表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
絆が紡ぐ純愛歌
61/78

3ー9

新年一発目、参ります!

場が乱れてきているわ。息もするのが苦しくなってくるくらい、重苦しい空気が漂ってきているわ。そのせいで、無害なモノ達まで、騒ぎ始めている。これは、かなり不味いわ。


「清流院さん、抑えられる?」


あたしの問いに、彼はあっさり、首を縦にした。まぁ、見習いも居るし、彼なら何とかするわよね。ならば、あたしがするのは、ただ一つ。


「白木、あなたは他の怪しい品物が、これに便乗して騒がないか確認して!」


結構、重要なことよ、これ。なんせ、こんなに場が乱れれば、他のも動く可能性があるんだから。二つも相手なんて、あたしは嫌よ? 今回の印籠だって、中々に骨が折れそうなんだから!


「はっ!? 嘘だろっ!?? 他って、三つだろ!?」


すっとんきょうな声を白木が出すけど、あたしは印籠に向かってしまったから無理だし、清流院さんが場を鎮める為の準備に入ったから、彼も無理。水島くんは、サポート役だし、新人に任せるには荷が重い。経験がある、白木が最適だったの。


「うっわー・・・俺がこれをやるのかよ・・・」


文句を言いつつも、手は動いてるんだから、大丈夫でしょう。その間に、あたしはお札片手に、印籠に近寄っていく。かなり、ガタガタと騒ぎ始めている印籠は、今までの比ではないくらい、濃い闇の気配を纏わせている。


「さぁ、静かにしてもらうわよっ!」


お札を貼ってしまおうと、手を伸ばす。もう少しで、貼れると思った矢先、お札に何かが触れた瞬間、バチバチと凄まじい青白い稲妻が走る。反発する時に起きる現象であり、大きければ大きい程、稲妻も大きくなる。

あら嫌だ、やっぱりこれ、かなりの強さを持つんじゃないかしら!?


「このっ・・・大人しく、貼られなさいっ・・・・・!!」


バチバチと激しい抵抗をする印籠に、何とかお札を貼ろうと更に力を入れる。印籠からは、更に激しい稲妻が放たれ、次の瞬間。

一気に吹き飛ばされた。


「くっ・・・!」


体がくの字になる程の勢いだった。勿論、長年の経験から、咄嗟に受け身は取ったけど、それだけよ。かなりの勢いで投げ飛ばされ、背中から勢いよく壁に当たる。派手な音がしていたから、何かを巻き込んだかもしれない。


「真由合さんっ!!」


一番近くに居た、白木がこちらに来ようとしていたけど、その場から動けないようだ。あっちも、騒いでいるモノを押さえてるんだから、仕方ないわ。逆に一人で全部押さえている白木が凄いわよ。


「ったぁぁぁ~~~~~!!」


衝撃で声も上げられなかった。ぶつかった衝撃が強すぎたわ。いくらなんでも、これはまずい。この場が歪み過ぎれば、白木も近いうちに限界が来てしまう。どうする? どうすべき??

あたしもこれじゃあ、すぐには動けないし・・・。


「お札かります!」


へっ? 予想外の声がして、あたしからお札を取っていった。


「水・・・島・・・っ」


新人くんの背中が見えた。あら、やる気じゃない。あたしは衝撃で声がかすれてるけど、目は見えてるわよ? 彼の足はガクガクに震えてるし、勢い任せだけど、まぁ、悪くないわ。清流院の舞が始まり、場が落ち着いてきた。白木も、押さえているけど、動けはしないだろう。


「いい加減に、静かにしろぉぉぉぉぉーーーーーーーーーー!!!!!」


夜中に中々の声量の怒号が鳴り響く。その勢いのまま、水島くんは印籠に向かっていった。お札さえ貼れば、まぁ、何とか成る。

いや、あたしがしてみせる!

その為には、動けるようにしないといけないんだけど、痛みが抜けない・・・。あら、結構ヤバイかも? ちょっと冷静になって、自分のまわりを見れば、木片やガラスが散らばっていたから、多分、小さな展示用のガラスケースに勢い良くぶつかったみたいね。内蔵系に支障はないはず。なら、ガラスで切ったかもしれないわね。

・・・・・弁償かしら?


「そこだっ! 水島っ!!」


白木の応援が、更に場を盛り上げているわね・・・。本当に仲良くなったわね、二人とも・・・。


「はぁぁぁ」


小さなため息が漏れた。熱血少年のいい場面で、申し訳ないけど、あんたら、怪我人のあたしよりも、新人を心配するってどんだけよ!? 内心でツッコミの嵐よ!??

・・・・・口には出さないでおくわ。空気くらい、読めるもの。


「もう、ちょっと・・・・・っ!」


あ、何か嫌な予感がするわ・・・。何かしら?? ゾクゾクするなんて、嫌だわ。もしかして、嫌な予感が的中する、とか?


「いい加減にっ、しやがれっっっ!!」


その言葉と共に、水島くんは、また少しだけ、印籠に近付いたみたい。まあ、新人くん、やるじゃない。勿論、バチバチという音も、激しく鳴っているわ。あと少しで貼れる!


「水島っ、もう少しだっ!」


白木のその言葉に、鼓舞されるように、水島くんが更に力を込めた、次の瞬間。

凄まじい音、いえ、凄まじい衝撃波みたいな風がきて、何故か妙に一秒一秒がハッキリと見えたわ。そう、水島くんが、“此方に”吹き飛ばされてるとことか・・・。これ、あたしに向かってきてるわぁ。

何て、呑気に頭で考えていたら、あたしのすぐ横に、凄まじい勢いで、吹き飛んできたわ。一応、とっさの判断でか、近くの壁を蹴って、軌道と威力を変えたみたい。受け身もギリギリ間に合ったようね。

・・・・・修行の成果が役に立ったわね、水島くん。確か、修行内容には、武術が入っていたらしいし。ポンポンと吹き飛ばされていたみたいねー。

と、ようやく、場が落ち着いたみたいだわ。感覚としても分かるくらい、息が楽になってきたわ。先程までは、重苦しい空気が漂っていたし。

・・・・・終わったわね。

印籠も、何故か落ち着いてきたし。はぁぁぁ、怪我の巧妙ならいいんだけど。


「すいません、手間取りました・・・大丈夫ですか?」


申し訳なさそうな清流院さんと、遅れて来た白木は、慌てた様子で、水島くんへ向かった。まぁ、怪我人だしね、あたしも、水島くんも。


「ってぇぇぇ~~~~~!?? ちょっ、白木先輩っ、痛い、痛いから~~~~~~~」


あー、良かったわ。あんだけ元気なら大丈夫でしょう。


「榊原さん? 大丈夫ですか?! 榊原さんっ!!」


清流院の慌てた声を尻目に、あたしは意識を手放したのだった・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ