第76話 どうやら、旅立てないようである
優しく見守っていただけると幸いです。
「第1回、コーリンベルト殿とユウエツ殿の裁判を執り行う。被告人をユウエツ殿とする」
サドンの街を離れ次の街であるフォスンの街に向かおうとしていると急に呼び止められた。
この街の裁判官であるという男から、罪状土地・建物の乗っ取り・コーリンベルト殿の部下への暴行と告げられた。
どうやら、コーリンベルトとやらが俺を訴えたようだ。
なぜ、日本で言う警察の役割をしているこの街の騎士に報告をして、直接俺を拘束して犯罪者に落とさないのか聞いてみたところ、現場を直接見たわけでないのと、土地と建物の権利書をコーリンベルト殿が持っていないと言うことから、証拠が不十分であるため、裁判で決着してから敗訴の場合は犯罪者として騎士につき出す形になりますとのことであった。
そして、このサドンの街の裁判所に来ているわけである。
困ったことに、裁判は今すぐ行うと言われた。
俺に弁護士を雇わせない・弁護人を用意させない気なのであろう。
異世界だから、準備期間という概念が無いのかもしれない。ひどすぎる。
コーリンベルトの隣には男が2人いる。弁護士と証言人であろうと推測できる。
「罪状は、土地と、建物の不正取得・コーリンベルト殿の部下への暴行の2点である。両者、氏名・年齢・職業を述べよ。」
3人いる裁判官の中から、真ん中に座っている裁判所の長官が話す。
人違いについて予め対処するために氏名などをわざわざ言わせるのであろう。
「はいっ。ユウエツと申します。年齢は、23歳、職業、商人です」
俺は先に自己紹介をした。
次はコーリンベルトだ。
「コーリンベルトと申します、42歳、職業Sランク商人です。コーリンベルト商会の代表をしております」
コーリンベルトは、Sランクと商会の代表という言葉を強く言い放った。
私のほうが言っていることが正しいと言いたいのであろう。
コーリンベルトは俺の方を見下すように見てくる。
まぁ、俺もSランク商人なんだけだね。
「ユウエツ殿、罪状について認めるか?」
裁判所の長官が問いかけてくる。
「いえ、認めません。何1つとして、正しくありません。私は不動産屋で建物と土地を買いました。そして、コーリンベルトさんの部下への暴行については、私の営む店の営業スペースでない場所への侵入をされたために恐怖を感じ、対処した次第であります。侵入に気づいた子は女の子で、その女の子の言う話では、そちらの部下の方が、急に武器をとって脅して来たと聞いております。襲われる恐れがあり攻撃したのであれば、正当防衛が適用されるかと思います。侵入者に対して、攻撃はしましたが、命までは取っていません。骨が折れていたため、過剰防衛と言われればそれで、終わりですが、その侵入した建物には、ほとんど、女性しかいませんでした。攻撃力だけでは男たちに勝てるかは分かりません。武器を使い過剰に攻撃してしまっても仕方ないと思います。その女の子は、恐怖で力加減を誤ってしまったと言っていました。そして、そちらの商人の部下の方は3人で、気づいた女の子はその時1人でした」
トーラリーさんはコテンパンにしていたと笑顔で言っていたので、恐怖など感じていないだろうが、そういうことにしておいた。
コーリンベルトとやらが嘘をついているのだから、こちらの嘘も多めに見てほしい。
「ふむふむ、こう言われているが、コーリンベルト殿、反論はあるか?」
裁判所長官がコーリンベルトに尋ねる。
「はい、その者が言っていることは全部嘘でございます」
「なるほど。ユウエツ殿、あなたが正しいと言うに当たる証拠は出せるか?」
裁判所長官は俺に話をふる。
「はい。土地と建物の権利書を私が持っています。不動産屋の担当者のサインと私のサインが書かれています。」
俺は、裁判所長官に、2種の権利書を見せに近づく。
「うーん。確かに、権利書のサインは書かれているな。これが本物かは不明だが」
裁判所長官がそんなことを言う。
地球じゃないから、この裁判において、勝ちに行くのは難しそうだ。
筆跡鑑定を要求したいな。
そして、今後コーリンベルトがどんな嘘をついてくるかわからない。
「その権利書自体が、不正取得なのでございます。何故なら、その土地と建物を不動産屋に売った者が、不動産屋の者に脅されたと言っているからです」
裁判所長官は、コーリンベルトの話を聞き、証拠はあるのか?と聞いた。
コーリンベルトの後ろから男が現れ、私は不動産屋の者に脅されて仕方なく書いたと言い出した。
その担当した者は、不動産屋のフワリンヌさんらしい。
フワリンヌさんが脅すだろうか?
まさか、酔っ払ったら怒りやすかったりして。まさかね。大丈夫だよね??
フワリンヌさーーーーーん。
脅されて書いたものは無効だ。
コーリンベルト殿の横にいた弁護士は声を大にして言い放った。
「ユウエツ殿、この話について反論や反対証拠は出せるか?」
裁判所長官はそんなことを聞いてくるが、俺には、権利書以外の証拠を持ち合わせていない。
フワリンヌさんもいなければ、トーラリーさんも側にいない。
隣にいるのは、フォスンの街に一緒に行く予定だった、ミーシャさんとマフフさんそして、春ちゃんだけだ。
権利書があるから、1回目の裁判は勝てると思ったのだが、甘かったようだ。
転移魔法を使って、ふたりを連れてきても良いが、そんなことをしてしまうとバレてしまう。
転移魔法をこの世界の者は使えないからだ。モンスターは除く。
転移魔法がバレてしまうほうが、やばい気がする。
転移魔法を使って、サドンの街にある俺の所有物や雇用している者と奴隷や配下達を転移して、逃げれば良いがここで逃げると負けた気がして嫌だ。
「ありません」
俺のその言葉を聞いてニヤニヤ見てくる、コーリンベルト。
イライラする。
『最後に、今回の事件について何か言いたいことはあるか?』
と言われ俺はありませんと答えた。
コーリンベルトは、
『私は先祖代々Sランクの商人として働いています。こんなポッと出の商人より、信じていただけると思います。』
と偉そうにペラペラと話していた。
裁判所長官と残りのふたりの裁判官が話し合いを始めた。
今回の裁判について1回目の答えを決めるのであろう。
意見がまとまったようだ。
「第1回 コーリンベルト殿とユウエツ殿の裁判はコーリンベルト殿の勝ちとする。第2回は5日後とする。各自、証拠などなど、準備しておくように。これにて閉会」
裁判官の長官にそう言われ、裁判所を後にした。
敗れてしまった。悔しいな。悔しすぎる。
それにしても、次の裁判は、5日後か、日本とは全然違うな。




