第3話 【マップナビモード】
始まりの街に入る少し前の話です。
城下街を追い出されてから3時間が経ち、夕暮れ時となった。
天使の翼で空中を自由に飛び回り遊んでいたためか、なかなかはじまりの街に進まなかった笑笑
はじまりの街にあと少しというところで人の悲鳴が聞こえた。
「とりあえず……。行ってみようかな」
多分、女性の悲鳴だと思う。
悲鳴が僕の耳に届いたということは、何らかのトラブルがそちらの方向であったということ。
この世界に来たばかりの僕にとって、悲鳴に対して行動を起こさなくてはならない理由はないけど。
強いて言うなら道徳的ということだろうか。
異世界物の小説の主人公は、大概ここで助けて、最初の異世界生活の足掛かりとなることが多い。
もしかすると、今後僕のヒロイン候補だったりして笑
という考えも頭に浮かぶ。
正直、孤独は嫌いだけど、1人は好きだ。
助けに行かなくても良いとは思う。
しかし、助けられる力があるのであれば助けるべきだと思った。
それを踏まえて、僕も、異世界物小説の主人公の行動に習おうと思う。
『ナビ』
エンジェルフォンを使いナビのマップを検索モードにして、声の聞こえた方向に走りながら、近づいていく。
多分、悲鳴を発したであろう善意の証である色の女性をマップに登録して、ナビモードを発動。
その女性を追いかけている存在は邪悪な存在の赤色でマップに表示されている。
『右に100m、その後、左へ500m先、目的地です』
言葉ではなく文字で、現れた。
僕は、悲鳴を上げたであろう女性の方向に走り出した。
聞こえてきた悲鳴の現況はすぐに見えてきた。
『目的地周辺です。ナビモードを終了いたします』
遠目から見て、5人の男が、茶髪の女性を取り囲んでいる現状であった。
僕が近づくにつれ女性を囲んでいる男達はわずかに警戒をしたがすぐに小馬鹿にしたような表情になる。
彼らの表情は、僕にだってある程度は理解できた。
男達からすれば、敵がきたと言う一瞬の警戒から僕の姿を見て、それが脅威足りえないとすぐに判断したのだろう。
僕の格好は青のTシャツに下は黒のジャージだが、天使の隠蔽により、村人の、普段着茶色の服装。
そして、1人で、森の中にいるにも関わらず武器なしだ。
脅威になりえない。
そう思われても仕方ない。
オークの短剣でも持っておけばよかっただろうか?
エンジェルバッグに入った武器防具はキレイに自動洗浄されるから触ることもできたのだけど、『しらたま』と『ゆれだま』でモンスターを倒せるから完全に盲点だった。
自動洗浄便利すぎる。
異世界で洗濯屋さんでも、始めようかな笑笑
「えっと……。」
右手を顎付近に持ってきながら言葉を発する。
「何の用だ? 武器も防具も無しで」
声をかけた僕に、男達の1人が答えた。
僕は自分のことを何て説明しようか迷っていた。
商人でもないし冒険者でもない。
村人といったら舐められそうだしなーと考えていた。
勇者を超えし者、勇越者です。
と言っても頭の痛い子だと思われそうだし笑。
ましてや、天使です!と言っても信じてもらえそうにない(笑)
「おいどうした。黙っちまって。怖くてしゃべれなくなったのかぁ?」
バカにしたような声色で、僕を威嚇してくる男。
小物感、丸出しだ。
「うーん、えっと、ちょっと待ってください」
そんな笑い声を全く気にせずに、僕は囲まれている女性の観察をする。
女性は痩せこけていて、服は薄汚れており、ところどころ破けていた。
そして左腕が欠損している。
とても痛々しく見える。
身体中にDV彼氏から継続的にDVを受けたかのようにあざだらけな女性。
「助けますね?」
僕は女性に近づいた。
座り込んで、小刻みに震えている女性に疑問形で尋ねる。
怯えている女性を気にしてしゃがみ込んで視線を合わせて優しく微笑む。
「お願いします」
震えながらも、頭を前に倒し助けを求める女性。
僕はその返事にコクリと頷き、
「はいっ。少々お待ちください」
と告げて、男たちの方に向き直った。
「おいお前、その女は俺達の奴隷だ、俺らが好きにする権利がある」
僕と女性のやりとりを見ていた男達。
「んー、奴隷ね。ふ~ん。だから?」
奴隷という存在がいない環境で育った。
男の奴隷という言葉に実に不愉快な感情が芽生える。
「何言ってんだこいつ?うらやましいならお前も混ぜてやっても良いぜ?俺らの性奴隷だからな」
ハッハッハと笑う男達に、女性は嫌悪の視線を向けながら『いやぁっ』と怯えている。
本当に、この女性が男たちの奴隷だとしても、僕は助けることを選んだと思う。
奪ってしまえばいいんだ。
ダメな発想だとは思うが、嫌がる人を助けたほうがよいだろう。
明らかに男たちが悪者っぽいし。
【マップナビ】にも邪悪な存在と表現されている。
なんか不愉快だ。非常に怒りが込み上げてくる。
奴隷という言葉は嫌いだ。
人の尊厳を踏みにじっている。
僕が睨みつけながら近づくと、男は手に持っていた剣を振りかざしてきた。
その男に、俺は、黙って『しらたま』を打ち込む。
「なんだてめぇこれは」
しらたま発動で、HP生命力ゲージが左から右に色が消えていき、ゼロとなり、男はコト切れた状態になった。
『ドサッ』
と、急に倒れた男を見て残りの男達は何が起きたのかわからないようだった。
武器も使っていなくて魔法詠唱もなしだから。
急に攻撃されて、びっくりするだろう。
【情報】でしらたま、ゆれだまについて確認したところ、使用者自身しか白い塊は通常、見えないという事。
「まっほう?まっしろいモヤモヤ??」
怯えている女性が言葉を発した。
あれっ!?見えてるの?なんで!?
情報間違ってる?(笑)
しっかり情報開示をお願いね?(笑)
「ねぇ、浄化してあげるから。お前らから攻撃してきたんだから、実に不愉快」
冷たく言い放った僕に、男達は爆笑した。
今までの会話は、見知らぬ人だから敬語で話していたが、敬意をはらう必要性が感じられないのでタメ口で接することにした。
お読みいただきありがとうありがとうございます。
感謝です!!