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第十八話 無知とロウソク

   

 図書館で『新技』『裏技』に付いて調べてみました。


『新技』 新たに発見した世界の法則。

『裏技』 全く別の方面から、同様の効果を得る方法の確立。


 これは恐らく、気絶させて肉を千切って殺すと消滅しないという事実が新技で、ゴブ肉ジュースで魔人になる方法が裏技なのでしょう。

 つまりさ、本来の身体強化薬は別の素材を組み合わせたのだと思う訳ですよ。


 知られて乱獲されては困る特殊な素材が必要なのが本来の薬であり、だからこそ秘密にしたのかも知れません。


 思い付くのは世界樹関連ですね。


 世界に1本しかない木の素材とか、公表したら大変な事になりますし。

 他にも各国の王族の血が必要とか、おいそれとは試せません。

 そういう、普通ではやれないような事の結果だから秘密にした、と言うのがありそうな話です。


 それの簡易版と言うか、まさに裏道になるんですね。


 本来の薬は1回飲むだけで効くのかも知れず、毎日1本の1ヶ月連続投与とか実用的ではありません。

 それでも積み重ねによって同等の効果になるので、裏技認定されたと思えば辻褄も合います。


 全ては妄想ですが、信憑性はあると思いませんか。


 ◇


 図書館での考察が終わり、屋台で適当に買い物をした後、ランダロフと共にお食事タイムです。


 お好み焼きに似た食べ物を発見するのですが、どうやら塩味のようでした。

 なので塩抜きで焼いてもらいました。

 遂にお好みソースとマヨネーズが生きる時がやってまいりました。

 これはランダロフにも受けたようで、お代わりを要求されてしまいました。


 なのでまた買いに走る羽目になりました。


 それでもせっかくなので、塩抜きでたくさん焼いてもらい、倉庫の中に入れておく事にします。

 少し料金に色を付けたら、快くたくさん焼いてくれました。


 これからが楽しみですね。


 ◇


 色々買い物もしたり宿にも泊まったのでかなり使いましたが、まだまだ半分ぐらいは残っています。

 思ったより金貨の価値が高いようで、やはりあの換算は近い位置にあるのでしょう。

 それだけにあの小さな村での出来事が異様に感じます。


 辺境の領主の娘だとしても、そんな大金を右から左とか、普通はあり得ません。

 世界の常識を知った今となっては余計にそう思います。

 更に言うなら村長さんが金貨50枚も出せた点です。


 村の予算がどれぐらいかは知りませんが、そんなに蓄えがあるとは思えません。

 考えられるのは、あの村長さんが実は領主であり、それも伯爵か公爵ぐらい地位の高い人だったという話です。

 あの国の貴族にしては奇特な人って事になりますが、それならばあんな大金が出せるのも分かります。


 娘が買った品だから自分も欲しくなったと、これで終わりますから。

 そうなると買った品は政争の道具になったのかも知れないですね。

 そう言えば、小さな村の長の割りに、その知識は半端ではありませんでした。

 あれが貴族としての知識なら、ありそうな話ではありますが。


 それにしても、さすがにやり過ぎたかも知れません。

 ああ、どっかの山の民、何かあったらごめんね。


 ◇


 今度は油の大量購入です。


 やはり貿易拠点のある国では、様々な品が揃います。

 途中の村や町でわら束の購入をして、灰にしておいたので在庫はたくさんあります。

 さあ、石鹸水の作成開始です。


 この国でも製法は秘密になっているようで、輸入に頼っているそうです。

 聞けばある国の特産品になっているようで、その国に行かなければ問題無いでしょう。

 だけど、特産品って事は国主導の可能性があるので、それの暴露はおいそれとはやれません。

 となると地道に小売りをしていくしか無いのかも知れないですね。


 今度は本格的に固形化をしようと思い、木で型枠を拵えて成型します。


 沁み込まないようにロウを塗ろうと思いましたが、どこにもロウソクがありません。

 さあ、ミツバチ探しです、と思ったら、ハニービーって魔物が出るそうです。

 ミツバチは魔物だったんですね。


「キラービーと間違えるなよ。あいつは毒を持っているからな」


 そうギルドで教わりましたが、その区別は大きさの違いしか無いそうです。

 なので子供のキラービーと大人のハニービーの違いを聞いてみました。


「うっ、それはだな。神に祈れ」


 当てになりません。


「何言ってんのよ、巣の大きさが違うじゃない。あのね、キラービーの巣はとにかく大きいの。ハニービーは小さいから、それが区別ね」


 親切なお姉さんに感謝です。

 なのでついでにロウソクに付いて聞いてみました。


「それって蜜蝋の事よね。欲しいなら船を作っているところで聞けば分けてくれるわよ。何? それが欲しいから討伐なの? 私はまた、蜂蜜が欲しいのかと思ったわ。あれは甘くて美味しいんだけど、とっても高いのよね。ねぇ、巣を持ち帰ったら高く買うからね。もちろん、蜜蝋はそちらが取ってもいいわ。こちらが欲しいのは蜂蜜だから」


 契約成立です。


 しかも指名依頼に近い扱いにしてくれるようで、特別料金みたいになりました。

 その女性は実はギルドマスターであり、男性はサブマスだったみたいです。

 普通は逆の場合が多いと思いますが、この街のギルドは珍しい例のようですね。


 珍しいと言えば、ギルマスとサブマスが受付で何やってんの。


「暇なのよ」


 実もフタもありません。


 ◇


 地図を描いてもらったのですが、どうにもハチの被害が出ている地域の場所が分かりません。

 仕方が無いのでそこらの人に聞くと、無知だと言われてしまいました。


 理不尽です。


 この国には来たばかりなのに。


 それでも何とか教えてもらい、到着したけど地図の方角が逆でした。

 酷いよ、もっとしっかり描いてくれよな。


 ようやく到着とばかりに歩いていくと、居ました居ましたでっかいハチが。


 あれがキラービーかな。


 実はキラービーのほうは単純に討伐になるそうで、ハニービーの巣だけが欲しいそうです。

 この地域ではハチの被害が多発しており、その討伐は常時依頼になっているそうです。

 さて、討伐ですが、普通に近接で倒すのは上策ではありません。

 なんせ相手は複数ですから。


 ランダロフも勝手が違うようで、少し尻込みしています。


 数匹相手にしていましたが、傍から見ているとまるで踊りまくっているようでした。


「……ブフン」


 成果の割りに疲れたようで、もう嫌だと言ってます。


 ならばここは弓ですね。

 遠距離から狙います。

 的が大きいので簡単に当たりますが、矢の数が足りなくなってきました。

 どうして後から後から湧いて出るんだよ。


 必殺・二刀流。


 結局はこうなりました。

 木刀もどきで叩きまくりますが、これも傍から見られていたら踊りまくっているように見えるんでしょうね。

 ランドロフも助けてくれて何とか途切れました。


 これは疲れます。


 周囲には小さな粒がたくさん転がっています。

 これを拾うの? 大変だぞ。

 草の根分けて拾いますが、なんせ小さいので探すのが大変です。

 パチンコ玉を草原で拾おうと思えば、こんな感じになるのでしょうか。

 ですがそれより小さく、近いのは某丸薬ぐらいですかね。

 黄色い箱にラッパの絵が描かれた薬ぐらいの球を拾っています。


 色も黒いのでそっくりです。

 そう言えば匂いも似てますね……ペロリ……うげぇぇぇ。

 味も似てました、最悪です。


 これで効果が無かったら詐欺ですが、いくら似ていてもさすがに効果は無いでしょう。

 とは言え、普通なら落ちていた物を舐めたりしたら大変ですが、悪食と鉄腹なので心配は要りません。

 更には健体もあるので病気の心配もありません。


 スキルに感謝です。


 なんとかキラービーの討伐も終わり、ハニービーの捜索を開始します。

 キラービーの巣も一応は倉庫に入れておきますが、使い道は分かりません。

 小黒丸もかなり溜まりましたが、これ、本当に効果が無いのかな?


 うわ、手がクレゾール臭い。


 「ブフン、ブフン」


 匂いが嫌なようです。


 ◇


 ランダロフが撫でさせてくれません。

 近付くと逃げるんです。

 仕方が無いですね。


 石鹸水を手に出して……『水道……開栓』

 しっかり洗って『止栓』そして『ドライヤー』


 「……ブフン」


 まだ匂うのか?


 何か他の匂いを付けないとダメかな。

 そうこうしているうちに、小さなハチを見つけました。


 ハニービー発見ですね。


 ハニービーは放置して、いきなり巣を狙います。

 なんせ毒は無いらしいので、盗った者勝ちです。

 まだ燃やしていないわらに、ライターで火を付けます。

 もうもうと煙が出て、ハチが逃げる逃げる。


 ハニービーが出払っているうちに、中の女王蜂を抜き出します。

 木の枝にそれを安置して、巣を取って……さあ逃げろや逃げろ。

 またまた恥ずかしい魔法に頼る事になりました。


 一生の不覚です。


 あいつらしつこいんだもん。

 

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