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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
絆が紡ぐ純愛歌
66/78

3ー14

お待たせ致しました。

今回は、ちょっと短めです。

取り敢えず、お昼にかこつけて、我々は駐車場で、情報交換とこれからの作戦会議です。

因みに、お昼は近くのコンビニから、お弁当を買ってきました。私はサンドイッチとペットボトルのお茶です。

各々が手に取り、お昼は意外とゆっくり過ぎて行きました。

勿論、会話の内容は、先程の新情報です。口を開いたのは、白木さんでした。手には、大盛りのお麩丼と、お握りを複数、持っています。


「中村家、誰が行くの?」


問題はそれです。誰が一番任せられるか、となると、選択肢は多くありません。


「龍崎は決定で」


雅くん、はっきり言い切りました。私も賛成ですし、否やはありません。次に口を開いたのは、真由合さんです。


「矢上さんはどう? どうなるか分からないし、戦力にはなるわよね?」


「えっ? 僕ですか!? が、頑張ります!」


矢上さんが、珍しく慌てているように見えます。あ、膝に置いてたおにぎりが、アスファルトに落ちました。本人は、慌て過ぎて気付いてないようです。


「美鈴さんにも、一緒に来て欲しいですね、我々では視れない何かを気付くかもしれませんし」


龍崎さんの言葉に、珍しく雅くんが、ムッとした顔をしました。


「龍崎、僕も行きたい」


雅くんのしかめっ面は、中々珍しくて、ちょっと驚いてしまいました。


「大人数では行けませんから、諦めて下さい、雅様」


こちらも珍しく、断っていました。龍崎さんが断っているのを見たのは、初めてかもしれません。真由合さんからも、援護がありました。


「雅様、流石に怪しまれてしまいますわ」


真由合さんにも言われて、更にしかめっ面が酷くなりました。とはいえ、流石、長年の側近。雅くんの扱い、は、失礼ですね・・・。雅くんの機嫌を一発で直す術をお持ちでした。

真由合さんは、雅くんの耳元で、何かを囁いています。不機嫌にしていた雅くんの表情は、やや困惑したものに変わり、遂にちょっとだけ恥ずかしそうな、嬉しそうな笑顔に変わりました。

・・・・・真由合さん、何を言ったのでしょうか?


「それでは、此方と、着物班、中村家と別れます、そろそろ彼方も気になりますし」


仕切り直しとばかりに、龍崎さんが進めます。とはいえ、着物鑑定に向かったメンバーは、雅くん以外は中村家です。となると、着物へは自動的に雅くんと真由合さんは決定でしょう。


「私は、此方に残りましょう」


清流院さんが穏やかに申告してくれました。確かに、残る白木さんと水島くんでは、清流院さんが此方に残ってくれるのは助かります。


「俺も残るわ、水島も残るだろ?」


白木さんが言ったので、それぞれの担当が決定しました。


中村家→私、龍崎さん、矢上さん


豊城家→雅くん、真由合さん


歴史博物館→清流院さん、水島くん、白木さん


我々は携帯で、こまめに連絡を取りながら、それぞれの担当する場所へ向かいます。中村家で新しい情報が出る事を期待したいですね。

・・・・・でも、嫌な予感がするのは、何故でしょうか?

一抹の不安を抱えつつ、私は龍崎さん達が待つ、事務所の車へ乗りました。



◇◇◇◇◇


side:竜前寺 雅


まさか、美鈴と違うグループ分けに成るなんて、思わなかった。龍崎は理由を知ってるはずだけど、理由は分かるから、面白くなくて、顔に出てしまった。

そうしたら、真由合さんが、僕だけに聞こえるヒソヒソ声である提案をしてくれた。


「雅さま、来月の別邸への旅行、美鈴を誘ってみては?」


それは、甘美な囁きだった。不機嫌が消えてしまうくらいには。

・・・・・僕だって、子供っぽい事をしたって、自覚はあるんだよ? でも、仕方ないじゃないか。まさか、一緒に行けないなんて、思わなかったんだからさ。

でも、この提案に、吹き飛んじゃった。

来月に楽しみが出来た。ちょっと憂鬱だったんだけど、美鈴が居るなら、気にならないかも。

そのままお昼は終わり、僕は真由合さんと、事務所の車に乗る。

ーーーーードックン

久しぶりに、胸が騒ぐ。何だろう、嫌な予感がする。何が、とは分からないけど、こう、モヤモヤとした感じがある。


「雅さま、どうされました?」


真由合さんが、運転しながら聞いてくる。僕が車に乗ってから、考え込んでしまい、黙ったままだったから、心配させてしまったらしい。


「ごめん、考え込んでた」


「そうでしたか、やはり、来月の別邸への旅行は、楽しみですからね」


うん? どうやら真由合さんは、来月の別邸の件を考えていると思っていたみたいだ。それだったら、どれだけ良かったか・・・・・。


「残念だけど、今回の件についてだよ・・・いつもは、情報課の資料があるでしょ? 所長が判断ミスするなんて、珍しいでしょ? あの人、そっちに特化してるからさ、情報課はどうしたんだろ?」


「あら、それでしたら、簡単ですわ、今回は祓って終わりだと思われていたのです、ところが、蓋を開けてみたら、厄介この上ない・・・・・まったく、後手になるのは面倒ですわ」


嫌そうに真由合さんの眉間に、くっきりと皺が寄る。女性にこの手の話題は禁物だから、僕はそこに触れるつもりはないけど、ちょっと気になる事があった。


「所長がミスするとは、思えないんだよねぇ」


あの喰えない所長が、そんな単純なミスをするはずない。歴史を調べるのは、基本的にやること。それが無かったのは、情報課に別件が来て動けない、とかじゃないかな? 依頼内容は、一見単純なものだし、可能性はある。


「着物自体も、悪いものじゃないから、気付かなかったとか?」


「歴史博物館も、普通に祓えるものだと、思ってましたもの、こんなに厄介だなんて、思いませんでしたわ」


今回はイレギュラー過ぎている。だからこそ、後手に回っているのだから。


「真由合さん、嫌な予感がする」


「あら、奇遇ですわね、私もですわ」


繋がった今回の依頼は、果たしてどちらへ向かうのか。前方に見え始めたお屋敷には、暗雲が込めているようにすら見えた。

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