002.アトミック・ツァーリ・ボンバ
文才ないことには気付いてます。
ママからのオーダーを達成したラヴィッスマン。
ここは地下に潜伏するベルナール家の実家。
いわゆるセーフハウスの様な所だ。
「お疲れさん。このハンバーグはよぉ、もうちょい牛肉の割合増やした方がよくないか。ハンバーグステーキってんだから、こう、なんと言うか、俺はもっと牛肉だけで作ってほしいわな。そう思うだろフランクよぉ。」
「ならお前がずっと家庭科やってろ、デビッド。ママはこれをハンバーグステーキとは言っていないし、再現したのは日本食と呼ぶものらしいぞ。アビゲイル、君達の方はいくつ手に入れた。」
「こっちはコードを五つも引っ張ってこれたわ、お前らは本当に運がない事ね。それとも気心がないのかな。シルヴィアはどう点数を付ける。」
「防衛システムのハックにしても雑すぎ。廃液が海に漏れ出したらしいよ、しかもこの卵焼きに殻入ってるの。ジャリってね、砂埃くらい落としてきなさい。ねぇブルース。」
「もう何ママみたいなことを言ってるの、僕は姉妹で喧嘩したくないよ。でもこれじゃあマリアの方のコードの数が少ないね。」
「シルヴィアもそろそろ七人で固まった方がいいって言ってたよ。ママも良からぬことが起こりそうだって。」
「それは元々アリサの提案ね、伝言ゲーム下手すぎないか。」
姉妹達は会話する。
マリア、フランク、アリサ、デビッド、アビゲイル、ブルース、シルヴィア。この子達は全てベルナール家の一族だ。
ベルナール家は代々女系家系、その影響で姉妹達と呼び合うことになっている。
人種は多種多様であり、全ての姉妹達はママに恍惚孝行している、つまりとても親想いなのだ。
マリア=ベルナール。
褐色の肌を持って産まれ、髪色はモカブラウン。ドラヴィタ系の顔立ちをしている女性的な人物。
アウターに、シングルライダース型の、薄茶色のムートンレザージャケットを羽織り。
インナーは、黒色タートルネックニット。
インディゴブルーのデニムホットパンツと、黒色のスエードニーハイブーツを履いている。
シルバー925の、マリアとクロスペンダントネックレス、それを囲う様に喜平チェーンのネックレスを重ね付けしており、プレーンリングのイヤリング、カレッジリング、プレーンのバングルで装飾している。
フランク=ベルナール。
黄色の肌を持って産まれ、髪色はブラック。アジア系の顔立ちをしている男性的な人物。
黒色のヒップホップキャップを被り。
アウターは、デトロイトジャケット型であり、フロント部分は、黒色のツイル生地、バック部分は、白黒ボーダープリズナーでダック生地、アームはレザーで仕上げている。
インナーはトレーナー、白黒ボーダープリズナー生地。
茶色のペインターパンツと、黒色のレザーワークブーツを履いている。
シルバー925の、ガーディアンベルペンダントのネックレス、プレーンのイヤリング、パイレーツスカルのリング、スネークエングレイヴのチェーンブレスレットで装飾している。
アリサ=ベルナール。
褐色の肌を持って産まれ、髪色はシルバー。アフリカ系の顔立ちをしている女性的な人物。
黒色のレザーベレー帽を被り。
アウターは、ダブルライダースジャケット型であり、バックとフロント部分は、インディゴブルーのデニム生地、アーム部分は黒色レザーで仕上げている。
インナーは、白色クルーネックシャツ。
ジャケット同色のデニムミニスカートと、黒色レザーニーハイブーツを履いている。
シルバー925の、クロスペンダントのネックレス、ダイヤカットのイヤリング、アーマーリング、プレーンのバングルで装飾している。
ブルース=ベルナール。
白色の肌を持って産まれ、髪色はコバルトブルー。ヨーロッパ系の顔立ちをしている男性的な人物。
黒色レザーのヒップホップキャップを被り。
アウターは、黒色のレザーダウンベストを羽織り。
インナーはトレーナー、白黒ボーダーのプリズナー生地であり。
黄色のワークパンツと、白色のハイカットスニーカーを履いている。
シルバー925の、ドッグタグのネックレス、スカルのイヤリング、ライオンのリング、ヘヴィーチェーンブレスレットで装飾している。
デビッド=ベルナール。
黄色の肌を持って産まれ、髪色はパープル。アジア系の顔立ちをしている男性的な人物。
アウターは、黒色のアイゼンハワージャケットを羽織り。
インナーは、黒色レザーワークシャツであり。
黒色ワークパンツと、白色ハイカットスニーカーを履いている。
シルバー925の、チェーンネックレス。マリアモチーフのイヤリング、ナックルリング、プレーンのバングルで装飾している。
アビゲイル=ベルナール。
褐色の肌を持って産まれ、髪色はビビッドピンク。アフリカ系の顔立ちをしている女性的な人物。
アウターは、フライトジャケット型であり、フロントとバック部分は黒色レザー、アームは茶色のダック生地で仕上げている。
インナーは、白色クルーネックシャツ。
黒色レザーホットパンツと、黄色のショートブーツを履いている。
シルバー925の、クロスのネックレス、ペンタゴンモチーフのイヤリング、プレイハンドのカレッジリング、アラベスクエングレイヴのバングルで装飾している。
シルヴィア=ベルナール。
白色の肌を持って産まれ、髪色はゴールド。ヨーロッパ系の顔立ちをしている女性的な人物。
アウターは、黒色レザーのダブルライダースジャケットを羽織り。
インナーは、桃色サテン生地の、ポルカドットのワンピース。
黒色と白色を区切った、サドルシューズを履いている。
シルバー925の、スターペンダントのネックレス、スターモチーフのイヤリング、ホースシューのリング、スターエングレイヴのバングルで装飾している。
しかし姉妹達はたまに喧嘩をする、ここ三ヶ月の間のママからのオーダーに二手に分かれてコード収集で競い合っていた。だからよく挑発をする。
そしてラヴィッスマンのママ、ネメシス=ベルナールは子供達をあやす。
「お前達、本当にどうしようもない子ね。あなた達が別々に行動したお陰でコードの断片が集まりやすくなってきたわ。ありがとうね。」
「ママに褒められてとっても嬉しい。愛してるよママ、次のオーダーは何。」
「ママはとても心配があるの、このただならぬ気配に圧倒されているの。だから次からは必ず七人で行ってちょうだい。」
「ママがとっても怖がっている。分かったよママ。」
これから何か悪い事が起きる予感なのか、ママは怯えている。子供達をこれから行かせていいのか分からなくなる程に恐怖をしている。一体何の波動を感じているのだろうか。
今回のオーダーはアウトバーン研究所にあるコンピューターハックであり、つまりコードの奪取と極秘裏に輸送される予定の箱の中身の医薬品の阻止、及び焼却である。
予定通りにアウトバーン研究所に強襲を仕掛けたラヴィッスマン。
ここの研究員はサイフォンの霧で皆殺しにする。霧を吸った研究員は一瞬で全滅した。
だがしかし、ここから先はアラレス商団お手性の少数精鋭部隊アンセル兵が待ち構える。
「アンセル兵か、ママが心配していた事だけど。姉妹七人で寄り添い合えば何一つ怖くはないわ。」
そうマリアは姉妹達を鼓舞する。アンセル兵の肉体はトランスヒューマニズム兵であるが、最新鋭のバイオマッスル技術を施術し完全防水仕様のプロテクトアーマーで武装した対サイフォンに特化した部隊だ。
アンセル兵の銃器は空間圧縮レーザー軽機関銃と、殲滅性を極めていた。
「とっとと血を流してもらって痛いとこふーふーしましょ。」
対サイフォン兵と言えども、人間である以上は血の通った生身。そうシルヴィアは頷く。
サイフォンの力の真髄は体液圧力支配にも長けていることだ。息をする生命体があるならば、霧を吸わせる事で肺を炎症させ、体液を肺に満たし溺死させることもできる。そして外傷させ出血させることができるなら、ある一定の距離から出血箇所を気圧で紐付けをし。その傷口から血を抜き取ってしまえる。
しかしそれが毛細血管なら浸透圧の関係で高圧力であっても、健康体なら血小板の止血まで致死量に至る出血は望めないだろう。しかし画竜点睛を磨けばもう一つ上の段階まで持っていけることもできる。
それはつまり水分子を外傷から侵入させ直接体内を攻撃する所だ。侵入した水分子は血流を巡り全身まで至る。そして圧力操作をすれば、あらゆる臓器に対して致命的な破壊を仕掛けることも可能なのだ。
心臓を掌握したも同然、しかし根幹への攻撃は脳幹が理想である。瞬時に巡る血液の速さ分だけの時間で、脳幹破壊を可能とできる。
アンセル兵でも針を刺しただけで殺せるのだ。
傷口さえ作ってしまえば相手は倒れる。だからサイフォンテクニックの一つ、水圧ショットガンでアーマーの隙間を攻撃してしまえばいい。
火災警報装置に火を付けたライターを投げ入れ、消火のシャワーが吹き出したと共に戦闘開始。
しかしマシナリィとは違い等身大で、物量ではなく戦術的に統率されたアンセル兵のカバー、水圧ショットガンとは言えど百発百中とはいかない。
どんな銃器であれ、瞬時に演算をし、凌ぐラヴィッスマン。
「マシナリィなんざ息吸ってくれるだけで倒れるのに、もう筋肉落ちて体力勝負は堪えるなぁ。」
デビッドと姉妹達に疲労の顔が露わになる。楽な相手に慣れると命の殺り取りに曇りが出る。
しかし激戦でも何とかコンピューター制御ルームを占拠する。アンセル兵の銃撃を掻い潜り、攻防を仕掛ける。コンピューター制御ルーム内では、シルヴィアとデビッドがコンピューターにハックし、サーバーからコードを抜き取った。
そして医薬品のロッカールームの場所を特定。アンセル兵はなぜか退却の選択をした。
「アンセル兵の連中、こんな簡単に引き下がってくれるなんてな。後一踏ん張りなのに、命の重さに気付いたのか。」
ラヴィッスマンに少しばかり疑問が浮かぶ。
ロッカールームに移動する薄暗闇の中、念のために霧を廊下内に発生させる。しかし誰一人として敵はいない。
するとロッカールームの目の前の廊下に一人の少女が座っていた。
「濃い霧ね。ちょうど喉が乾いていたところだったわ。」
少女は呟く。
「誰だ。ん、君もラヴィッスマンなのかい。」
少女の気の利いた挨拶に、疑問で返すブルース。
「私はプルト。メルトの女神。あなたを融かして切り離す分解者。ネウロパストゥム計画の生き残り。」
少女は答えた。
「ネウロパストゥム計画だと。ベルナールと名乗らないならラヴィッスマンではないな。」
少女の正体とは。
プルト。
白色の肌を持っており、髪色はブラック。ヨーロッパ系の顔立ちをしている女性的な人物。
アウターは、アイゼンハワー型の黒色レザージャケットを羽織り。
インナーは、濃色のチューブトップ。
黒色ホットパンツと、黒色レザーニーハイブーツを履いている。
シルバー925の、マリアのネックレスと、クロスのイヤリング、プレイハンドのリング、アラベスクエングレイヴのバングルで装飾している。
「あなたには親近感を感じるけど、すごく近付き難い雰囲気があるわね。」
マリアは呑気に答える。
「あなたがマリアね。はじめまして。しかし七人で乗り込むなんて大したものね。」
プルトは微笑みながらマリアを見る。
「そこをどいてくれないか、じゃなきゃ君を殺すことになる。」
プルトの余裕な対応に余裕のないフランク、オーダー優先の態度に、プルトは何か思う所を隠さない。
「せっかく話をしているのに不躾な問で少し頭にくるわね。臨界点は見極めた方がいいわよ、寿命を決められたくなかったらね。」
「すまない時間がない、ここで息の根を止めてもらう。死ね。」
プルトに水圧ピストルを弾き、傷を付けるフランク。これで脳幹を圧搾されるはずだが、プルトは微動だにしない。
「どうしてだ、なぜ死なない。サイフォンの力を打ち消された感覚がする。お前まさか。」
「サイフォンかぁ、まだここまでの力だったのね。そうね私も使えるのよサイフォンが。そして私はお前達より強い。」
プルトは血を流しながらでも、眉一つ動かす事なく笑う。
そしてプルトはこうも続ける。
「とは言ってもサイフォンに属性が付いた程度だけどね。言ってみたら、えっと、サイフォンエンハンサーで分かってもらえたらいいな。」
なんとプルトもサイフォン使いであったのだ。サイフォンエンハンサーは明らかに今、思いついた様な発想だが。
ラヴィッスマンのサイフォンの体液圧力支配を相殺している。ラヴィッスマン最大の危機である、殴りかかる以外ないのである。
そして、立ち上がるプルト、立ち塞がるプルト、そして、包容するかの様に立ち向かってくるプルト。
後光に紫色の光を放ちながら。
「駄目だ、光で目が見えない、近付きたくない。彼女の属性はまさかニュークか。」
フランクは驚愕した。
「御名答、ラヴィッスマン諸君。言ったでしょ私はプルトって。
私の扱い方一つであなた達の細分が決まる。私達は常に誰かさんの害でしかないが、私達の振る舞い方一つで全ての命の行く末を決める。
私達はずっと長く留まるだろうし、気付いてもらえないほど形を変える。私達は必要であれば全てを弾き滅することもできる、しかしそれは人の悪意に寄って引き起こされる、人災そのものだ。」
うろたえ退くラヴィッスマン。バチバチ点滅する放射線の反応が死のサイン、近付くことを本能が拒絶する程の絶望を味わう。
それがプルトの偉大な力なのだ。
「たかが原子三つ高速でぶつけたくらいでいいザマじゃないか。私はあのドアの前で座っていただけだと思うのだが、そのまま通れば良かったのに。
ほら、私はこの通り何もしてないぞ。これはつまり意思を持たない災害そのものなのよ。」
捲し立てるプルト。
「言ったでしょ、七人で来るとは大したものだと。よく七人で来れたな、つまらない。サイフォンも私の力もそうは変わらんとは思うのだが。
なるほどこの差は芸の差か、武芸がないのかつまらない。そうだまだまだ霧が濃いじゃないか。
面白いものをみせてやろうか、この水分を使って、水素と酸素の混合ガスに分解して、私のプラズマ着火でお前達を爆発炎上させてみよう。面白い。」
まだまだ来るプルト
「いやもうどうでもいいわ。貴方達とお友達になりましょう。君達のお母様にぜひぜひ会いたいなぁ。」
そうこうしてる内に増援のアンセル兵が参上し、医薬品の物資を持って行った。ママからのオーダーの一つが果たせないと知る、すると恍惚孝行ができない。目の前の敵には敵わないだろうからフランクはある提案をする。
「みんな。輸送トラックを追ってくれ、外にバイクが何台かある。僕はプルトを足止めする。」
フランクは自分を置いていけと言う。
「死ぬ気かフランク。お前を喪うなんてできない。」
「いやママのオーダーには敵わない。フランク絶対に生き残ってくれよ。」
しかし、マリアは残る事を選んだ。
「でも私はフランクが心配。共に残るわ。」
「ああマリア、側にいてくれ。」
五人は飛び出して輸送トラックを襲撃しに行った。
マリアとフランクはプルトと対峙する。決死の覚悟で。
「舐められたものだねぇ。まぁお前達にはサイフォンの力は通用しないだろうから。私達は近付いてキメるしかないよ。闘いの基本は格闘だってね。ほら来なよ。」
マリアとフランクは決死の覚悟を決めた。二人で囲めば勝てると踏んで。一歩踏み出そうとする勇気を持って。素手となると二人で殴るにはかなり卑怯に見えると思うが仕方ない。やるしかない。
そう覚悟した瞬間に破裂音が轟いた。
「ぐぁぁぁあ。ぬぁぁぁああ。」
血を流し叫ぶプルト。背後には一人の少年が空間圧縮レーザー拳銃を構えていた。そう、この少年がプルトを撃ったのだ、背後から。
「てめぇら、双子で不意打ちとか卑怯だろうが。痛ってぇ血ィ吐いた気持ち悪。顔覚えたかんなぁ、次見たらぜってぇ殺す。」
逃げ出すプルト。しかしこの謎の少年は笑って見送る。すると空間圧縮レーザー拳銃を捨てマリアとフランクの二人に詰め寄る。謎の少年は言葉をかけた。
「何本か残しておいてくれてありがとう。今日、打たなかったら、俺は風邪引くところだったよ。」
謎の少年は今日オーダーの、医薬品の使用済みアンプルを二人の足元に投げ転がした。注射だったのだ。
二人は謎の少年の顔を見て驚いた。
「あぁそれと今後一切合切そのアンプルの破壊活動はやめてくれるかな。コードの奪取はご自由にやってくれても構わないけど。そこだけは別に関係ないから。」
「えっ。」
「何っ。」
「フランクが。」
「僕が。」
「二人いる。」