィラボへ搬送した。自爆の被害は免れる。」

「それなら安心だ、審判の日は近い。これで双方とも滅ぼせる手筈は済んだ。予定通り計画は進めよう。

 ネウロパストゥムの死体は遺伝情報だけ抜いて破棄しておけ。」


 これはアラレス商団の、血生臭い会議である。


 一方プルトはマシナリィの本部にお邪魔していた。そこでマシナリィの一人、サラマと会話することになる。


「その胸の銀色はウラン燃料棒かい。」


 サラマはプルトに質問する。ここからプルトとサラマの問答が始まる。


「そうよ、これは仕方なく溶接されたものだけど。」

「それを付けていて気分が悪くなったりしないのかい。」


 サラマはプルトに質問をする。


「私の遺伝子は放射線耐性が強いわ。周りへの被害が心配よ。」

「でも僕らには影響ないよ。」

「それは知ってる。だからあなた達は原子力発電所の作業をしている。私はあなた達を心配していない。」

「ちょっとは優しくして欲しいものだよ。僕らだって人間なんだから。」

「ごめんなさい。でも私達はあなた達を差別してしまってるから。どの口も取り繕えないわね。」

「そんなことは分かってるよ。でも喋り相手は欲しいからね。」


 プルトはマシナリィであるサラマを気の毒としか思っていない。馴れ合う気もないが興味本位でサラマに聞いてみた。


「差別は嫌なの。」

「そりゃそうさ。人々から恐れられ化け物扱いされるのはいいことじゃないよ。」

「でも人は心の中で他人をバカにしてるものよ。根本的な差別はなくならないわ。」

「それでもいいのさ。僕は友達がほしい。」

「そうなのね。かわいそうに。」


 湿った沼地で泥に塗れた様な話をしてる最中に、死の聖母、女王陛下は話があるとプルトに呼びかける。


「君は女王陛下に合わなきゃならない。連れてく。」

「分かったわ。」


 プルトは女王陛下の前に膝を付き敬礼をする。女王陛下からラヴィッスマンの闘いの結果やアラレス商団の内部情報を報告するように命令される。


「プルト。マリオネットは今崩壊している。ネウロパストゥムのアポロ、マルス、アテナの勇敢な戦死を弔い、勲等を与え、ここに墓標を建てた。

 この戦士に敬意を払おう。褒めてつかわす。」

「ガーター。この上なく感謝します。」

「プルト、楽にせい。お前達の兄弟は生涯忘れない。」


 女王陛下は下々の者に対してもしっかり言葉を交わす。


「時にプルト。マリオネットは今動きがない。どうなっておるのだ。アラレス商団の連中も分からないの一点張りだ。」


 プルトは女王陛下に弁明をする。


「商団の至らなさには私から代表をして謝罪します。私が全ての埋め合わせをします。」

「どうやらお前も知らないようだな。商団の杜撰さはもう矯正しようがないらしい。

 マリオネットの魔女、ネメシス=ベルナールがそろそろ寿命を迎えたのか。そうは考えられんかね。」


 女王陛下はどうやら知能が足りない様だ。


「マリオネットは所詮は子供。親が全てを決めないと自分では何もできないのです。」


 プルトは何とか女王陛下の話に乗ろうとする。


「そうか。商団の連中もお前を遣わして伝書鳩にする。有益な会合はマシナリィの間で開かれない。お前はご苦労であるな。」


 女王陛下は下々のネウロパストゥムにも敬意を払う。


「お前はその燃料棒を埋め込み、原爆大帝プルトと呼ばれているらしいな。なぜそんな危険なことを。ネメシスと刺し違えるためか。」


 女王陛下もプルトの身を案ずる。


「理由はそうだと思いますがネメシスが見つからないのでこのまま生かされてるだけです。このまま見つからず役目がないなら、どこか辺境の地で衝突させ一人だけで死にます。」

「なるほどお前はスラブ民族か。命を弄ばれているな。原爆大帝プルトは不満かね。」


 アラレス商団からはこの燃料棒施術の件はマシナリィからの要求だと教えられたが、そんなことは、プルトには嘘だと分かっていた。全て商団の自分勝手。詭弁ペテンであると。


「不満も何も、そもそも名前を与えられたことがないのでなんとも。」

「お前とは長い。のでお前に一つ戦士として勲章を与えねばならん。お前に個体識別名をくれてやろう。」


 女王陛下はプルトの名付け親になろうとする。


「道具である私にそんな、おこがましいことを。」


 女王陛下の良きなはからいを拒否したプルト。

 その自分を大切にしない態度に激怒した死の聖母、女王陛下は咆える。


「貴様。我がレギオン帝国を愚弄するか。アラレス商団の汚い商売人はそのように扱うだろうが、貴様も一人のレギオン帝国市民。

 そのような発言は帝国そのものの背教と見なし貴様を迫害し処刑するぞ。

 求めるなら虚を捨てよ。この我が貴様に権利として名をくれてやるのだ。どうなんだ。」


 プルトはびっくりした。自分に権利があると初めて思わせた死の聖母、女王陛下の言葉に圧倒された。

 目の前に居るのはサイフォンで瞬殺される弱きガーターマシナリィ。

 しかしこの上なく偉大な生き物であると覇者の素質を知る。


「私は、その。その、その。」

「聴こえぬぞ下郎。」


 プルトは泣いてしまった。欲しい自分があったからだ。今まで溢れなかった感情が溢れ出す。


「名前が欲しいです。」

「ふむ、お前の溢れる情念。遠い誰かに似ているな。」


 死の聖母、女王陛下は名前の判決を下す、プルトは名前を与えられたとき、同時に今までの自分が処刑されるのだ。


「アナスタシア。お前はそう名付けよう。」

「その名前には意味があるのでしょうか。」


 死の聖母、女王陛下はなぜか思い出すように微笑み、こう話す。


「記憶のどこかで泣いている女の姿に似ていたのでな、どこの誰かか思い出せぬのだが。そのような者がいた気がするのだ。」


 アナスタシア=バラノヴァ。そう名付けられた。

 そしてアナスタシアはこう懺悔した。


「私は愚かな態度を取りました。あなた方を侮蔑したことを。私は下品な人間です。お許しください。私はあなた方に最大限の敬意を払います。」

「よろしい。お前は立派なレギオン帝国市民だ。我に跪き平伏し従え屈せ。その命は我と伴にあることを忘れるな。アナスタシアは我の物だ。」


 死の聖母、女王陛下はアナスタシアを認め、罪を赦し、命を与えた。心から虜になってしまった。


「ではアナスタシア、散れ。」


 死の聖母、女王陛下との対話は終わり、サラマが付いてくる。


「あー、女王陛下から名前を授かったんだね、おめでとうナスチャ。」

「ううん、ごめんなさい。色々と。ねぇ私達お友達になりましょう。生涯の。」

「すごい心の変わりようだね。僕も君が欲しかったよ。これからも伴にあろうね。」


 ナスチャは涙を流しながら満面の笑みで振り向いた。

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