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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
絆が紡ぐ純愛歌
71/78

3ー19

お待たせ致しました!

さぁ、物語は動き始めました。どうなっていくのか、お楽しみ頂けたら幸いです。

side:榊原 真由合


取り敢えず、花嫁衣装に関する事は、何とか分かったけど、憑依された状態の冴子さんは、お札を持たせても意味が無い事が分かったわ。

まったく、陰陽師泣かせの霊よね。


「真由合さん、イライラすると鑑定に影響が出るよ」


雅さまに、ズバッと言われちゃったわ。年上の面目丸潰れじゃないの・・・。私、貴方の側近なんだけど?


「勿論、そんなヘマは致しませんわ、お任せ下さいませ、今なら逆に、我々でも見えるかもしれませんし」


これは、何となくの勘だけど、あながち、間違ってないと思うわ。本体の核みたいな霊が居ない時、品物は無防備になる事が多いの。花嫁衣装も、あの女性の霊が核のはずだもの。間違いなく、何か見える筈だわ。


「・・・美鈴が拒絶されたのが、気になるんだよね」


「誰だって、隠しておきたい思い出や過去は、必ずありますわ・・・・・あの霊にとっても、見せたくないのでしょうね」


花嫁衣装の彼女の目的は、やり直す事。”幸せな花嫁“を。妻を、家族の幸せを。ーーーーーでは、何故?


「あの一族の過去の事は、資料室にお願いしたし、とにかく彼女を着物に戻さないと・・・印籠とも、関わりがあるみたいだし」


雅さまは、着物に関しての推測は出来たみたいだけど、印籠に関しての方はお手上げね。資料次第っていうのも、何か嫌だわ。


「・・・さぁ、見せてちょうだいね? 貴女の思い出を」


呪文を唱え、着物に集中していく。意識を着物へ向けて、入ろうとした、まさにその時。


ーーーーー余計なことをしないでっ!!


突然、聞こえた女性の声と共に、着物から強烈な衝撃波が放たれ、それを全身に受ける羽目になった。


「キャァーーーーー!?」


ちょっと甲高い声が出たけど、とっさに腕を交差して受身をしたけど、内心、またかっ! って思っちゃったのは、許して欲しいわ。そのまま、勢いよく倒れ込んだ。・・・・・お高い家具にぶつからなくて、本当に良かったわ。下が絨毯だったのも、助かったわ。あんまり痛くないもの。


「真由合さんっ!! 大丈夫!?」


雅さまの声がしたけど、さっきの衝撃波がまだ抜けてなくて、呻き声しか出せなかったわ。


「ごめん、自分の分しか結界、間に合わなくて・・・」


申し訳なさそうな雅さまだけど、あたしは雅さまの護衛であり、側近。雅さまに怪我が無くて、そっちの方にホッとしたわ。ゆっくり体を起き上がらせたら、衝撃波がようやく抜けたのか、動けたわ。


「いえ、ご無事で良かったですわ・・・申し訳ありません、油断しました」


あたしとしても、雅さまに何かあったら、そちらの方が恐ろしいわ・・・。龍崎の怒声に比べれば、自分の怪我の方がまだマシだわ。

あたしも、雅さまも自然と視線は、着物へ向かう。

美しい、誰もを魅了する、魅惑の花嫁衣装。縁起の良い図柄を、着物全体に丁寧に刺繍された、見事な一品よ。


「綺麗な品なんですよねぇ」 


「うん、でも、解決しなくちゃ・・・彼女は、ここに居てはいけないよ」


雅さまの言うとおり、彼女は死んでいるの。本来ならば、心残りを解いて、あの世に送ってあげなければいけないんだけど・・・。

手がかりは、やはりこの花嫁衣装の過去。彼女がやり直すのは、・・・・・あら。もしかして?


「幸せじゃ、なかったから・・・・・?」


「えっ?」


あたしの呟きに反応して、雅さまが驚いたように目を見開いていた。


「雅さま?」


「そっか・・・何で気付かなかったんだろ? やり直すのは、幸せな花嫁! つまり、これが彼女の理想なんだ」


つまり、だ。不幸な花嫁だった彼女は、幸せになりたくて、やり直しているのかしら?


「もしかして、印籠もその時期のものなら、花嫁衣装と離されたから、出てきた・・・なんて?」


何となく、何となく呟いただけの言葉だったんだけど・・・何故か、雅さまの顔色が変わった。


「真由合さん、その可能性、あるかも・・・急いで印籠も確認しよう! 胸騒ぎがするんだ」


胸騒ぎがする、という雅さまに、あたしまで嫌な予感がしてきたわ。まぁ、あそこには清流院がいるし、何かがあっても大丈夫だとは知っているけど、雅さまの勘て、こういう時、何故か当たるのよねぇ・・・。


「あっ、でしたら、着物もお借りしては? 印籠に関係があるなら、何か起きるかもしれませんし」


「そうだね、聞いてみよう」


豊穣さんは、今日は来客のため、自宅に居ると聞いているわ。執事さんが居るだろうし、聞いてみましょう。


「借りれたら、一度、歴史博物館に戻ろう」


雅さまのお願いは、あっさりと叶えられ、我々は歴史博物館へ舞い戻ったの。まぁ、着いて早々、トラブルに向き合う羽目になったけどね!!

何でこんな大物、引き当てるわけ!??



◇◇◇◇◇


side:竜前寺 雅



車は特に問題なく、道を進んでいく。嫌な予感てものは、何故か外れてくれないものだ。

唯一、今回の件で良かったのは、着物をちゃんと持ち出せたこと。勿論、依頼人の豊穣さんから、正式に許可をとった。抵抗されるかもと思ったけど、着物を箱に納めたら、以外にも、邪魔されずに、すんなり外へ出れた。


「箱に仕掛けも何も無かったよね?」


「えぇ、美鈴が確認していましたわ、あの子の目に映らなかった物が合ったとは思えませんわ」


確かにそうだ。美鈴の目は、このメンバーの中で、一番強い。彼女が見えない物があるとは、どうしても思えなかった。


「箱に、抵抗無く入ったからさ、ちょっと拍子抜けしたっていうか、意外というか・・・」


「そうですね、助かったとはいえ、あんまりに素直だと、勘ぐってしまいますわ」


「確かに」


帰りの車は、もうすぐ歴史博物館に到着するという、まさにその時。久しぶりに、心臓がドクリと鳴る。

まさか・・・。


「雅さま? どうされました?」


運転しているのに、こういうのには、直ぐに気付くんだから・・・。とはいえ、今は此方ではない。


「大丈夫、それよりも真由合さん、気付いてるよね?」


今は、こっちが先だ。自然と、空気は真面目な物に変わっていく。


「えっ? えぇ、これはかなりのを引き当てたみたいですね」


「清流院さん達、大丈夫なのかな? 白木さんはまだしも、二人は戦闘には向いてないんじゃ・・・」


「あら、あのメンバーならば、大丈夫でしょう、加勢はしますけど」


運転しながら、真由合さんは片手で器用に印を組み、何かを呟いている。気配が二つ、僕らが向かう先へ向かったから、式神を向かわせたみたい。


「少しはマシでしょう」


まぁ、もうすぐだしね。何て思いながら、駐車場が見えると、かなりヤバイ気配を感じた。ゾクリと毛穴が逆立つような、そんな不愉快な気配。


「駐車場が異界とか・・・何を引き当ててるのよ!」


真由合さんの悲鳴に、僕も思わず、全力で同意したのだった。

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