第十六話 年始試終無夜祝松竹立角祝今日楽
デタラメな当て字です。
小樽を買いましょ大量に。
獲得したスキルは『亜空間倉庫』と言いまして、時間停止で容量無限という派手なものでした。
なのでゴブリンの肉を大量に入れようと思ったのです。
そうしてこの世界の砂糖でも同様の効果があるかを試そうと思ったんです。
本当はでかい樽が欲しかったんですが、あいにくと小さな樽しかありませんでした。
1バレルな樽は特別注文になるそうです。
それでもし、ダメだった時には、同じ異世界の物質である、手持ちの塩とかしょう油とかでも試してみるつもりです。
もっとも、塩味のゼリーとか飲みたいとは思いませんけど。
そういや、米も探したいですね。
一般的なファンタジー小説では東にあるそうですが、この国が既に東の果てに近いので、その見込みは少ないです。
え? やけに色々詳しいって?
うん、普通なら詳しいはずがありません。
なんせ、パソコンはおろか、スマホどころかガラケーすらも持てなかった学生時代なのですから、その手の知識に触れる機会も普通ならありません。
確かに都会に出て初めて獲得したスマホですが、それでもおやっさんに頼んでの取得なので短い期間です。
実は高校時代のクラスメイトにオタクっぽい奴が居まして、そいつの影響がかなりあります。
それと、彼が好んでいた雑誌を偶然コンビニで見つけ、懐かしさから買ってしまいました。
あれを暇な時につらつらと読んでいたら、自然と詳しくなってしまいました。
もう何度も読み返しているので殆ど内容を覚えているぐらいですが、この世界にたったひとつの日本語の雑誌かも知れないので、これからも大事にしたいです。
先程、最初のカップ酒を開けました。
それと共に、チーカマを1本食べてます。
残りのカップ酒は4本で、チーカマも4本です。
本当はもっと欲しかったんですが、他の人が好きなスルメイカにしてしまいました。
でかいのが2枚だけなので、少しずつ食べようと思っています。
滅多に吸わないはずのタバコも遂に1箱空いてしまいました。
今の箱には15本と、少しずつ減っています。
愛用のタバコが切れたら、頼まれていたタバコになるでしょう。
そうして何時かは無くなってしまう。
たくさんあるようでも使えば減るのが当たり前。
だからと言って残したまま死ぬのももごめんです。
人生が終わるまでには使い切りたいものですね。
そうして死の直前、全ての証拠隠滅をするんです。
もっとも、亜空間倉庫の中に入れたままだと、そのまま消滅するかも知れないですけど。
以上、新年の戯言でした。
てかさ、まだ暖かいのに元旦とか言われてもさ。
そう、スマホの電源を久し振りに入れてみたのです。
まだ新しいので電源さえ切っておけば、もう少し保ちそうです。
これだけは亜空間倉庫に入れる訳にもいかず、ずっと持っています。
だって時間停止なんかになったら時計が狂ってしまうもんね。
だけど無くしたらきっと嘆くと思うので、これを機に入れようかと思います。
時計が狂うより無くしたり壊したりしたほうがダメージがでかいもんな。
本来なら充電器も欲しかったんだけど、持ってなくて残念です。
売り場でソーラー充電器も見てはいたんだけど、買わなかったのが敗因です。
しかも、予備の電池を持って来るのを忘れたので、机の上に置いたままでしょう。
だから電池が切れたらもうそれっきりになるでしょうね。
「ウォン」
「これ? 食い物じゃないぞ」
「ウォッフン」
「えとな、もしもし、はいはいってやつ」
「……ブフン」
「まあ、分からないよな」
ランダロフにスマホを理解させようとするのは、至難の業だろう。
さすがにそんな気力は無いぞ。
ていうか、この世界の人間にすら理解が及ばないだろうし。
はぁぁ、久し振りの冷やは効くなぁ。
オリジナル魔法の『冷蔵庫』です。
あの冷たい感じのイメージで、よく冷えてくれました。
実は『ドライヤー』と言うのと『温風ヒーター』と言うのを考えました。
まだ暖かいですが、水浴びにはきついので、温風を浴びながら身体を洗っています。
そしてドライヤー魔法で髪を乾かすんです。
本当にファンタジーに縁の無い魔法名ばかりです。
また来年の今頃にも1本開けようかな。
多少ずれてもそんなの関係無いし、それぐらいの時期になったら飲むのも良いだろう。
それでも5年で終わってしまうが、それもまた良しか。
まあ、ウイスキーも1本あるしな。
ああ、爪が伸びたな。
また切らないと。
爪切りが無くても安心。
現場労働者にはニッパがある。
よく切れるんですよ、これが。
「クシュン」
「ごめん、飛んだか」
これが残念なところですが。
◇
ランダロフにも飲ませてやろうとしたら、逃げられました。
どうやら酒は苦手のようです。
「はぁぁぁぁぁ」
「……ブフン」
「嫌か、嫌なのか」
「ウォン」
「臭いって? 」
「……ブフン」
どうにも酒の匂いが嫌なようですね。
カップ酒を開けるとガラス容器が出来ました。
この世界に無い綺麗で透明なガラス容器です。
ラベルを剥いだら高く売れそうですが、当然売る予定はありません。
これでエールを飲むんです。
冷蔵庫の魔法ですぐに冷やせるので、これからのエールが楽しみです。
普通の酒場では木のコップで生ぬるいエールですが、これからオレだけはガラスのグラスで冷たいエールです。
へっへっへっ、羨ましいかぁぁ。
ただの酔っ払いの戯言ですね。