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第二十一話 秋から冬にかけて

  

 商売も順調で仕事も順調な日々ですが、ランダロフが暇そうです。


 それもそのはず、仕事の時は大抵は飛んで行くので背中でじっとしているだけですし、商売は特に関係ありません。

 ゴブ肉ジュースが少なくなれば狩りに行きますが、それだけと言うのもつまらないようです。

 可愛い子には旅をさせよと言いますし、ランダロフに聞いてみました。


 そういう訳で彼の冒険が始まります。


 彼の事は大抵の竜が知っている為、見かけても特に何もして来ないでしょう。

 それ以外の魔物ならそこまで苦労する事は無いでしょうし、その点は安心出来ます。

 もちろん、何かあったら戻って来るでしょうし、そうあって欲しいとも思っています。

 彼もまだまだ動きたい盛りなので、仮初ではありますが自由にさせようと思いました。


 きっと帰って来るんだよ。


「ウォン」


 傍らの存在が居ないと妙に寂しいです。


 何かをしていても彼の事が気になって集中出来ません。

 やっぱりオレにはあいつが必要なのかもな。


 あーあ、今頃何処に居るんだろう。

 やっぱり早まったかな。

 オレも付いて行けば良かったかな。


 でも、仕事もあるし、商会もあるし。


 放置しての旅はさすがにきついしな。


 仕事の合間に時間を作って一緒に遊べば良かったな。


 うん、そうだな。


 次からはそうしてみようかな。

 だから早く帰っておいでよ。

 ずっと待っているからさ。


 ランダロフ~カムバ~ック~


「ウォーン」


 あれっ、お早いお帰りで。


 どうやらゴブ肉ジュースが無いとダメなようです。

 深皿に出してやると、喜んで飲み始めました。

 お前もこれ無しでは生きていけなくなったんですね。


「ウオッフン」


 ◇


 結局、短期のソロになりました。


 つまり、朝出かけて夕方戻るスタイルです。

 仕事で出張の時には食事は深皿に入れて、つらつらと並べておきます。

 そうそう腐る代物ではないので、10個ぐらい並べておいても問題ありません。


 うちの家は仕事の関係上、王都に近い村にありますので、村の外を走り回っています。

 実はこれが魔物の被害を抑える効果がありまして、村の人達にも受けています。

 彼は『ラン』と呼ばれていて、魔物が近付くと積極的に討伐しているようで、村の人気者になりつつあります。

 魔獣ではありますが、銀の毛が艶々なので、同じような生き物とは見られないようです。


 シャンプーとリンスの効果ですね。


 実は空間拡張という魔法を習得しまして、その応用で首輪に付けてみたのです。

 そうしたら自分で討伐して魔石を入れるようになりました。

 もちろん、気絶させての首チョンパ方式です。

 そのせいもあり、収支がかなり黒字になっています。


 自分の食い扶持を自分で稼ぐなんて、やっぱりうちのランダロフは賢いです。


 今日は料理に挑戦してみます。

 実は大根がこの世界には無いのです。

 肌寒くなって来ましたので、鍋にしようと思います。

 鍋と言えばふろふきです。


 え? 違うって?


 実は貧しい食生活だったので、鍋に切った大根をつらつらと並べ、炊いて食べていたのです。

 なので鍋と言えば大根であり、ふろふきなのです。

 確かに都会に出てから食の範囲が広がりましたが、かつては本当に貧しい食生活でした。

 猟師会で獲物と交換で大根を手に入れ、獣肉と大根の鍋をよく作っていました。

 さすがに家族と言えども残り物ばかりじゃ嫌になりますし、たまには温かい物が欲しくなりますし。

 そんな訳でますます家には寄り付かず、寝る時だけ帰るような日々になっていました。


 そんな頃、弟がオレの境遇がどうにも気になるようで、親に談判すると息巻いた事がありました。

 ですが、それは逆にきつくなるからと、なんとか止めさせた事がありました。

 それから弟も狩りに興味を持ったようで、猟師会に来るようになり、共に狩りに出かけたりするようになりました。


 妹は狩りはしませんでしたが、猟師会の宴での土産を楽しみにするようになりました。

 滅多に無い事でしたが、宴での料理は本当に美味しかったです。

 本当にあの両親はどういうつもりだったのでしょうか。


 こちらが何も言わないからと調子に乗って。


 確かに普通なら文句ぐらいは言うものですが、あそこまで虐待されたら下手に文句も言えません。

 ただでさえ生存ギリギリなのに、それを超えたらもう独立するしかありませんからね。

 本当なら中卒でそうしようと思ったのに、高校に行かせてやるなどと、そんな甘言に乗せられて、結局はストレス発散に利用されていただけだったように思います。


 あんな親でも思い出す事もあるんですね。

 もう二度と思い出す事など無いと思いましたが。

 もちろん、もう二度と会いたくはありませんが、弟や妹には会ってみたいです。


 叶わぬ夢ですが。


 あー、仕事の関係上、どうして村なのかという説明を忘れていましたね。

 実は王都には門番が居まして、しかも人が多いので手続きに時間が掛かります。

 特に金などは必要無いのですが、身分証明の提出が必要なのです。

 そんな訳で、村の場合はそんな必要はありません。

 現にランダロフはフリーパスになっていますし、自分も同様です。


 そんな訳で自宅から飛行魔法でひとっ飛びで、そのまま仕事先に出かけられます。

 そんなオレの事は村の風物詩みたいになってまして、特に騒ぎにはなりません。

 それと言うのも、この飛行魔法がギルドに認知され、その功績でランクがまた上がってしまいました。

 その事を村の人達には知られているようで、言わば雲の上の存在のようで、何でもありみたいに思われているようです。


 さすがに航空機に成り切るなど、イメージには結び付かないので、鳥になったつもりでと教えました。

 そうして成功者も出て、新しい飛行魔法として確立したのです。

 この魔法は冒険者に特に人気がありまして、狩り場への往復が楽になったという話も良く聞きます。

 山あり谷ありの街の外では、地面を移動するより飛んだほうが遥かに楽なのは事実です。


 しかも、途中で魔物に襲われる事もありませんし、何かあったら逃げるのも楽ですし。

 ただ、魔力の消費が問題なので、それがネックになっているぐらいですね。

 なのでパーティメンバーを背負って飛び、途中で交代なんてのもやっているようです。


 竜族の調停の仕事は今は殆ど無くなりました。


 それでも相変わらず貢物は欠かしていません。

 実はギルドから補助金がもらえるようになりまして、その貢物は予防の為の資金として認められたんです。

 そうして人族が近付いて何かやり始めると、自発的に移動するようになりました。

 なので補助金の有効性が認められ、ますます貢物をするようになっています。


 彼らもそのほうがお得と判断したのかも知れません。


 ◇


 オリジナル魔法の『温風ヒーター』を利用して、こたつを作りました。


 そうしたらランダロフが入り浸りになってしまいました。

 庭駆け回るんじゃないのかよ。

 お前は猫か。


 でも気持ち良さそうなので、釣られてしまいました。

 ぬくぬくして心地良いです。


「……ワフン」


 今日はこのままのんびりしようかと思います。

 

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