第六話 ま、まさか習慣性が
本当に筆が進みます。
なのでしばらくこのペースで進めます。
そのうちきっと亀の呪いが……
先に誤字の呪いが出ました。
残金が厳しくなったので、致し方無く裏技の魔石を1つ売る。
「今度は分かったんだろ」
「それがさ、どうやら土の中に潜るみたいなんだ」
「うむ? 土の中だと」
「こう、地面がモコモコとなってさ、木で作った槍で突き刺したんだ。そうしたら地面が盛り上がって何かが出ようとして、いきなり静かになったんだ。んで土を掻き分けてみたらこんなの出ました」
「となるとリザードかのぅ」
銀貨3枚くれました。
リザードマンとは違うようで、モグラの親戚みたいな魔物らしいです。
地表近くは滅多に出ないので、狩るのが大変な魔物らしいです。
その為に魔石の価格もかなり高いけど、需要は他の魔石で賄うので平均化されて少し高いぐらいになるようで、オークより少し高い銀貨3枚になったらしいです。
もっとも、魔石から魔物の種類など、余程に精密に調べないと分からないらしいですが。
「まあのぅ、普通は大きさで見るからの。それでもリザードの魔石が欲しいって輩も稀には出る。そういう時には高く売れようがの」
それでも銀貨3枚はラッキーでした。
「また見つけて持ってくれば、銀貨3枚で買うからの」
残り4個の売り先が確定した瞬間です。
とは言え、滅多に会えない魔物の魔石とか、毎日持参する訳にもいきません。
素直にオークって言っておけば良かったんだけど、この界隈にはオークは居ないらしく、居たら大騒ぎになるらしい。
と言うのもオークは集団を作って森の奥に居るのが当たり前で、何かが無いと出て来ないらしい。
その何かと言うのが問題で、魔物暴走とかだと数百匹のオークの群れになるらしい。
だから普段居ないはずのオークを見かけたら、その懸念があるとして最寄の町の冒険者ギルドに届出をするとか。
やっぱりあるんだ、冒険者ギルド。
◇
所持金、銀貨3枚、銅貨17枚、そして裏技魔石は12個に増えた。
気絶狩りが主流になりつつあり、ゴブ肉ジュースの事もあり、これからも増えていくだろう。
誤魔化しが効かなくなる前に最寄の街に行かないと、資金調達がショート寸前だ。
とりあえずは宿が後1週間残っているので、それが尽きるまではここで狩り、尽きたら最寄の街に移動しようと思う。
それと持続性だけど、毎食ジュースだったのを日に1回にしたら、少し落ち着いた感じになった。
確かに力は以前よりかなり強くなっているんだけど、飲んだ直後のハイな感じが薄れた感じだ。
となとるあれは、ドーピングのような効果があったって事で、保存が効くなら売り物になるかも知れない。
でもどんな効果と言われると困るんだけど、集中力が高まって力が強くなってスタミナが増大する感じで、瞬発力も派手になって、視力が良くなってと、色々な力が強くなるって感じだ。
またぞろ村の外でゴブリンを狩る。
山で小動物を狩ってニカワも作り、鳥も狩って矢羽も獲得した。
そこいらの木から矢も作り、準備万端での狩り日和。
山では午前中に狩りして午後はずっと作業していたからなぁ。
そのついでに鳥肉は食ったけど、ゴブ肉ジュースが欲しくて困ったよ。
ま、まさか習慣性が……
ゴプリンゲットして早速ゴブ肉ジュースの作成、そしておもむろに……ゴクゴクゴクゴク……ぶはぁぁ。
ヤバいな、これ、絶対癖になっているよね。
だけど習慣性と言うより、飲むと元気になるから欲しくなるって感じだけど、今日は保存の方向から考えてみようと思います。
相変わらず入れるのは少量の砂糖だけど、腐らせるともったいないのは確かだ。
それでも検証は必要だろうと、ポーション容器を買いました。
これは回復用のポーションが入っていた容器であり、使用済みは洗浄すると下取りしてくれるという品。
下取り価格が銀貨1枚らしく、回復ポーションは銀貨5枚という高級品らしい。
そんな訳で銀貨1枚で何とか売ってもらいました。
使い終わって返却すれば、交換でお金を返してくれるらしいです。
さあ、ゴブ肉ジュースを流し込んでの耐久レースの開始です。
どれぐらいで濁ってくるか、それが問題です。
出来れば宿を引き払うまで、濁らないで欲しいものです。
そうしてまたぞろゴブ肉ジュースを5袋作り、裏技魔石も5個確保です。
後は普通の狩り方で少し狩りますかね。
◇
ワンコ発見……狼かな?
1匹とは珍しいが、魔物は魔物、退治します。
これは速い……体当たり? 望むところだ。
必殺、ヘルメット攻撃。
彼の鼻面に強化プラスチックのヘルメットが激突し、彼はふらふらとしています。
そこをすかさずネックハンギング……身体に足を絡ませて抱き付きます。
そして横倒しになって……コチョコチョコチョ。
肋骨の辺りをくすぐってやると、堪らない様でもだえています。
オレ、犬系殺すの嫌なんだ。
だから何とか馴染んでくれないかなと思ってさ、おやっさんの家のワンコに馴染んだ時みたいに、くすぐり大作戦をやったんだ。
少し右腕を緩めると呼吸が楽になったようで、手足の力も弛緩したみたいなので、そのまま地面に横倒しにして腹を撫でまくったんだ。
敵意が無いせいか、それとも諦めたのか、噛み付く様子も無いのでそのまま抱き枕状態になりました。
ハフハフ言っていたのがクーンクーンと言い出して、馴染んでくれたような気がします。
よーし、それならこいつを食わせてやろうな。
必殺、ゴブ肉ジュース。
ビニール袋の口を開けて、飲めとばかりに口にあてがいます。
クンクンと匂いを嗅いでますが、ゴブリンの匂いはしましたか?
人間には無臭としか感じないんですけれどね。
ペロリと舐めた後、顔を突っ込んで舐め始めました。
どうやら気に入ってくれたようです。
ああ、我らゴブ肉ジュースファミリー、なんてね。
すっかり馴染んだようなので、首が絞まらないように工夫した補助ロープでリードを作ってみます。
仕事で教わったロープの結び方で、もやい結びというらしいです。
なんでも船員さんが使うような結び方らしく、確かに引っ張っても締まらないので安心です。
ちなみにオレが山で使っていた結び方は、人命救助に使うような方式だと言われました。
解くのが楽なので今ではこれが気に入っています。
ちょっと緩いのは我慢してもらって、気分は犬の散歩状態にして、村に連れて帰ります。
カナビラ付きなので安全帯に装着すれば手が離せます。
これでゴブリンが出ても安心ですね。
「お前、それ、野犬だろ」
やっぱりワンコだったみたいだ。
「餌やったら馴染んだ」
「そりゃまた珍しいが、放し飼いにはするなよ」
「了解です」
宿で聞いてみると、汚さなければ構わないと言われ、とりあえずワンコと共に井戸で体を洗います。
やられました。
プルブルは反則です。
やる時は言ってください。
そうして宿の部屋に入り、ワンコは床でオレはベッドと言いたいが、安宿なのでそんなものはありません。
わらのベッドに敷布を敷いただけの代物なので、敷布を剥げば抱き枕可能です。
チクチクと痛いので服を着ます。
まあそれだけじゃありませんけど。
さすがにワンコと裸で同衾とか、変態ですね。
それはともかく、撫でてやると気持ち良さそうにしています。
それにしても野犬ってさ、狼の家畜化とか飼い犬の野生化って聞いた事があるんだけどな。
こんな世界で飼い犬ってのも無いだろうし、狼は魔物だから家畜化もどうなんだろう。
となると元々は山犬とかが里に降りて来て、家畜を狩ったり畑を荒らしたりするのかな。
魔物の居る世界でのそれは、ちょっときつそうだけど、他に何かあるのかも知れない。
言葉が通じない以上、彼の生い立ちは不明な訳で、追及は諦めるしかないようです。
おやすみなさい。
◇
うーん、くすぐったいよぅ。
目覚めるとほっぺに柔らかい何かが当たっています。
「あ、おはよう」
「ウォン」
ワンコに洗顔をしてもらったようですが、やはり人間は水で洗いたいものです。
さあ、朝食とばかりにリュックの中のゴブ肉ジュースを飲ませます。
どうやら味をしめたようで、夢中で飲んでいます。
よし、オレも。
朝から絶好調な気分のままに、またぞろ飼い犬状態で下に降りていきます。
井戸で顔を洗い、更にリフレッシュな気分になりました。
ワンコも調子が良いようで、尻尾が派手に振れています。
そろそろ名前を付けてやらないとな。
「名前なんだけどさ、ポチはどうかな」
「……ブフン」
気に入らないみたい。
ううむ、ネーミングセンスさえ破綻していなければ、それっぽい名前が出て来るんだけどな。
弱ったなぁ、どんな名前が良いだろうかと、散歩しながら考えていたところ、ふと閃いた。
「シルフィ」
「……ウォフン」
イマイチ? そうかなぁ、良いと思うんだけど。
てかあれ? なんでこいつの気持ちが分かるの?
もしかしてそんなスキルでも?
よし、そう言う事なら。
「お前の名前を教えてくれるか」
「……ウォンウォッフ」
「ランダロフ? 」
「ウォン」
そんな名前が頭に浮かんだんだ。
これ、やっぱり何かのスキルだろ。




