表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

想いは雪の下へ

 シンシンと。空から静かに優しく、そして冷たく雪が舞い降りる。


 もう、指一本動かすことも出来ない私には、自身の体に積もっていく雪を払う事が出来ない。

 雪は私の体から咲き誇るかのように、赤い花が広がるのが止まらないが、雪はそれを覆い隠すかのように静かに静かに降り続いていく。


「ははっ……。私らしい最後と言えるのだがな」


 国の為に戦い、王を王子を、姫を守って戦って来た。

 あの、優しい王家の方々を守って散って行けるのならば、それこそ騎士の誉れというもの。後悔などすることも無い。


「……、いや、そうでも無いか」


 戦いに行く時に、姫に泣きつかれた。

 行かないで欲しいと。私の傍にいて欲しいと。


 誰よりも優しく、そして美しかった姫。お傍で長く仕える事が出来、家族のいなかった私には、どれだけ救われた事だろうか。

 出来るならば、ずっとお傍にいたかった。貴女がやがて婚約者の国に嫁がれる時が来ても。お傍でお守りしていたかった。


『 ──、これからも傍にいてね。約束よ』


 あぁ、約束を守れなくなってしまった。騎士として失格だ。お許しください。


 ……本当は、私は本当は……姫様と……。


 ……、いや、私のこの胸の内にある愚かな感情には、蓋をしてしまおう。そして、このまま誰にもこの気持ちを知られること無く、冷たくなる体と共に無くなればいいのだ。


「姫様……どうぞ貴方様に、これから先幸多からん事を」




 呟きは声にならず、血を吐くだけとなり、やがてその血すらも私ごと全て、全てが雪の下に埋もれ、そして消えていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ