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次回は誠意執筆中です。
「よければ、助っ人呼びましょうか?」
和葉さんの言葉に、最初に飛び付いたのは、真由合さんでした。
「和葉の知り合い?」
「えぇ、私の高校の先輩方ですよ、全員、一流の術者達です」
自信満々の姿から、かなりの術者達なのでしょう。和葉さんがここまでハッキリと、一流と言ったのです。実力はかなりのものでしょう。
「仕方ないね、和葉さん、電話で確認してもらえる?」
雅くんの言葉で、和葉さんが電話で連絡を取り始めます。さて、それをジッと見ている訳にはいかないので、私と真由合さんは一足先に着替える事にしました。雅くんもパジャマなので、結局、皆でお着替えタイムです。
「じゃあ、各自準備が終わったら、ここに集合で」
こうして、私達は一度、解散しました。
◇◇◇◇◇
15分程で全員が、リビングに集合しました。討伐は、霊の活動が鈍る昼間が一番楽なので、この後討伐予定です。
「皆さん、来て下さるそうです」
との、和葉さんの嬉しい言葉により、私達は一先ずホッとしたのでした。しかし、皆さんが来るのは、明日からという事で、本日は先にお風呂場の討伐と、山の確認です。
今は気付けば朝の7時。ということで、依頼者の奥さんより朝食が用意されていました。本日はトーストとスープ、目玉焼きにサラダという、定番メニューでした。勿論、とても美味しかったです。
「さて、風呂場は龍崎に頼むとして、そうすると美鈴は待機してもらって、僕と真由合さん、和葉さんで行こうか」
確かにそれしか無いでしょう。当初の予定では、龍崎さんに山に行って貰うつもりでしたが、風呂場の除霊が必要ですから。
「えっと、私は何をすれば?」
私だけ、待機しか言われていません。確かに、皆さんのように除霊が出来る訳ではありませんが、弱い霊なら、除霊出来るんですが……………。
「美鈴には、ビデオの解析を頼むよ」
あぁ、確かに誰かがやらなければいけませんし、私には打って付けです。眼鏡を外さなくていいですからね。それに、もう一つ。
「分かりました、ついでに、抜け穴も探しておきますね」
茶目っ気たっぷりにウインクして言ったら、何故か雅くんが固まってしまいました。内心焦りますが、すぐに戻って来てくれたので、ホッとします。どうしたんでしょう? 皆さんは理由が分かるのか、生暖かい視線を頂きました。
「じゃ、龍崎、後は頼むね」
雅くんの言葉に、龍崎さんは、しっかり頷いていました。私は龍崎さんとお留守番です。………………実は、かなり心配です。答えは簡単、龍崎さんが苦手だからです。彼の私を見る目は、冷たいものですし。嫌われる理由が分からないので、直しようもありません。
「じゃあ、30分後に出発するから、玄関前で集合」
こうして、朝8時より、私達は今日の仕事に取り掛かるのでした。
私は、ビデオカメラのメモリからデータを確認していく為に、パソコンに向かっていました。場所は1階ダイニングです。本来なら、部屋を一部屋借りる予定だったのですが、コンセントの都合で、ここになりました。既に、依頼者ご夫婦はお仕事に出ていますので、今、この家には、私と龍崎さん、本日休みの、息子さんの颯太さんだけです。
「パソコンは、特に異常は…………」
少しずつ確認していく私は、人の気配に振り向きました。
「あれ? 颯太さん? どうされました?」
気付けば、カップを二つ持った颯太さんが居ました。
「良ければ、どうぞ…………母が作ったハーブティー」
「わあ、ありがとうございます」
そのまま離れると思った颯太さんは、隣の椅子に座って、寛ぎながら、興味津々と言った具合で、パソコンを見ています。
早速、頂いたハーブティーに口付けると、ミントのようです。スースーする独特の味ですが、蜂蜜や他のハーブがブレンドされていて、飲みやすいです。
「あ、美味しい……」
うちでも母がハーブが好きで、たまに飲みますから、分かります。
「でしょ? 母さん、色々試してたからさ、その感想喜ぶよ―――――ところで何してるの? これ、うちの中の様子だよね?」
私の横からパソコンを見る颯太さん、かなり近いのでドキドキします………………。そういえば、異性でここまで近くに居るなんて、滅多に無い事なので、恥ずかしいです。私の通う学校は、共学ですが、こういう事はありませんでしたし。
と、とにかく画面に集中しなくては。
「ビデオやカメラには、霊が映るので、こうやって確認して行くんです、中にどれだけ居るかを確認して、事前に対策を練るのも必要ですからね」
例え眼鏡を着けていても、ビデオには素直に映りますから。ヒヤヒヤしながら見なければなりませんが。
「良ければ、俺も手伝うよ、一人より二人なら怖くないでしょ?」
優しく笑みを見せる颯太さんは、かなり親切な方のようです。普通は気味が悪いと感じるでしょうに……………。でも、確かに誰かが居てくれるのは、本当は凄く嬉しいです。ビデオ確認は、かなり怖くて、でも淡々とした作業ですからね。
「じゃあ、一緒にお願いします」
思わぬところで、単調作業が楽しい一時に変わったのでした。
◇◇◇◇◇
Side:龍崎
はあ、今日は朝から、頭が痛い問題が山積みです。抜け穴から、悪霊は出てくるわ、雅さまの護衛から、不可抗力とはいえ、離れるとか。一体全体、今回はどうなっているのか。
「まずは、虫の退治か…………霊の虫、お香くらいしか効かないな」
実は、低級霊の虫は、市販の殺虫剤等は全く効かない。既に死んでいるからだ。故に、香を炊く。これには、祓魔の効果があり、昔から良く使われて来た方法だ。一応、一通り用意はしてきたから、問題はないが、まさかこんなところで役に立つとは。
「線香………だと、流石に後片付けが面倒だな」
普段なら、気にせず、線香を選ぶが、ここは風呂場。風水なら水が強い場所である。いくら何でも、火の香とは実は相性が悪い。しかし、浄化を意味し、場を清めるならば、お香が適任な訳で。
「印香でも焚くか」
これは、香を型に入れて、目にも綺麗なお香として、有名な物である。今回は、後片付けを考えて、此方を焚く事にする。直接焚く物もあり、今回はこのタイプを利用する。
「後は、式達にお願いしようか」
独り言を呟いているが、周りには先程から、構ってくれとばかりに、式や式神達がクルクルと、自分を囲うように、待ちわびているのだ。
「お前達、頼んだぞ?」
指示を受けて、式神達が我先にと扉を通って行く。後はしばらく待つだけだ。香の力で、無尽蔵な虫達は片付く。
「これなら、後は神戸さんと合流して、抜け道を探せば済みますね」
精密な術を得意とする自分ならではの方法で、さっさと退治するに限る。しかし、やけに悪霊系が多くないだろうか? それも、一体一体がかなりの大物ばかり…………。
――――――もしかしたら、紛れているかもしれない。雅様の鍵を握る、奴等が………………。自分が不甲斐ないばかりに、苦労を背負うあの方を、助けられるならば。
「私は、全力で戦いましょう、雅様」
あの方に、真の力を取り戻させる為ならば。
◇◇◇◇◇
Side:雅
―――……………
何だか呼ばれた気がして、辺りを見渡したけど、何もない。いや、森の中だから、木が辺りに広がっているのだけれど。足元には、舗装された階段等の道があるだけ。道の傍には、名も知らない野草が、白い花を咲かせていた。
「どうしました? 雅さま」
辺りをキョロキョロしている僕に気付いた真由合さんが、心配そうに此方を見ていた。勿論、足は止めていないが。
彼女は、とても心配性だ。事、僕に関しては。普段はお嬢様みたいなのに、術は広範囲殲滅が得意。性格だって、やや高慢な感じだけど、ちゃんと空気が読める素敵な人。服のセンスも素敵だからね。
「今、誰かに呼ばれたような気がして…………」
「呼ばれた、ですか?」
彼女が辺りを見ても、何も居ない。恐らく、気のせいだとは思う。右手に着けた和葉さんの御守りがある限り、霊が手出しをする事は無いのだから。
「気のせいかな?」
流石に自信が無くて、言葉を濁した。
今日、ここに居るのは、僕と真由合さん、そして和葉さんの三人だ。朝のゴタゴタで、急な変更をしたとはいえ、一流の術者が二人も居る。僕もある程度は使えるから、問題は無いはずだ。
「もしかしたら、美鈴ちゃんが呼んだのかもしれませんね」
苦笑混じりに、和葉さんが言うけれど、それは無いと思う。
「美鈴は呼ばないよ、僕の事」
子供としか見てない美鈴は、僕の扱いは、弟みたいな感じだ。実際、弟が居るそうだから、その延長のようなものだろう。
「その様子だと、まだ、話していないのですね、雅さま」
不意に言われた言葉に、僅かに驚いて、目を少しだけ見開いた。
分かってる、美鈴に隠し事をしてるって。でも、言える訳が無いだろう? つい、数ヶ月前まで、一般人として暮らして来た美鈴に、僕の秘密なんて。
「言わないのも、一つの選択です……………けれど、美鈴の力が必要なのも、また事実なのですよ、雅さま」
真由合さんの言葉は、どこまでも優しい響きを持っていて、本当に僕を心配してくれているって、分かるから。余計に申し訳なく思う。
「分かってる…………、美鈴の目が必要だって事くらいっ…………!」
分かっているから、怖くなる。美鈴が、眼鏡無しで僕を見たら、僕の奥底に眠るコレを、美鈴は間違いなく、視る。その時、どんな反応をするか…………それが、一番怖い。
「分かってるんだ…………」
本当は臆病な僕。足を止めるなんて、愚かな真似はしないけど、自然と足は速くなる。
「あら、水の音?」
ザーっと、流れる水の音がしてきた。と言う事は、目的地まで近い。
「雅さま、あちらの方に小道が」
真由合さんの指差すそこには、舗装されていない、土の道が続いていて、入り口に矢印看板で、源流の文字が。
「行こう、このペースなら、お昼前につける」
僕は、心にしこりを残しながら、足を踏み出した。
読了、お疲れ様でしたm(__)m お読み頂きまして、本当にありがとうございます!
ようやく出来ました(;^_^A お正月に時間が出来て、筆が進みました。
ホラーなのに、怖い部分がありませんね。えー、次回は怖くなる予定です。はい、きっと!
皆さんも、怖いシーン等知っていたら、コソッと教えて頂けたら幸いです。
では、また次回、お会いしましょう。




