第三話 聞こえた
スキルがあった。
なんだこの「超絶」ってスキル? 名前からして痛々しい感じがするが、どんな効果があるんだ?
そう考えているとスキル表示が変わった。
「超絶」
・全てを圧倒的に凌駕する最強の力。
どうやら考えるだけで所有しているスキルの詳細が分かるみたいだ……………ってオイ、説明これだけか!?
もっと使い方とか効果とか色々記しておくべきじゃないか!? 神様の恩恵、仕事が雑過ぎやしないか!?
「はぁ~い、では今日のお勉強はここまでにしますねぇ~」
なんかイラついているとシスターが授業の終わりを告げて部屋からさっさと出ていってしまった。
えっ?もう終わり? 授業短すぎないか? ってかシスター帰るのはやっ!
授業が終わってオレは教会の中庭にいた。
教会の敷地は日本の学校と同じくらい広く、表の広場はそれこそグラウンド並みに広いから教会にいる子どもは大抵みんなが広場に出て遊んでいる。
中庭は教会の本堂と宿舎の間にあり、木々や茂みが多くあまり人は来ない、たまにインドア派な奴が気分転換に静かなここで読書しに来るくらいだ。
まぁ、オレもどちらかと言うとインドア派なんだが、高校生になって外で遊ぶ奴なんて、そんなにいないだろう。
とりあえず辺りを見回してして誰か居ないか確認、よし誰も居ないし、ここは周りに茂みや木々があるから遠くから見られる心配もない。
なんでこそこそ隠れるようにしているかというと、さっき確認したスキル「超絶」、この痛々しい感じの名前のスキルがどんな効果なのか試してみたかったからだ。
シスターはオレ達ぐらいの歳の子供にはスキルはまだ無いだろうと言っていた。
つまりオレがスキルを所有しているのはおかしいということ。
もしオレがスキルを使用しているところを誰かに見られでもしたら面倒なことになりそうだ。
正直ロクなことにならない気がする。
さて試してみるか、最強の力とやらを…!
オレは何か「波」のようなものでも打つかのように右手を前方に翳した!
……………………。
………………………………。
……………………………………………………。
何も起きない、何で?
あ…そういえばスキルってどうやって使うんだ?
その辺りシスターは教えてはくれなかったな…教える必要がないと思ったんだろうが。
いきなり躓いた…どうすればいい?
シスターに聞いてみるか?でも勘繰られると厄介だ、うちのシスター達、妙に鋭いところがあるからな。
この間もばれないであろう悪戯がばれて叱られてる子供がいたし。
いっそ神様にでも頼んでみるか?…ってそんなことしてどうにかなる訳――
《教えてあげますよ》
…………………………。
何か聞こえた、穏和な感じの若い男性の声が。
辺りを見回してみるが誰も居ない、今の声何だ?ってか誰だ?
《神です》
…………………………………寝よ。
《あぁぁああ!待って下さい!話を聞いて下さい!!》
これは幻聴これは幻聴これは幻聴これは幻聴これは幻聴これは幻聴。
《暗示かけるみたいに現実逃避しないで、ね!聞くだけでいいから!》
……………幻聴じゃない、ハッキリと声が聞こえる。
というかオレは喋ってないのに向こうは声が聞こえてるみたいだ。
《神ですから、心の声ぐらい聞こえます!》
なんか自慢げに言ってるぞこの自称神。
《自称って………ゴホンッ!えースキルとは使おうと思って使うものではありません、自身に身に付いた技能や能力、それがスキルです》
勝手に説明始まった、まぁ聞いとくか。
《例えば剣術スキルは剣を扱うスキル、このスキルの保有者は剣を使えば自然とそのスキルの効果が発揮されます》
自然と?
《はい、スキルはその身に染み付いたような力で、特別な力という訳じゃないですから。まぁ中には特別な力と言ったスキルもありますがね》
なるほど。
《しかし、スキルにはちゃんとルールがあります》
ルール?
《えぇ、例えば剣術スキルは剣がなければその効果はありません。魔法スキルも同様で魔法を使う上で必要な魔力がなければ意味がありません。まぁ、もっとも魔力が無い人に魔法スキルは宿りませんがね》
当たり前と言った感じのルールだな、じゃあオレのスキルはどうすればいい?
《あなたのスキル「超絶」は特別なスキルではありますが、使い方は一般的なスキルと同じです》
同じ?
《はい、そのスキルは簡単に言うと全てのスキルの集大成、万能にして全てを超える最強の能力!!っと言ったものです》
えっと………どう言うこと?
《つまり!あなたが拳を振るえば最強の格闘家となり!剣をその手に振るえば最強の剣士になるってことです!》
なにそれこわい。
《まぁ万能と言っても出来ないことはありますけどね》
ん?例えば?
《さっきも言ったスキルのルールです、あなたの場合、あなたは魔力を持って居ないのでいくら「超絶」でも魔法は使えません》
あぁー……やっぱり魔法は使えないのか、残念。
《では、スキルに付いて私から教えることは以上です。また何か聞きたいことがあればいつでも私を頼って下さいね。それでは―――》
えっ?あっ!ちょっと!?