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第二十二話 似て非なる存在

  

 最近、村長さんが熱心です。

 嫁さんを貰えと煩いんです。


 確かに本当ならとっくにそうなっていても構わない年齢ではありますが、あいにくとちょっとこの世界の人には言えない理由があるんです。

 神様に夢で聞いてみたところ、やはりそうらしくて結婚は諦めています。


 この世界の人達は『人族』と呼ばれています。

 そしてあちらでは『人類』になっています。

 これは単なる表記だけの問題ではありません。


 確かにこちらに転移した後、魔人になりはしましたが、基本的な身体は人類のものです。

 厳密な事を言いますと、遺伝子が違うそうです。

 と言うのも、この世界には獣人の存在もあるぐらいに、獣の遺伝子が僅かですがほぼ全員に混ざっているそうです。

 そうして年月が経つにつれて人類とは違う種族になったらしく、かつては人類と同じ遺伝子を持っていたらしいのですが、今では別の種と言っても過言では無いそうです。


 なので、子供が非常に出来難いと言われ、生まれても稀だろうと言われました。

 相手が見つかったとしても、石女うまずめの疑いをかけるなど、可哀想でとても娶れません。


 かと言って種無しと言い訳して回るのも嫌ですし。


 あちらの世界なら、ノーキッズな夫婦も認知されていますが、こちらでは夫婦は子供が居るのが当たり前です。

 なので夫婦になっても子供が生まれなければ、何かの欠陥か病気持ちと思われてしまいます。

 それとこれは、他の例を知らないので自分だけかも知れませんが、魔人になってからと言うもの、どうにもあちらのほうがおとなしいんです。

 確かに二十歳は過ぎていますが、まだまだ枯れる年齢ではありませんし、向こうではそういう場所のお世話になった事もあります。

 なのに、こちらに来てからと言うもの、本当にそういう欲求が来ないんです。

 もしかしたら魔人になったせいかも知れませんが、何もかも強化されると言うのに、あれだけ弱化というのは納得がいきません。


 でも他の理由も思い付かないのです。


 後、ランダロフは山犬ですが、魔獣になった山犬など、見かけた事もありませんので、ずっとそのままかも知れません。

 なので似た物同士として、これからもこのままで過ごすようになると思います。

 それでも彼が望むなら、彼女に飲ませても構わないと思っています。

 そして共に魔獣になれば、似合いの夫婦になるでしょう。


 それを眺めているだけでも、癒されると思います。


 ◇


 今日、クラビレットの面々と久し振りに会いました。


 実は困った事が起こったと言われ、その事で彼らと談合しました。

 最近、魔人になる方法を教えてくれとしつこい人が現れたそうです。

 なまじ貴族なのでおいそれとは断れないのですが、SSの冒険者という看板を盾にしてなんとかやり過ごしているらしいですが、それもきつくなったそうです。


 そこで幻の迷宮探索をでっち上げました。


 駅馬車の護衛任務の頃には自由時間がありましたので、それを利用しての郊外への散策の折、落とし穴みたいなのに全員が嵌り、脱出しようとしていたら迷宮らしき存在だと分かり、せっかくなので討伐しようという意見でまとまり、何とか討伐に成功したのもつかの間、全員の身体に変貌が起こり、気付いたら魔人になっていたというものです。


 ちなみにその迷宮は跡形も無く消えてしまい、何の痕跡も残ってないので誰にも言えなかったという事にしました。

 なので王都に近付いた頃に挙動がおかしかったという、バレそうだった頃の話にも繋がるようにしてあります。

 結局、その話でまとまり、いざという時にはそれを極秘だと話す事になりました。


 ですが皆には、詐欺師になれるという、ありがたくない評価を受けてしまいました。


 難題が解決したのでそのまま宴会に突入し、秘蔵のウイスキーを飲ませたら、それを凄く気に入ったそうです。

 物凄く高いと言ったのですが、是非にもまた飲みたいからと仕入れる事になりました。

 彼らも金には不自由していないようで、そういう趣味の品には糸目を付けないようですね。


 そしてどうやらギルドのほうから内々に、気絶させての首チョンパが伝わったようで、乱獲をしない事を条件に討伐での取得が認められたと聞きました。

 なのでますます金に余裕が出来たようなので、チョコレートも売り込んでおきました。


 そんな訳で女連中の分の仕入れも行います。


 彼らの分は儲けなど度外視で原価での販売の予定ですが、それでもかなり高いのでどうなるか心配です。

 彼らもそのうち落ち着く場所を決めるらしく、そうなったら配達になるだろうと思います。

 ですが、自分で持っていかないと、うっかり盗られたりしたら大変なので、あんまり意味は無いですね。

 それでも探して届けるよりはましなので、早いとこ定住場所を決めて欲しいものです。

 なまじ人気があるのでおいそれとは決められないらしく、王都に近くてなおかつ静かで過ごし易い場所という、非常に難易度の高い場所を探しているようです。

 やはり冒険者ギルド総本部のあるこの国の王都の近くと言うのが望ましいようで、上位の冒険者にはそれが必須なのかも知れません。


 実際、各国のギルド本部でも大抵の用は賄えますが、何かあった時に訪れるなど二度手間です。

 なのでどうしてもそういう機会のある、上位の冒険者はこの国に集まってくるようですね。


「ウォン、ウォン、ウォン」


 おや、何でしょう。


 あいつがそんなに吼えるなど、珍しい事もあったもんです。


 ちょっと様子を見てみますか。


 ◇


 奥さんを連れて戻りました。


 どうやら彼に春が来たようです。

 早速、ゴブ肉ジュースを飲ませる事にしました。

 彼もそれを望んでいるようですし。


 子供が生まれたら『ラン太郎とラン子』にしますかね。


「グルルルル」


 冗談ですよ。


 でもちょっと羨ましいですね。


 ◇


 やる時にはやる奴と思っていましたが、実に早業と言うべきでしょうか。

 手が早いと言うべきですが、この場合は前足が早いと言うんですかね。

 どうにもよく分かりませんが、とにかく、ランダロフはパパさんになるようです。


「ランパパ」

「……ブフン」

「奥さんの名前、どうする? 」

「ウェーンオン」

「いや、同じは拙いだろ」

「ウォォォンオンオン……オオンオン」

「ランダが神々で、ロフが使い魔か。確かに神々の使い魔って意味は凄いけどさ、同じにするのは反対だぞ」

「……ブフン」

「クロッカスはどうだ」

「ウォーン? 」

「花の名前だ」

「ウォン」

「決まりだな」


 オレが花の名前など、普通なら知る訳も無いよな。

 かつて買った雑誌で知ったんだよ。

 クロッカスって花があるってのを。


 オレが元々知っているのは、食べられる植物の花だけだ。


 ◇


 緊急連絡が来ました。


 どうやらまた魔物暴走スタンピートのようです。

 ギルド総本部のオレ担当の幹部からの直接連絡なのですが、こっそり誘致した無線なのは内緒です。

 車載のアマチュア無線機とバッテリーを入荷して、一体化させた代物を彼の部屋に設置しました。

 彼には魔導具と伝えてあります。


 手に入れるのに金貨60枚必要でした。


 複数のバッテリーを並列にしているのでかなり保ちますが、たまに交換用部品としてバッテリーセットの交換をやっています。

 これも込みなので高いのです。

 無線機自体は金貨数枚だったのですが、バッテリーを8基並列にしたのを1セットとして、4セット用意しました。

 そのうちの2セットは魔導具風無線装置に引き出しのような方式で挿入出来るような仕組みを作り上げ、あたかも大掛かりな魔導具装置のように見せかけています。


 そうして残りの2セットは、アンテナ設備に交換で使います。


 どれぐらい離れていても届くようにすれば出先からの連絡もやれると、ギルド総本部の屋上にはこの世界では見慣れない、8つの棒のようなものが付いた代物を高く立ち上げています。

 出先では飛行魔法で高度が取れるので、世界が丸くても問題ありません。


 更には金貨100枚をはたいたソーラー発電システムはかなりの電力を生んでくれ、専用の充電池にひたすら備蓄されています。

 その為、家の中の照明にそれを用いているので、まるで向こうの世界のような明るい家になっています。

 そしてもちろん、強力な充電器でバッテリーセットにも充電されています。


 ああ、そう言えばラジカセとCDも買ったのでした。


 奇しくもそれが初めて買う音楽系家電なのは悲しい事実です。

 田舎暮らしの頃には山での用心にと猟師会の狩人が小さなラジオを持たせてくれましたが、自分で買った訳ではないですし都会に出て来た頃にはそんな余裕はありませんでした。


 正式採用になればそのうちに買っていたかも知れませんが、それも今となってはです。

 なのでオリジナル魔法の冷蔵庫のイメージも、現場のスーパーハウスの中に置いてあったので知っているだけです。

 そんな貧乏暮らしなので、温風ヒーターまでは何とかなっても、エアコンのイメージが湧きません。


 温風ヒーターなら現場にありましたからね。


 もちろん仕事用ですが、床や塗装面の乾燥に使われていた代物でした。

 こたつなんかも同様ですし、ドライヤーもそうでした。

 ちょうど都会に出たのが春先なので、その手の家電が無くても問題ありませんでしたし。

 実家で見たんじゃないかって? 触るなと言われてましたよ、残念な事に。

 オレも単なる興味で殴られるのは趣味じゃないので、冷蔵庫の中の冷たさなんかは知りませんでした。

 夏は川で泳いでいましたし、特に冷たい物が無くても何とかなっていたものです。


 さて、この辺りですかね。


 ああ、居ましたね。


「やっぱり発案者だな」

「慣れですよ、慣れ」

「そうかなぁ。中々長距離はきついと思うが」

「それも慣れですよ」

「なら、もうちょっと頑張ってみるか」

「止まっている鳥じゃダメですよ。ちゃんと飛んでいる鳥をイメージしないと」

「やってはいるんだが、中々だぞ」

「この際、ワイバーンでもイメージしてみますか」

「冗談だろ。あんなものイメージしたら平常心で飛べないだろ」

「そんなもんですかね」

「当たり前だ」


 どうやら前途多難のようです。

 

「それにしても、物静かなのか激しいのか分からん奴だな」

「ジギルとハイドかな」

「何だと、貴様ぁ」

「うえっ、何がどうしたの」

「今、言っただろ。仕切ると敗走と。オレの指揮がそんなだとか、てめぇ舐めてんのかよ」

「そんな事は言ってないよ」

「今、言っただろうが」


 うっかりつぶやいたせいで、大騒ぎになってしまいました。

 それにしても、酷い聞き間違いもあったものです。

 それともそんなコンプレックスでも持っているんでしょうか。


 結局、説明をして納得をしてもらうのに30分も掛かりました。

 魔物暴走スタンピートのさなかに迷惑な事です。

 そんなプライベートを優先するからこそ、指揮が拙いと言われているんじゃないかと思ってしまいました。


 今後こそ、彼には内緒ですが。

 

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