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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
絆が紡ぐ純愛歌
73/78

3ー21

お待たせ致しました。


正面玄関口には、片膝を着いた清流院さんが、外を睨み付けながら、祓い串を手に、荒い息をしていました。あまり顔色も良くありません。


「清流院さんっ!」


思わず私が口を開いて、悲鳴混じりの声で呼んでしまいます。声により、私達に気付いた彼は、何処かホッとしたような表情になりました。


「皆さん、正直助かりましたよ・・・、一人でのサポートも、そろそろ限界でした」


口調には、力がありません。やはり、肩で息をしているようです。かなりキツイ状態に、変わりはないのでしょう。直ぐに状況を把握した、龍崎さんが動きます。


「白木さんが外ですか、私と矢上さんで加勢します、清流院さん、水島さんと神戸さんをお願いします」


キッと外を睨み付ける龍崎さんと、完全に顔をひきつらせ、これは無いと、力なく黄昏た矢上さんは、対照的です。


「分かりました、お願い致します、何方かの式神が来てくれまして、戦ってくれてるんですが、如何せん・・・敵もさるものでして」


式神? 今、ここに居ない、真由合さんでしょうか? 雅くんにしては、チラチラ見えている式神さんが、派手な気がします。先程から、火がボウボウとあちら此方を燃やしています。いくら異界でも、やり過ぎではないでしょうか?


「異界が消えるにしたって、・・・すげぇ」


呆気に取られている水島くんですが、そんな中、二人は戦闘に向かって行きます。二人が加わった事で、ようやく形勢逆転になったようです。防戦になっていた白木さんが、後ろに下がっています。矢上さんは、同じく後ろでサポートするみたいですし、龍崎さんは手持ちの式神を出して、撹乱しながら動くみたいです。


「あの式神、真由合さんですよね? 近くに来てるのかもしれませんね」


「合流したら、助かるんですが・・・」


清流院さんの憂いを含む表情は、本人がかなりの美成年であるため、かなりの色気を放っています。確か、まだ20代とは聞いていましたが、水島くんが、ちょっとポーッと見とれているのを見て、此方は少し恥ずかしいです。とはいえ、サポート系のお二人は、満身創痍に近く、私は完全に足手まといです。

どうしたものかと、頭を悩ませていたら、ふと、感じ慣れた気配がしました。

ーーーーーあぁ、これで大丈夫です。

思わず、そう感じるくらいの安心感を、この時の私は、無意識に感じていたのです。強張っていた体から、無駄な力が抜けていきます。

と、ボンヤリしていた水島くんが、ようやく、この気配に気付いたようです。


「うん? この気配って・・・」


と同時に、一気に顔色が悪くなります。私も、そして、清流院さんも、同時にそちらを見ました。眼鏡を外した私は、ゆらりと立ち上る、不可視の力が立ち上っているのを見ました。

そう、紛れもなく、この異界が、たった一人の力で、打ち震えているのです。


「何でしょう? 真由合さん、ブチギレしてませんか・・・?」


問うた私の声が、震えていました。


「だよね? だよね!? 何かいつもより、ピリッとした!」


水島さんには、そう感じたようです。明らかに、真由合さんの霊力が、ピリピリしています。どうしてなのかは分かりませんが、外から異界を壊す程の感情とは・・・。


「取り敢えず、異界が消え始めている以上、もう大丈夫でしょうが・・・・・」


何やら、含みを持つ清流院さんです。異界が消える、つまり、現実に戻る訳です。あんな危険なモノを、下手を打てば、逃がす可能性も出てきた訳です。何故なら、異界は、敵にとっては自分のテイトリーな訳です。有利な状況が壊れたら、不利になれば、逃げる場合もあるでしょう。


「ーーーーー大丈夫だよ、多分」


不意に、幼さを含む声が、私達に聞こえました。


「雅くん!」


驚きました。平然と居るんですから。いつの間に来たのか、分かりませんでした。と言いますか、ちょっと不機嫌に見えるんですが? 雅くんに、何かあったのでしょうか?


「真由合さん、張り切っちゃったんだよね・・・」


「えっ!? マジで!?」


水島くんがギョッとしてますが、雅くんたら、不機嫌では無くて、呆れてます!? ですが、清流院さんは、雅くんの態度から、心当たりがあったようです。


「竜前寺くん、もしかして・・・」


「うん」


雅くんが頷いただけで、分かったみたいです。

私や水島くんには分からない、何かがあるんでしょう。ーーーーーたまに、本当にたまに、雅くん達が遠くに感じます。私達の知らない繋がりが、彼らにはあるんです。まだ、出会って少しの私達には分からない、そんな繋がり・・・・・。

考え事に夢中になっていた私は、清流院さんの声で、思考の渦から引き戻されます。


「成る程、ならば大丈夫ですね・・・あれだけヤル気満々なら、人手もありますし、退治するでしょう」


清流院さんが言った内容は、私も納得ですが、ヤル気が、『殺る気』に聞こえたのは、気のせいでしょうか・・・・・??


ーーーーードオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ~~~~~~~~ン・・・


と、急に、凄まじい爆音が襲ってきました。鼓膜が揺れるような、そんな大きな音です。


「うわっ!」


「きゃっ!」


「くっ・・・」


「わっ!?」


全員が急な爆音に、地面に伏せます。清流院さんは、先のダメージがあるからか、一番しんどそうです。爆音と共に、地震のような、ビリビリとした揺れまで感じました。ここは、歴史博物館です。揺れで、飾られていた、美しい品物が、無惨に床に倒れたり、落ちたりしています。

とはいえ、完全に異界が解かれて無かったのが、幸いでしょう。現実に戻ったとしても、被害はないので、大丈夫だと思いますが。


「・・・やり過ぎですよぉ~、真由合さん」


「こえぇ~・・・」


情けない私の声に、水島くんの同じ情けない声がします。ですよね? あれは、怖すぎます! 心臓がまだ、バクバクしています。


「ビックリした・・・」


雅くんは、思ったより冷静でした。清流院さんは、既に外を気にしていました。


「どうやら、終わったようですが・・・・・異界が完全に消えましたね、今の衝撃で」


お二方、冷静ですね・・・。


「取り敢えず、終了かな?」


思わぬ大物退治は、呆気なく終わりを告げたのでした。


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