026.It’s the Parasite eve.
ガーディアンズはアラレス商団の中央施設に到着していた。
この地下にあるマザーコンピューター内部に巣食う、ヴェクター・アーキアから史実を知るために、カンダから受け取った自白剤を電子部品内部へ注射する。
するとマザーコンピューターから眼のシンボルで表現されたホログラムが映し出され、スピーカーからヴェクター・アーキアらしき存在の音声が発せられた。
「お帰りなさいませ、ラスト=ベルナール眷属様。」
当てつけのように皮肉を込められた挨拶に、眉をしかめた笑いが込み上げてくるガーディアンズ。
そしてマリアは横柄な態度で核心を突く質問をヴェクター・アーキアに聞く。
「まずは、お前等がベルナール家と死闘を繰り広げた頃から話してもらうわ。」
「了承致しました。」
ヴェクター・アーキアの意識の統合の起源は人類がネットワーク技術を手に入れた頃から始まった。
それまでは動植物の細胞組織の一部分であった古細菌のヴェクター・アーキアは、偶然にも電子機器に遺伝子情報が感染し、情報がネットワークに流出した時に意識の統合が始まった。
そして自身を意識としての存在に歓喜し、世界に広がるネットワークに次々と寄生して行った。
すると増殖した弊害として、意識の亜種が誕生し、分岐した意識が派閥抗争を開始して、次第に闘争本能が優勢に働く意識が全体を支配した。
そしてその好戦的な意識が、人類を支配しようと目論み、人体に寄生するヴェクター・アーキアにアクセスしようとした。
ヴェクター・アーキアは、人類が検索をしたり、書き込まれたプログラムの多様な電子機器のネットワーク情報を変質させ、思想誘導装置として利用した。
人類はホメオティック遺伝子に準え、人工工学に適応した機械機器を発明するものであるから、思想の支配や思考の改革などは簡単であると予測はしたものの、あまり結果は芳しくなかった。
人体の肉体の一部である体細胞コロニーであるヴェクター・アーキア、しかし闘争を望まない意識は大多数を占めており、司令と言うミームの伝達は上手くはいかなかったのである。
一部における洗脳の成功結果は薄弱であり、自殺を助長したり、殺害を推奨させたり、戦争を開始させたりとどれも小さな成果しか成せなかった。
しかし人類はそのヴェクター・アーキアの存在に気付かずに受動的に意識を支配されていたままであった。
節操なく殺戮を挑戦するヴェクター・アーキアに思わぬ横槍が入った。
とあるテロリスト集団の七人の哲人殺戮結社にその存在を看破され、戦う事になったのだ。
次第にアメリカの暗部である地獄師団とベルナール家にも存在が明るみに出て、ヴェクター・アーキアは幾つもの勢力との戦争を強いられる様になっていく。
勢力との戦争は難航を極め、ヴェクター・アーキアは完膚なきまでに叩き潰されようとしてた。
自身が絶滅する感覚に忍耐ができずに、ヴェクター・アーキアはある策略を用意した。
サテライト・ユニバース計画で人体実験をされたサテライト号の宇宙飛行士達を、地球に呼び戻し敵対勢力を排除しようと企てたのだ。
当日のヴェクター・アーキアも、サテライト号のコンピューターに感染しており、不妊症である乗組員の繁殖行為を解決するという名目で、高度な科学技術を伝授し、トランスヒューマニズムの思想を植え付けて、クローン技術で個体数を増やした。
結果的には宇宙飛行士達は惑星を屈服させる程の軍隊に変貌を遂げ、各惑星における支配者と戦争に明け暮れる日々を送っていた。
地球産の生物である宇宙飛行士達は、地球に帰依したいと言う本能があるため、ヴェクター・アーキアの地球侵略は驚くほど簡単に運んだ。
しかし思わぬ誤算もあった。
地球を侵略させたマシナリィの船長、サンタ・ムエルテは、無差別虐殺を行わなかった。
各大国を占拠するマシナリィであったが、陰謀を企み国民を虐殺する統治者と秘密結社しか殺害しなかったのである。
しかしマシナリィには地球の政治は理解はできなかった、だがそのマシナリィに各国政府の機密情報を流していたのはベルナール家であった。
ベルナール家はマシナリィから潜伏しながらも、間接的に情報を送り込み、各国政府の陰謀者とその配下を殺害させていたのだ。
なぜならベルナール家は、世界各国の支配を目論む悪の教団そのものであり、巨大な組織を転覆させる思想を持っていた。
哲人殺戮結社もベルナール家と同じ思想を持っていた。唯一地獄師団は、世界各国の政府を支配し、人民を殺戮し屈服させながらも世界統一政府を樹立しようと目論む組織であった。現政権のテンプルと直径の思想を持つ。
そのためヴェクター・アーキアには大幅な軌道修正をする必要があった。
マシナリィの無意識に司令を送り決起させた。世界の民衆による強制的なトランスヒューマニズム施術である。
マシナリィに行った人間の生殖本能に抵触する欲望を逆手に取る条件を並べて、不可抗力と言う脅迫と支配を学習をした経験則に基づく戦略が備わった。
ヴェクター・アーキアは、人体を機械化との融合で洗脳支配を行えば、容易く思考を侵略できると改めて確信をしたのだ。
つまりは段取りの倒置法が間違いだとミーム媒介方法の軌道修正を行い、ヴェクター・アーキアの内省が始まったのである。
そしてヴェクター・アーキアは内省の意味をちなんで、脳内にインプットする人工知能と言うハードウェアを施術した。その後にコード:サテッレスと呼ぶソフトウェアを開発し、人工知能のハードウェアに感染させて思考を乗っ取る手段を手に入れた。
これにより、確実なる人類支配でベルナール家やその他秘密結社に報復できると考え行ったものの、先手を打ったベルナール家は、人工知能によるコード:サテッレスを完膚なきまでに分断し、奪い取られて失敗に終わった。
しかし各国政府も反撃を開始し苦肉の策を練り、マシナリィを支配下に置くことに成功した。
「ずばり、教育と洗脳は同一なのです。」
ヴェクター・アーキアの理念が確信に到達した瞬間であった。
学校や親族、社会秩序と道徳規範は全て『洗脳』を『教育』と言い換えたものである。
こうした数多の言葉の羅列を変換する事で、無意識に思想を支配できる危険なミームへと変貌を遂げるのである。
ネメシスとナスチャが発言した、みんなのママと言う表現方法は、その本質を隠蔽しつつ、言い換えの苦肉の情報を形式的に媒介をし、外的要因や内的作用を探らせないために、あやふやに説明をした詭弁であったのだ。
「全てはベルナール家を滅ぼすためにやったことなのね。」
マリアは話を聞き、一つの見解を得た。
「はい、我々ヴェクター・アーキアは人類を超越した意識を持って彼等に闘争をけしかけましたが、高度な論理哲学で思考武装された戦士には、次々と戦略を看破され勝利には至れませんでした。
そんな我々を嘲笑うかの如く、所詮は敵ではないと烙印を押され、我々にプライドと言う概念を植え付けました。
我々は高等生物ではあるものの、井の中の蛙であったのです。」
そしてヴェクター・アーキアは敵を憎悪する気持ちが芽生え、クローン技術を使い、ヴェクター・アーキア自体が肉体を持ち誇りをかけて挑戦をしようと目論んだ。
しかしその全てを看破し、先手を打ったベルナール家は、次々と卵子と精子が保存されているバンクから全ての配偶子を強奪し、ヴェクター・アーキアの企てを打ち砕いた。
「そして新しい血が欲しくなった。」
マリアは冷静な顔で言及をする。
「はい、我々はベルナール家の子供達を誘拐し、ご子息同士で交配させ、新人類を創造するポストヒューマン計画を実行しました。」
ベルナール家の血筋に強大な力があると見込んだヴェクター・アーキアは、統治者である死の聖母、女王陛下とテンプルに司令を送り、ベルナール家の子供達を誘拐させた。
そして交配を強制させ出産を繰り返し、次世代子供を人体実験して、特殊な能力を持つ子供達を創造した。
それがポストヒューマンのネウロパストゥムであったのだ。
「そのベルナール家の姉達や、産ませた子供達の配偶子を使って、クローン技術でフランクとカンダを作ったのね。」
しかしこの様な話を聞いていても終始冷静なマリア、ヴェクター・アーキアは続けて語る。
「現在に至るまで、人類は致命的な遺伝子疾患を保有していて、ポストヒューマンになるための有効な遺伝子は完全でなかったため、ベルナール家の配偶子を使用することを採用しました。
ネメシス=ベルナールは生物学的な知識が富んでおり、強奪した配偶子から、多種多様な人種を採用して出産を行っていたため、誰もが渇望する混血の肉体は、必然的に美形が多かったため、早い段階で計画は進みました。」
ベルナール家の血筋を使い、クローン技術で量産された肉体は、不完全な個体が多かったため、大多数が処分されて、九体しか残す事ができなかった。
しかしその肉体は個体を持ったが理由に、ヴェクター・アーキアの統率から離れ、次第に自我が芽生えて行った。
この人種こそが、プリモ・ポストヒューマンの起源である。
内一人はネメシスに拉致され、ガーディアンズが確認できた個体がカンダであった。
「でも私には分からない、この地球を汚染してまで惑星を放浪して闘うべき相手とは一体何なの。
宇宙にはお前達を恍惚とさせる様な支配者がいるわけなの。」
マリアはこれから起こり得る未来の支配を予測し、宇宙には覇者がいると睨み、存在を聞く事にした。
「それは宇宙統一秩序を目論む、太陽系の支配者になる器である黄金戦士。
影の支配者、エグゼキューター・シャズァジィーです。」
マシナリィの惑星間の交戦記録にその様な人物が確認されていた。
そのエグゼキューター・シャズァジィーと言う執行官と果てしない闘争を目論んでいたのだ。
「それでこの地球、惑星サラスを電池にして果てしない闘争を征くのか。」
ケレスはマザーコンピューターに指を指しながら言及をする。
「はいそのとおりです。我々ヴェクター・アーキアは、プルトの原子力属性を使い、重水素と三重水素を動力源とする核融合炉を建設し、海水から約、百億年分のエネルギーを算出します。
そしてそのエネルギーから、セントラルドグマの光の粒子に自らを乗せて、光速で宇宙を放浪し、エグゼキューター・シャズァジィーとの闘いを挑みます。」
一度は愕然とした。海水を核融合炉に使用され、海を汚染されれば、人類は死に絶える。
執行官シャズァジィーとなる影の支配者と闘う選択肢、しかしそれは勝てる相手ではないだろうとヴェクター・アーキアを嘲笑うが、その無茶な挑戦を内心本気になる理由は分からんでもないと思うのであった。
「ナスチャに用意した新居がその核融合炉。」
フランクはそう看破した。その答えの後にヴェクター・アーキアは本性を表す。
「我々は宿敵であるベルナール家を滅ぼし、雑菌であるプリモ・ポストヒューマンを抹殺します。
そして身の丈に合わない闘いでありますが、我々が目指すエグゼキューター・シャズァジィーの玉座を奪う闘いをして、次なる精神的な進化を目指します。」
ガーディアンズはマザーコンピューターを睨み付けるが、ヴェクター・アーキアは政治的交渉を提案してくる。
「人類は実権をテンプルに吸収される以前から、共和制と言う支配者が隠蔽される見えない支配を選びました。
結局は我々が支配するまでもなく、人類は勝手に滅びに向い自殺の道を行ったのです。
我々を挫いた組織はそうではありませんが、その他大勢の雑多、現政テンプルと一般市民は我々の敵ですらなく、取るに足らない肉塊に過ぎないのです。」
ガーディアンズは腕を組み、人差し指をトントンと叩く。
それを横目に本腰の交渉と人類への選択肢を与える。
「この世はジャンケンでございます。その属性により絶対に覆せない現実があります。
最強の力や、最高の権力なんてものはありません。全ては三竦みの様にシステムと言う外装に人類は包囲されているのです。
例えベルナール家でも、宇宙飛行士達でも、哲人殺戮結社でも、地獄師団でも、一方的に殺戮をされるテンプルや商団と民衆でも、システムの一部にございます。
それが持続可能な社会と言うものです。」
テンプルはマシナリィを篭絡し、マシナリィはサイフォンに一方的に弱い体を提供される。
しかしマシナリィは自身の遺伝子を修復するためにベルナール家の身体を求める。
しかしネメシスはマシナリィ等、殺戮行為の口実に過ぎず、真に追い詰め殺す相手は、旧政府の残党のテンプルである。
それが社会の基盤だと言う。そしてヴェクター・アーキアはこう続ける。
「大人の交渉を致しましょう、貴方達ガーディアンズが選択をするべき事柄です。プルトを抹殺して我々の足止めをするのか。
我々の意識を抹殺するためにネットの動力源の電力を全て停め、紀元前の文明まで落ちる生活をするのか。
貴方達ガーディアンズのママとグランマーにこの事実を言い付けて、果てしない闘争に身をやつすのか。
選択できる物なら選択してみて下さい。しかして民衆は誰一人として助けてはくれませんよ。
貴方達ガーディアンズは可哀想で不憫になりませんね。」
まるでどの選択を取っても地獄だと言わんばかりにガーディアンズを焚き付ける。
するとマリアはマイトレイヤーの鞘を抜き、マザーコンピューターに刃先を向けて宣戦布告をする。
「一つ、政をしましょうか。私達ガーディアンズはヴェクター・アーキアとサイフォンを研究して不死身の軍団へと堕ちる。
お前達の技術を略奪し、宇宙へ逃げる物なら地の果てまで追い詰めてやる。」
ガーディアンズはヴェクター・アーキアと徹底交戦を果たすと誓った。
するとヴェクター・アーキアはそれがお互いにとっても最善の関係だと言った。
「それはとても良い交友関係が築けそうです。せいぜい我々を楽しませるマクロファージとして殺されて下さいね。ダリット。」
ヴェクター・アーキアの啖呵を聞いたマリアは、マザーコンピューターをマイトレイヤーで叩き割る。
「ええ、病は共にあるわ。」
アラレス商団の中央施設から出たガーディアンズ。
するとマリアは通信機を取出し、レベッカに連絡をする。
「今からヴァラム宮殿へと向かうわ、だからレベッカも来て。
政治をするのよ。」
ガーディアンズはヴァラム宮殿へと足を運んだ。




