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呼び出し

初投稿です。よろしくお願いします


(王から直々の呼び出しとは、俺何かしたか?)


何の予告もない王からの呼び出しに、レオは困惑していた。

レオの両親は長い間王に仕えているらしいが、レオはまだ九歳である。王とは一度父の仕事を見学した際に挨拶をした程度の間柄で、普段は特に接点はなかったはずだ。


「あっははっ!!遂に陛下直々のお呼び出しとはねー!心当たりしかないんだけど、どうすればいいと思う?」


王から呼び出されたというのに、呑気に笑っている妹を見ていると少し腹が立つが、元々の性格の問題である。

妹、ウィラは双子の兄妹であるにも関わらず、レオと全くもって似ていないとよく言われる。そんなことはないと思うのだが、客観的に見ると違って見えるのだろうか。


まあ、今はそんなことはどうでもいいのだ。問題は王からの呼び出しである。

前述した通り、レオには王に呼び出される程の接点も問題もない。何か問題があるとしたらウィラが起こしたことの連帯責任しかない。


「お前のせいだったら明日から勉学の時間を二倍にするからな」

「ええ!?それはないと思うぞ兄よ!!この可愛い可愛い妹に、必要以上の知識を植え付けようとするのかい!?」

「お前のせいなら、の話だ。まずは王から話を聞かなければ何も始まらない。」


(いや、それってもう確定事項………)


そう思い、ウィラが口を開こうとした時だった。

不意に扉が開き、今日二人が王城に来た目的の人物が中に入ってくる。その人物は二人が知る中で最も尊き血を引き、現在のこの世界を統治する御方とその妃。


「やあ、二人とも。元気にしていたかい?」


精霊界の王、アルテミスと王妃のクローディアである。

部屋に入って来た二人を見るや、レオとウィラはその場に跪き頭を下げ、胸に手を置く。これが精霊界での自分より目上の方に対する挨拶の仕方である。一般的には忠義の礼と言われるものだが、他にも色々と呼び方はあるらしい。この世界では上下関係が明確に位置づけられているのだ。いくら問題児のウィラても、これだけはキチンと守っている。


「うん、さすがレイズとアウラの子供だね。身分的にも申し分ない第一階級生まれ。やっぱり君たちが適任かな」

「そうね。ウィラは少し素行が問題だけれども、そこはもうこの際気にしないわ」


アルテミスとクローディアが何やら二人で話しているが、頭を下げているレオとウィラでは聞き取れない。アルテミスかクローディアに許しをもらうまで、二人はこの姿勢の戻すことが出来ないのだ。


「ああ、済まないね二人とも。もう戻っていいよ、座りなさい」


それに気づいたアルテミスはようやく二人に許しを出す。そして、二人を椅子に座らせると、今日の本題に入り始めた。


アルテミスはなんてこと無いように話しているが、内容は驚きの一言である。

一つ、アルテミスとクローディアの間には双子の御子がいて、レオ達より二つ年下であること。そして、それを知っているのは国の重鎮である限られた人数だけである。

二つ、実はクローディア様は人間で、その双子の弟が人間の血を強く引いているということ。ちなみに、レオ達の母親であるアウラも人間で、元はクローディア専属のメイドだったということ。

三つ、双子達ももうすぐ七歳。だが、世間に出たことが全くないので、一般常識とある程度の戦闘能力がある同じ年頃の専属側仕えを探していた。


後に、クローディアは語った。このことを伝えられたときのレオとウィラの反応は、精霊王であるアルテミスと婚姻の契を結ぶと伝えたときのアウラの反応と同じくらい面白かった、と。


「それで、第三階級以上に生まれた君たちと同じ年頃の精霊と一人ずつ面会をしたんだけど、どの子も微妙でね」

「なので、元は王妃様のメイドだった母と陛下の護衛を務めている父の子供である私達に候補が回ってきたと?」

「そうね。アウラの子ならば間違った育て方はしていないでしょうし。まずは体験という形で、レイズ達と一緒に王城で働いて見ないかしら?」


(これは、断ってはいけない案件だ)


レオの本能がそう告げている。別に、王族から頼まれたことは断ってはいけないという決まりなどはないが、これは絶対に断ってはいけないだろう。クローディアの目がこう物語っている。


せっかく見つけた側仕え候補を逃してたまるか、と。


ウィラもレオと同じことを思ったらしい。まずは体験ということで二人が七歳の誕生日を迎える一週間前の、半年後から父と共に王城へ行く事になったのだった。



そして、二人が屋敷に帰り、即座に始めたこと。それは勉強である。二人の両親は昼間は屋敷にいない。父であるレイズはアルテミスの護衛、母であるアウラは恐らく第一階級や第二階級の夫人達とお茶会でもしているのだろう。

そこまで考えたとき、レオはふと思い出したのだ。


『まずは体験という形で、レイズ達と一緒に王城で働いて見ないかしら?』


あの時、クローディアはレイズ達と言った。レオとウィラの間では、王城で働いているのは父だけであり、母は昼間のお茶会で家の見聞を広めていると思っていたのだが、それは間違いかもしれない。

クローディアはよくアルテミスとは別で外に出かけると聞いたことがある。その時の護衛はどうしているのかと、ウィラが興味本位で聞くと、父はクローディアに昔から仕えている凄く強い使用人が護衛をしていると言っていた。


(俺の仮定が正しくて、王妃様のいうことが本当ならば、母上は……)


そこまでを想定して、レオは考えるの辞めた。母が人間だろうがメイドだろうが、父が母を愛しているのには変わりない。恐らくウィラも最初は動揺こそしても、気にしてはいないだろう。

今重要なのはレオとウィラが側仕えとしての責務を果たすための勉強である。詳しいことは夕食のときに聞けばいいのだ。


そして、今回そんなに問題を起こしていないのに図らずも勉学の量が今までの四倍になってしまったウィラは不貞腐れ、勉学にそれ程励まなかった。

夕食のときにそれを聞いたアウラが、ウィラの根性を叩き直すために五ヶ月と半月の間、夜にだけ山に篭もりメイド憲法(命名、クローディア)を叩き込んだことは、また別の話である。



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