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お姫様を愛し隊


「………うん?この俺と姫がいなかった間に何があった?」


そう呟くレオの前には、焼け焦げたテーブルに割れたティーカップ。所々に怪我をしながらも強く手を握り合うルイとウィラ。大乱闘でもあったかの様に執務室が乱れているというのに、アルテミスは何も気にしていないようだ。


まず、なぜこんなことになってしまったのか。それは一時間ほど前にまで遡る。


四人の初対面から早数時間、そろそろ昼食の時間と言うことでレオは昼ごはんを作りに王城の食堂………ではなく、普段アレンとルイが暮らしているという、先代精霊王の離宮の厨房に行っていた。

そう、これだけなら何も問題はなかった。いや、問題など起こるはずがなかったのだ。


アレンが、レオについて行くなどと言わなければ。


アレンがそう告げた時のルイの顔ときたら、なんとも表現出来ないような、恐ろしい顔だった。顔は笑っているのに、目は笑っていない。声は楽しそうに、「へえ〜、行ってらっしゃい」と言っているだけだというのに、副声音で「お前、コロス」とでも言われていそうな雰囲気である。


そして、レオとアレンは執務室を出ていった。もちろん、アレンは顔がバレないように顔を隠すフードを被ってである。


(えっ?てか、私死んだくない?姫様と兄上なしで弟様と?母上から教わったメイド憲法役に立ちそうにないんだけど!?)


「ねえ」


(ああああああ!!マジでどうしよ女の子が好きそうな話題は結構仕入れてきてるけど男の子が好きそうな話題ってなに!?)


「……ねえ」


(てかそういう仕事は兄貴の仕事でしょなんで兄貴が姫様連れてってんのさどうせなら私が行きたかったんだけどでも私料理出来ないし!!)


などなど、ウィラの脳内を言葉にするなら息継ぎさえもしていないほど混乱している。が、ウィラでなくレオが昼食を作りにいったのにはちゃんとした理由がある。


ウィラは、壊滅的に、料理が下手だったのだ。


野菜を切ろうとすればまな板を両断し、卵を割ろうとすれば殻を粉砕し、肉を焼こうとすれば家事を起こした。正真正銘、純粋培養の料理下手である。

その下手さを表すのなら、強制的に味見をさせられたレオが口にするだけで気絶し、三日ほど意識を取り戻さなかったほどである。

ちなみに、ウィラはこんな料理を王族に食べさせる気かと当初アウラに半殺しにされたらしい。

しかし、半年間必死に料理の練習をしてもウィラの料理の腕は改善されなかった。むしろ、日を重ねるうちに酷くなっていったほどである。

これはもう改善不可能だ。そう感じたアウラはレイズから稽古を受けていたレオをひったくり、半ば強制的に料理のやり方を叩き込んだのだ。


そんなふうに、これまでの半年を思い出していたウィラだが、彼女は気付いていなかった。目の前にいるルイが、不機嫌そうに眉をひそめ、こちらを向いていることを。


「………さっきから俺のこと無視するなんて、いいご身分だね?いい加減に返事しないと殴り飛ばすよ?」


これが最後通牒だと言うようにルイは告げるが、これでもまだウィラは気づかない。いい加減痺れを切らしたルイは拳を握り、ウィラに目掛けて振り下ろした。


「危なッ!?!」


が、ウィラも一応はレイズの子供である。持ち前の反射神経をフル発揮し、間一髪で避けた。


「……チッ避けたか」


面倒くさそうに舌打ちをする。もはやそこにはアレンに向けていたような笑顔など一欠片も残っていない。


「え!?なんかあったんですか!?蚊にでも刺されました!?」

「いや、違うけど。何的外れなこといってんの?馬鹿なの?それとも阿呆?違うなら何なのか教えてくれない?」

「あ、多分変人なんだと思います!」

「答えんのかよッ!!」


ルイとしては、絶対に口答えが出来ないように罵ったのだが、ウィラには通じなかったらしい。

少しイラついたルイは、手の平に魔法陣を展開し攻撃態勢をとった。ウィラもそれに受けて立とうとナイフを構える。


「……これから先の側仕えがこんなに馬鹿で阿呆で変人だなんて、アレンちゃんが可哀想すぎる。今ならやっぱ辞めますで済むから辞退しない?」


ルイがそう告げた瞬間にウィラに目掛けて火の玉が降りかかる。殴り殺す宣言した精霊の攻撃にしては随分と優しいが、恐らくこれでは終わらないだろう。

そう思ったウィラは、テーブルを蹴り上げて火を防ぐ。当然だが、その上に乗っていたティーカップは勢いよく落ちていき、そのまま割れてしまった。


「多分そんなことしたら母上にブッコロリーされるんで、遠慮しときます!!」


そう叫びながら、刃を潰したナイフを投げつける。当然ながら、威嚇行為である。さすがに、顔合わせの当日に主人を怪我させるわけにはいかない。


「それより!!!弟様が私に側仕えやめろって言ってる理由、姫様に有象無象を近づけたくないからでしょ!?」

「分かってるなら自主的に辞退してくれない?」

「嫌ですよ!!姫様を独り占めしようとするなんて弟様ずるいっです!!」

「アレンちゃんとイチャイチャできるのは弟の特権なんだよバーカ!!」

「ああっ!!馬鹿って言いましたね!?馬鹿って言う方が馬鹿なんですよ!」


そう、それからはずっと殴る蹴るとくだらない言い合いの繰り返し。いくらウィラが怪我をさせない様に気をつけても、何度も何度も相手を攻撃すれば必然的に怪我はする。


二人の言い合いは三十分ほど続き、最後には__


「もうね、姫様の銀色の髪とか、少し眠たそうな伏し目とか、めっちゃ可愛いと思うんですよ!!」

「ああ、それめっちゃわかる。まず、容姿からして国宝なんだよね。性格も最高に可愛いし」

「会ってからまだ数時間しか経ってないですけど全世界、いや全宇宙で一番尊いですよね姫様」

「うん、命大事にってみんなよく言うけどさ、多分俺はアレンちゃんのためなら死ねる。てか、多分じゃなくて確実に死ねる」


如何にアレンが尊いかと、議論が始まっていた。


「てか、姫様のファンクラブとかないんですか?あったら絶対に一桁ナンバーまで上り詰めます」

「ある訳ないじゃん。まだ世間に出てないんだから。馬鹿なの?あるのは非公認の俺専用アレンちゃんを愛し隊だけだし」

「なにそれいいな!!めっちゃ入りたいです」

「別に、入れて上げてもいいけど」


ルイがそういった瞬間、ウィラはルイの手を握った。いや、鷲掴みのしたといった方がいいかもしれない。


「マジですか!!めっちゃ嬉しいです!!よろしく隊長!!」


そして、その握った手をぶんぶんと振り回した。


これが、冒頭の惨状の全てである。




昨日の敵は今日の味方と言いますが、二人の場合は、昨日(十分前)の敵は今日(十分後)の同士ですね。

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