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第一章①
森が焼けている。
町が燃えている。
異形の何かが飛んでいる。
父が焼け死んだ。母が僕を庇って殺された。
瓦礫の山を抜け、もう長く持たないであろう正気を保とうとする。
……走るのを止めれば死ぬ。そう自己暗示をかけた。
気が付けば、町から少し離れた森の中を走っていた。
そして何かに追われていた。
もう無理だ、足が重い。
とうとう転んでしまった。
そして化け物は金棒のような物をで大きく振りかぶり……
「ドゴォンッッ」……周囲の土が勢いよく飛ぶ。
終わった……次で死ぬ……死ぬならせめて一緒に死にたかったな……
ふと己の生を諦めた刹那、どこからか現れた無数の漆黒の柱が化け物を捕縛し……そのまま闇の中に沈んだ。
偶然にも僕は死ななかった……いや死ねなかった。
呆然としている僕の前にその人は現れた。
その人は、薄暗い森の奥に居ては場違い感を覚える程に……
-美しかった。
その人は僕に手を差し伸べ、僕はその手を取った。
-ここで僕の運命の歯車が狂ってしまった。