平安時代に来ました。
「うぅ...行きたくない...」
私は憂鬱な気持ちで桜並木を通った。
今日から私は憧れだった高校生となる。だが、新しい人生を送るというのは少しばかり勇気を必要とする事だ。緊張で今にも倒れてしまいそう...。
ふと、何かの気配に気づき私は立ち止まった。けれど、左右には誰もいない...ちなみに、今いるこの桜並木は約千年も前から存在すると言われている。
私はその中でも一際目立つ大きな桜の木私はその桜の木に手をかざした。
「千年前か…学校ってやっぱり無いよな。緊張しなくて楽そう」
などと独り言を言っていると後ろから笑い声が聞こえた気がして木から手を離した。
千年前の平安時代。魑魅魍魎、妖達がいた時代だと言われている。
一度でもいいから行ってみたい、それにあの妖にもう一度会いたい。
そう思っている時だった、一瞬何かが私の後ろを通り過ぎた気がした。見てはいけないもの…。
たまに見えてはいけない物が見えることがある。けれど、今見たものはその中でもハッキリとしていた。
私はその影が入って行った路地裏へ迷うこと無く足を踏み入れた。その瞬間突然ドロドロとした液体が私を覆った。だんだんと気持ち悪くなってくる…
気がつくと体が宙に浮いているのを感じた。いわゆる遊園地でありそうな、登ったり降りたりするあのアトラクションみたいな感じ…これはきっと夢の中で稀に感じる落ちる感覚だろう。
と思っていたのも束の間、長い、長すぎる!
「まさか、本当に落ちてるなんて事は…」
恐る恐る目を開け下を見ると提灯が光る綺麗な街並みが見えた。中央らへんには見たことのある五階建ての塔があったり…
「綺麗...じゃなくて、これ本当にやばいんじゃないの?!」
私はただ何も出来ず空中で騒いでいた。こうやって落ちてるのに息ができたことに気が付かない程混乱していたのだ。
私は一度安静になり死ぬ覚悟決めたその時。突然何かに抱き抱えられた感覚があった。それほど衝撃は無かったが硬い何かに抱えられている...。
「娘、大丈夫か?」
目を開けると龍のような生物に乗っていた。それも信じ難いのだが、もっと信じ難いのが2人ほど…私を抱き抱えてくれた男の人、前に乗っているもう一人の男の人。よく見ると額からは角が生えている…
私は何の躊躇いもなく私を受け止めてくれた人の角を触った。
「…硬い……鬼?!本物?!」
「おい、そんなに暴れると落ちるぞ」
「は、はい!」
突然の出来事に戸惑いを隠せず私の声はひっくり返った。
すると、龍は急降下し地面に着陸した。意外と乗り心地よかったな。龍って言うともっとゴツゴツしたような…硬そうなイメージがあった。
「…お前、人間だよな?」
「は、はい」
前の方に乗っていた男の人が話しかけてきた。黒く所々白のメッシュが入った短髪の髪が特徴の人…いや、鬼。
「やっぱりそうだよな…俺は酒呑童子だ」
「…俺は茨木童子」
「わ、私は瑞希 杏です」
私はその名に驚きはしたがとりあえず自己紹介をした。
この二人は、平安時代人々を襲い三大悪妖怪として名を馳せていた酒呑童子、そしてその子分のような存在の茨木童子なのだ。
その二人が私を助けてくれた。にわかに信じ難い…
「杏か、可愛らしい名前だな」
茨様は私にやさしく微笑んだ。
こ、こいつ…一人はヤってる。女収集機と言うやつだ。