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第十話 あっという間に連続殺人

主人公がヤバいです。

 

 深夜の時間帯。


 ランダロフを抱き枕にしていたものの、眠れないからぼんやりとしていたところ、そろりと近付く影。

 そっと抜く剣、後ろに引いて……安全靴で股座を蹴飛ばす。

 悶絶しているそいつをそのままネックハンギングに持ち込んでいると、コキッと音がして静かになる。


 ああ、力入れ過ぎたな。


 まあそいつの手は剣を握ったままだし、このまま放置しておけば良いだろう。

 しかし、何で殺そうとしたのかな。

 ライターが欲しかったのか? それともナタかな?

 どちらにしても、殺して奪おうとか、そんなのが冒険者をやっているのか、それとも冒険者の程度がそんなものなのか。

 どのみち羊皮紙で身分証明になるのなら、何も無理して冒険者になる事も無いか。

 そんな盗賊一歩手前な輩だと思われるのなら、ならないほうがお得ってもんだが、果たして真実はどうなんだろうな。


 それからは誰も来ず、朝になって騒ぎとなる。


「おい、お前、こいつ、どうしたんだ」

「夜中に殺されそうになったから股座蹴飛ばした」

「いや、それもだが、首が折れているんだが」

「倒れた時に折れたんじゃないの? 」

「そうかもな。で、どうしてこうなったか分かるか? 」

「オレの武器か魔導具が欲しかった。だけど売ってくれない。ならば殺して奪おう」

「はぁぁ、情けねぇな。そんな雑魚かよ。済まなかったな」

「他の人も一緒に騒いでいたよ」

「ああ、こいつらのグループな。よし、分かった」


 どうやら8人中、3人は別のパーティらしく、元々は5人の護衛でやっていたんだそうだ。

 途中の町で必要から護衛を増やしたそうで、その時にあの3人組が加わったとの事。

 今までにも色々とだらしないところを見ていたが、さすがに客を殺して品を奪おうとするなどあり得ないと言われた。

 確かに駅馬車の評判の下落するし、冒険者の評判も落ちる。

 そんな事を思いもせず、欲望のままに殺人を犯そうなんてのは論外だと、オレの主張を認めてくれて不問にされた。


 人を殺したのにな。


 そしてその日の夜、残りの2人も死ぬ事になる。

 仲間の敵討ちは良いけど、こっちは殺されかけたんだから、そんなのが通ると思うなよ。

 なので木刀もどきは2人の墓標になりました。

 いや、思いっ切り叩いたら折れたんだよ。


 2人の首と木刀が。


 ◇


「本当に良いのかなぁ」

「問題ねぇさ。悪いのはあいつらなんだしよ。それよか、まだ冒険者登録をやってないのなら、オレの紹介にしてやるよ」

「何か特典でも」

「そうだなぁ。いきなりEランクスタートだ。本来なら戦闘可能証明を取らないと討伐依頼はやれないが、戦える事をオレが証明するからその上のランクからのスタートになる。そいつを取るには普通は順番待ちになっててよ、それと言うのも3日間の合宿での魔物退治を実際にやらせての試験になる。だから色々と大変なのがパスされる。どうだ、こいつはお得だろ」

「それはありがたいですね」

「よっし、決まりだな。街に付いたら同行してやるからよ」

「ありがとうございます」

「なーに、あんな木の棒で武装した2人の冒険者を倒すんだ。だからその力量は確かだぜ。あんなんでもEランクなんだしよ」


 作ってて良かった、木刀もどき。


 まあ、ナタでの刃傷沙汰じゃ無かったのが幸いしたのかも。

 さすがに刃物同士の戦いになったら不問にはならなかったかも知れない。

 だけどこちらはただの木の棒にしか見えない代物で、相手の2人は人も殺せる武器な訳だ。

 いわばハンデのある戦いなのに、それでも勝利したんだから正当防衛になったんだろう。


 確かに人は死んだけどそれは結果的であり、そのままでは殺せない武器での殺しだからそれを差し引いたんだと思う。

 あいつら3人の武器と装備と所持品は、全て馬車の中に仕舞われて、違約金代わりに接収になるらしい。

 そのうちのいくらかをくれるらしいが、いくら不問と言っても殺しなので、それは辞退しておいた。


「いや、それはさすがに」

「こちらも護衛を減らしてしまった訳ですし、お互いと言う事で」

「ううむ、そうだなぁ」

「その代わり、手が足りない時には手伝います」

「うむ、なればその時に相談とするか」

「はい、それでよろしくお願いします」

「うむ、分かった」


 相手に殺意があった場合、殺しても不問になるとか、そういうのはやはり殺傷武器を持ち歩いているからなのかな。

 確かに今までも態度が悪かったようだけど、それでも今まで事件にならなかったのは、興味を引く物が無かったと言うだけか。

 つまり機会があればいつでもそうなっていたって訳で、そんな奴でも冒険者にはなれるって事か。

 つまり門戸はかなり広くて冒険者の質はピンキリって事なら、上質な冒険者が損をするって事になるな。

 それでも他に同様な組織が無い限りは、我慢するしか無いが、その代わりに命が軽いのかも知れない。

 だから今回の場合でも相手が同じ客の場合では、司法の手に委ねられた可能性がある。


 言わば武器を持ったガードマンに対し、棒切れで対処して殺してしまったって事なので、これはあちらの世界だとどうなるのかな。

 弁護士次第だけど、やはり過剰防衛に問われそうだ。

 なんせあちらの世界じゃ、生きている者が罪って感じなので、余程の戦闘力の違いでも無い限りは無罪にはなり難い。

 その点から言うと、過ごし易い世界とも言える訳だけど、それだけ物騒な世界とも言える。


 それでもまだ、こちらのほうが楽だな。


 武器を持って歩くだけで捕まる世界とか、窮屈で仕方が無いもんな。

 狩りが日常だったのに、山から降りる時には武装を解除して、全部リュックの中に仕舞っての移動とか、いちいちやってられるかよって感じだった。

 まだ田舎だったから良かったけど、そうじゃなかったらナタを腰に提げたままでの移動とか、緊急逮捕の対象にもなりかねない。

 本当にもう、人を見たら犯罪者と思えとか、警官はそんな感じだったもんな。


 ああ、そう考えると、今がこんなに気楽なのはそのせいもあるのかな。

 

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