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Ravissement <ラヴィッスマン>  作者: 轟喜蕎弼
組立仕掛けのブルジョワジー
21/32

021.But if the citizen will not stay it’s hand.

 ナスチャの凄まじい力から逃げてきたフランクは、ちょうどよく合流できた、姉妹達とネウロパストゥムと共に、ナスチャからの汚染に及ばない土地で家族会議をしていた。

 フランクは皆に状況を説明した。


「マシナリィ以外の人類皆絶滅って感じね。」


 ユノは冷静な態度で考えてる。するとベスタは善は急げと言わんばかりに作戦を企てる。


 先ずはカンダの住まう村の住人、その中の戦闘員に協力をしてもらい。アラレス商団から、監禁されているネウロパストゥムの弟達の奪還、そして、これからの安居である地下シェルターの制圧と占拠である。

 そして村の住人にネウロパストゥムの弟達をかくまってもらうという目的だ。


 その作戦を聞いたラヴィッスマン、しかしラヴィッスマンは、救う人が村の住人と、弟達だけで、他の一般市民は見殺しにするのかと、意見が割れた。

 この事態になってネウロパストゥムは時間が惜しいので、無視をするべきだと言う。

 ラヴィッスマンは許されない事だと言う。するとケレスは、村の住人へ連絡をする。

 話を勝手に進めるネウロパストゥム。するとベスタは話をつけた。


「なら、村へ連絡している間に市民に状況を伝えなさい。奴等に理解できるなんて思わない事ね。」


 ラヴィッスマンは顔を真っ赤にして、市民に伝えるべく、手分けして通りすがりに状況を説明する。


「誰だいそれは、メディアじゃあそんな話はしてないよ、君は変な人だね。」


 アリサの説得は脆くも打ち砕かれた。


「放射線が危険だなんて学校で習ってないよ、君は病院に行くべきだよ。」


 フランクの説得も打ち砕かれる。


「人が死ぬなんて言われたって実感ないから分からない、君は危険人物なのかい。」


 マリアの説得も打ち砕かれた。


 どんなに説明をしても、根本から覆される返答がされる。ラヴィッスマンは千鳥足でネウロパストゥムの方に帰ってきた。改めて考えてみると、ラヴィッスマンには市民との接点はなかったのである。


「まさにスーサイドディザスターでしょ。」


 ベスタが笑いながら言った。ネウロパストゥムも爆笑をしている。

 そしてケレスは通信機をしまい。カンダ達と交渉が成立した事を伝える。


「カンダと部隊が合流先を決めた。これから俺達も向かうとする。」


 六人は車に乗り込む。これから部隊と落ち合う。

 落ち込むラヴィッスマン、するとネウロパストゥムが、ラヴィッスマンに対して、もうこれ以上迷わない様に慰めの言葉を投げる。


「この国の人間はただただ愚かよ。何も学ばないから万が一の連鎖全体すら理解ができない。

 見ても見落とすのよ。確認が取れないから。」


 ベスタは市民の性質を述べた。


「自発性のない個体から主体性のある思考は生まれない。奴等は他人の死を目撃しなければ、自分の身に起きる事を理解ができない。

 ただ川の流れに沿って死ぬだけだ。」


 ケレスは水の性質を述べた。


「私達は人を選別しようとしてる訳じゃないのよ。目覚めなきゃ誰一人救えないだけよ。君のための君だけに都合の良い英雄よ。

 ただお前達は何も恥ずべき事はしていない。人として立派だった。これからは迷うな。」


 ユノは発破をかけた。


 ラヴィッスマンは後ろ向きに考える事をやめた。全ては状況を理解し、生きたいと思う人の役に立てばいいのだと言い聞かせた。万が一を掴もうとする人だけを。


 車は目的の場所に到着した。辺りには誰もいない。少し待とうと車の中で休憩しようと一服したが、六人が乗る車を、四方八方から車列を組んだ搭乗物が取り囲んだ。

 六人は固唾を呑む。つまりこの挨拶は、我々は手練れであると言う意思表示である。

 車を前もって観測していたという知らせである。

 六人は車を降り、部隊と挨拶をした。


「錚々たる面子だな。まるで軍隊だ。」


 ケレスも負けず、余裕の笑みを見せる。


「遅れてすまないね。なんせ中隊規模なんで。」


 カンダが現れ実力のほどを示した。


「部隊を瞬時に招集させ、士気を一定に保つ精神力、恐れ入った。」


 ユノが部隊を誉める。


「アハハ、そいつは好戦的だって言いたいのかい。俺達は皆サイフォン使いさ。

 こいよ、君達の獲物も用意してるよ。」


 六人は部隊のトラックに連れられ、銃器を選択させられた。

 ラヴィッスマンは銃器の訓練もした事があるが、剣術の方が長い。基本的に銃器を好まないラヴィッスマンであるが。カンダはラヴィッスマンに好ましい銃器を選択し差し出す。

 AK47とRPK、ヴァルメ62の主力武器。そしてスチェッキンAPSとトカレフTT33という古代の銃器だ。

 カンダの部隊は検閲に引っかからない銃器を使用している。そして中隊規模を瞬時に移動できる理由は、地下のネットワークを経由しているから可能だと言う。

 カンダから色々教わるラヴィッスマン。そしてカンダはあることを言った。


「その銃器を使っていたのは七人の戦士だ。それは大昔のベルナール家と関係があるんだ。」


 ラヴィッスマンは心当たりがあった。夢の中で見た恐ろしき七匹のターバン猫達。それはベルナール家に闘い方を教えたと言っていた。


「そして俺達の部隊は、偶然にその戦士のネットワークを見つける事ができたんだ。」


 カンダの大規模な部隊は監視社会の網をかいくぐり、戦力を温存できる潜伏できる程の地下社会で動いている。

 レギオン帝国に反旗を翻すためではなく、この狂気じみた社会と共倒れはしたくないという理由で、独特のネットワークを使い自身を守っている。

 ジャケットのファスナーを閉じて、覚悟を決めたラヴィッスマン。

 作戦をレベッカ指揮下の元、ブリーフィングを始める。


 作戦の内容はネウロパストゥムの俺達の奪還と、地下シェルターの制圧と占拠である。

 本作戦の建造物侵入にはネウロパストゥムの知識が必要になるので、主要編成を二部隊に分けて配置を決める。

 まずはユノ、ケレス、マリア、マオ、カンダを中心とした部隊が、弟達を救出する部隊に編成された。ベスタ、フランク、アリサ、レベッカの部隊は地下シェルターへの占領を務める。

 子供を監禁する施設、市民を見殺しにする事を選択し、地下シェルターへ逃げた商団は堅気ではないので、内容は殲滅作戦とする。


 しかしそう憤る皆だが、正直に白状すれば子供達の命以外はどうでも良いとは思っているのだ。

 ただ大人の市民の命を一応、天秤の重さに加算して、殺人の口実の振り幅に当てているのみであり、一口に全体に共犯させる。

 皆はそんな精神状態であった。


 そして部隊は速やかに配置され、出陣する。


 車列を組むトラック車両のボディ内で、ユノとマオが話をする。


「あの言葉の意味は何だったんだい。そこまでされる筋合いはないんだけど。」


 マオは病室でのユノが言ったお礼について興味津々だった。

 しかしユノは、そのマオの誠実で優しい立ち振舞から溢れ出る、狂気の本性を見抜いていた。


「いいえ、マオ。私は貴方の嗜好に興味があるの。貴方はこっち側でしょう。」


 マオが装備する武器は全て、火力が高い大口径の銃器だ。するとマオは狂気的な笑顔を見せてユノに質問をした。


「ユノはどんな悲鳴を上げるのか。ハラワタでも見せてくれるのかい。」


 どうやらマオはライトマシンガンで、人を粉砕した時から、内臓が飛び散る瞬間を謁見するのが大好きらしい。

 マオはベッドを共にするパートナーの悲鳴に興奮を覚える嗜好を持つ。だがどんなに頼んでもメスを入れさせてくれるパートナーには出会った事はないと言う。


「ユノもとても残酷そうだね、今日は楽しくなりそうだよ。」


 ユノとマオは気が合うみたいだ。


 ネウロパストゥムの弟達が監禁されてる施設に到着し、建物の裏に駐車する。

 まずは偵察ナノボットで施設内を調べる。施設内の地下までナノボットを移動させると、弟達を発見した。ガラス張りの中で傷だらけの姿、そこには、ありとあらゆる虐待の限りを尽くされる子供達がいた。

 ユノとケレスがモニターで確認するが、あまりにも酷い現場で声を殺しながら泣いてしまう。

 マリアもマオもカンダも泣いていた。誰一人として笑う者はいなかった。


 そして地下から通じてる出口がどこへ通じているのか偵察する。その出口の先は、綺麗に外壁塗装が施され、長い廊下となっていた。更に先進むと、階段があり、登って行くと住宅街へと通じていた。

 ユノやケレスは頭を抱えて怯えていた。マオはすぐさま別動隊に住宅街の座標を送り、地下と正面の二方向から抑える作戦となった。

 マリアはその残酷な現場に心を傷めた。自分は何も知らず、綺麗な身体を保ち続けれた身分であったと。

 マリアはユノとケレスを抱き寄せる。


「私達は同じ血、必ず彼等を殺して償ってもらうわ。ママにも責任を取らせるから。」


 マリアはそう二人に言って、憎しみに満ちた顔で、殺戮の限りを尽くすと決心した。


 別動隊は住宅街から強行突破で地下へと通じるドアを開ける。かなり簡素なドアであったため、キーピッキングで何とか解錠ができた。別動隊は警報機の類が設備されていないか、カウンターを通して調べる。しかし警報機の類すらなかった。

 別動隊は思い切って廊下を突き進む、しかし警備員すらいない。更に角を曲がり進む、カウンターで調べる、しかし警報機はない。おかしな施設だと考察している時間はないため、更に進んだ。

 すると出口と同じ形状のした扉に、ドアノブが付いていた。別動隊は、電波が悪いため、メールをマオに送信し、突撃まで控える。


「なぜドアノブが、出口にドアノブなんか付いてたかい。」


 マオは疑問に思いカンダに質問をする。しかしカンダは付いていないと返す。


「すると出口は外側から開ける事ができるけど、施設側からは開ける事はできないのかな。」


 マオは考察をした。しかし時間は待ってくれない。すぐさま突入する事とした。

 先にユノとケレスを行かせる、面会がしたいと懇願し、地下の出口から制圧すると言う段取りだ。


 ユノとケレスは生体認証で解錠し、受付へと向かう。その中で職員と話をした。


「人生最期に弟達に会いたい、認めてくれないか。」


 ケレスが職員に訴える。職員は少し考えながら特例として認めた。

 命を賭けてナスチャと闘う決意をしたのだと認識をしているからである。

 さっきまで泣き顔だったため、どことなく雰囲気が演出されていた。

 すると職員がユノとケレスの泣き顔に触れて、なぞり、二人の身体をまさぐる。


「成長したお前達をもう一度、痛めつけたいものだ。」


 職員はナスチャを抹殺するまでネウロパストゥムは奴隷だと言わんばかりに尊厳を傷付けた。

 マシナリィとの内戦が始まっているので中には戦闘員は居らず、非戦闘員が空間圧縮レーザー拳銃で武装した、毛が生えた程度の警備であるため、精鋭部隊は出払っていると確信が持てる。


 そして職員は地下の監禁設備の職員に、虐待行為をやめる様に通達する。

 了承を得たユノとケレスは地下へと向かう。


 そして地下へと降りた二人。ガラス越しから見る名もなき弟達を再会し、涙を流しながら笑みを見せる。

 しかし弟達は怯えていた。それに気づいた二人、自分の正体を思えば当たり前だった。数々のベルナール家の血筋を殺戮し、闘いに飢えた獣であった事。

 自分達も弟達の目の前に居てはいけない存在なのだと知る。

 もう限界だと作戦を実行に移す二人。ここで連絡を入れれば足が付く。地下の出口へと向い、開けようとした。しかし開かない。

 不審に思った職員が二人に詰め寄った。職員は出口から引き剥がそうとしたが、職員を押し退ける。二人は出口を泣きながら叩く、すると思いが別動隊に通じたのか出口が開いた。


 すると別動隊の視点からはユノとケレスは消えていた。目の前には職員が見える、別動隊はすぐさまサプレッサー付きピストルのHK45を職員に構え、抹殺していく。

 別動隊の背後にはHK417のアサルトライフルや、スコーピオンEVO3サブマシンガンなど、徹底的に武装された精鋭だった、その数は六十人。隠密性を高めるために全ての銃器にサプレッサーが施されている。

 ラヴィッスマンやネウロパストゥムとも同等な機動力で、瞬時のカバーリングで職員を殲滅していく別動隊。一階へと通じるエレベーターを固める別動隊、そこでようやく警報が鳴り響く。


「ここよ、ここよ。」


 別動隊の背後から声が聞こえて、隊員は瞬時に背後に銃を構え射撃をした。


「やめて、ごめんなさい。私よ。」


 隊員は開けたドアに撃っていた。


「なんだお前達か。」


 開けたドアにユノとケレスは挟まっていた。


「おかしな造りのドアだ。本当に外部からしか開けられないんだな、むしろここが外部か。」


 隊員は考察している。ユノとケレスはドアから出てきて泣き顔を見せている。

 怯えている弟達をどうにか外に出さなければならない。別動隊の隊員は、子供達を解放し、子供達を導くべく、出口へと先導した。

 別動隊は五十人規模で子供達を護衛し、トラックへと向かう。


 ネウロパストゥムの弟達を保護したと通達が入ったとマオは聞く。


「出番はなかったみたいだね。」


 すると同時刻に、レベッカ側の地下シェルターも無事完了したとも通達が入った。

 その事を全体に知らせたマオ。するとカンダはこの戦争を楽しもうとしていく。


「さーて、ガキの使いだ。盛大なオモリをしてやるか。」


 マオは瞬時に全体に連絡をし、一斉に車列を組み、護送車を護衛する様に指示する。


 ユノもケレスも車に乗り、高架線の高速道路で弟達を護衛していた。警察車両もいくつか撃破している最中だった。

 すると戦闘機が旋回している、その戦闘機はトラックめがけてミサイル攻撃を開始した。

 ユノとケレスはミサイルを撃ち落とそうとアサルトライフルを構えたが、瞬間にフレアロケットが視界に入り、ミサイルが撹乱され、目標を見失った。

 次の瞬間には、戦闘機に無数の弾丸が当たっていき、戦闘機は制御を失い、墜落した。

 その戦闘機を撃破したのは高架線下のマリアとマオだった。

 そしてすぐさま部隊は警察車両をロケットランチャーで攻撃し、警察車両は固定砲台の餌食となり全滅した。


 部隊は誰一人として死ぬことはなく、無事地下シェルターへと全てが集結した。

 全てが高級ホテルの質感を放ち、食品も一級品。単純計算で3000人を約50年養っていけるくらいはある。

 まずは疲れ果てた子供達を食卓へと並ばせた。


 ラヴィッスマンとネウロパストゥムの六人が集まる。ネウロパストゥムは涙を流していた。

 ラヴィッスマンはそれに寄り添う。ネウロパストゥムの人生は苛酷だ。それでも弟達には受け入れてもらえないだろうと。

 その中でユノは子供の様に泣いていた。そしてマオはその光景を見ていた。

 ユノの泣き顔と声を謁見しながら、マオはひっそりと疼いている。マオはそんな自分を嫌っている。


 深夜カンダは外に出ていた。カンダは星を眺めながら掌をかざし、そして握る。星など掴めないにも関わらず。

 するとケレスがカンダの背後に立ち、少し喧嘩腰な態度で質問をする。


「そんなに宇宙を見てみたいか。」


 カンダは振り向きこう答える。


「僕には身体があるからね、ここから見上げる事しかできないよ。」


 ケレスはカンダに指を指しながら言う。


「地球を汚せばその身体もいずれ朽ちる。」


 カンダは笑いだした。しかし今回の功績はカンダ側の質量が大きい、この代償をネウロパストゥムは支払わなければならない立場ではある。


「八面六臂の活躍だっただろ、まさかタダって事はないよな。」


 ケレスは顔をしかめながら、要求を聞き入れる事にした。


「何が欲しい。コードか。」


 カンダは否定をする。


「アレは過去の我々の功績さ、今やそんなものは必要ない。

 欲しいのは商団の中に隠されたマザーコンピューターさ。」


 ケレスはある確信に近づく。


「お前はまさか、プリモ・ポストヒューマンなんだな。」


 カンダは笑いながら答える。


「それは個体としての俗称かい、それか集合体としてかい。」


 ケレスは構えた。


「知らん、だがお前は吐き気を催す邪悪なんだ。」


 カンダは少し落ち着いて答える。


「少し学習をさせよう。それはアーキアだよ。人体は多種多様な生物が結合して形成された組織だ。

 そして我々はずっと太古から介在していた。それを邪険にする事は愚かだよ。」


 そしてカンダはこう答えを述べる。


「ヴェクター・アーキアだよ。」


 ケレスは驚愕する。


「ヴェクター・アーキアだと。やはりお前達はマシナリィを。」


 カンダは疲れたので、寝ることにした。


「ケレス、今日は休みなよ。明日は村人を全員集めてパーティーだ、酒はたんまりとある。」


 ヴェクター・アーキアとプリモ・ポストヒューマン。

 一体何を示しているのか。

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