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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
絆が紡ぐ純愛歌
57/78

3ー5

次回は誠意執筆中です。

予定が決まりましたら、活動報告にて、報告致します。

着物から流れる光の糸は、ほんの数本ですが、冴子さんと呼ばれた女性は、穏やかな優しい姿で、息子さんに微笑んでいます。この異様な空気の中で、それは明らかに異常です。


「うーん、強制的に出すのは、危ないですよね?」


一応、龍崎さんに確認したら、しっかり頷かれました。流石に、息子さんと結婚間近の冴子さんに、怪我をさせる訳にはいきませんし、どうしましょうか? 打つ手が思い付きません!


「龍崎、取り敢えずは、そのままが無難だろう、害はないから」


雅くんが苦虫を噛み潰したような顔をしながら、ため息混じりに言いました。


「そうですね、仕方ありません・・・」


渋々と頷いた龍崎さんですが、眉間の皺は消えていません。明らかに、納得はしていないのです。と、矢上さんが、変な方を見ていました。


「矢上さん? 何か気になる物でも・・・」


聞いていた矢先に、眼鏡を外していた私の目に、とある物が止まりました。キラキラしていたから、気付く事すらなかった、古い木箱です。しかし、大切にされてきたのか、目立った傷もなく、古い飴色になった、特に代わりない普通の木箱です。

でもこれは、大きさからして、花嫁衣装を入れる為の木箱ではないでしょうか?


「あの・・・、この木箱は?」


思いきって依頼人さんに聞いたら、未だに状況についていけないのか、唖然としていました。それでも、声は聞こえたらしく、唖然としたまま、説明だけはしてくれました。


「あ、あぁ、それに花嫁衣装とかんざしが入っていたんだ、かつらは作らないといけないから、かんざしと着物を入れていたんだろう」


成る程、入れ物自体にはいわくはないらしいですね。美しい花嫁衣装を入れる入れ物にしては、質素な箱。私の目にも、特に違和感もなく、どうやら、ハズレらしいです。


「やはり、彼女と話すしかないですね・・・」


小さなため息は、誰にも聞こえず、空気に消えたのでした。



◇◇◇◇◇


side:榊原 真由合


困ったわ、本当に困ったわ。ため息をつくのも、許して欲しいわ。


「みつかんねー・・・」


げんなりしながら、外の駐車場で小さくなっているのは、白木。小さな頃から、例外的に休みの度に修行していた白木は、年若いながら、正式な僧侶の資格を持ち、学校と掛け持ちしている、ある意味、天才なのよね。普通なら、未だに修行してる年なのに。


「まさか、こんなに居るなんて・・・」


水島くんまで、駐車場でぐったりしていたわ。そんな二人を見て、クスクスしているのは、清流院。彼は中々にいい性格をしているのよね。


「博物館ですからね、まぁ、ここは多すぎですが・・・」


苦笑してる彼は、穏やかな微笑を浮かべたまま。とはいえ、彼らの言い分も仕方ないこと。まさか、博物館内部の殆どに、九十九神が大量にいるとは、此方も予想外だったわ。お陰で、全く調査が捗らない。


「まぁねぇ、古い家具や小物が多いからねぇ・・・原因を探す以前だわ」


思わず遠い目にもなったわよ・・・!!


「どうしようかしら? 夜、改めて入るのが、一番なのは分かってるんだけど、検討くらいはつけたいのよね・・・」


和葉が居れば、もう少し楽なんだけど。和葉ならば、物に宿る意思等を読みとく事も出来る。石霊師は、石を生み出し、石の声を聞く一族である。急用が入らなければ、今回は来れたのだが、無理をさせるわけにもいかないのだ。


「・・・まぁ、夜の方が、今よりも凄そうですが」


珍しく清流院まで、微妙な顔をしているところを見ると、やはり、数の多さは異常なのだわ。


「下手に祓えないならば、龍崎と交代したかったわ」


まぁ、人選的に、祓うに適した人材ばかりなのは、正直、助かるが。


「・・・本当にどうしようかしら?」


今日、彼方は仕事だったわよね? 終わったら、来てもらえないかしら?


「榊原さん、ちょっといいですか?」


声をかけて来たのは、先程まで白木とダラーンとしていた、水島くん。何やら、後ろには白木がいて、彼は困り顔だった。


「どうしたの? 水島くん、白木が悪さでもした?」


あたしが冗談半分で聞いたら、白木はカチンと来たのか、明らかにこちらを睨んでいる。とはいえ、口を出しケンカに成らないのは、彼が冗談だと理解しているから。いやはや、頭が下がるわ。


「いえ! 違いますから! 逆に、九十九神に成った存在から、声を聞いたらどうだろうって思って」


水島くん、段々自信がなくなって来たのか、声が小さくなってきた。が、これは新しい発送であり、試すのも十分なものだ。


「それよっ! 水島くん、ナイスアイデアよ! 何で自分達だけで探そうとしてたのかしら・・・あれだけ居るんだもの、人畜無害な彼らから聞けばいいのよ」


やっと方針が決まり、誰もがホッとする。そうよねー、あまりにも多すぎる九十九神、利用しない手はないわ。


「しかし、榊原さん? 九十九神と会話は出来ても、特定したそれはどうするんですか?」


そういえば、皆には方針を言って無かった事を思い出す。嫌だわ、あたしったら。


「ごめんなさい、言って無かったわね・・・見つけたら、まずはお札で封じて、外で祓うわ、流石に、他のモノまで祓うのは不味いでしょうし、だから、結界を頼むわよ? あたしは祓う方で手一杯だしね」


だとすれば、水島くんと清流院、あたし、白木がいれば余裕ね。物に宿るタイプなら、白木が行けるしね。


「んじゃ、九十九神様にお話を聞きに行きましょうか」


何とかなるわね、これで。上手く行けば、直ぐに終わっちゃうわ。

ーーーーーこの時のあたし達は、解決の糸口を見つけた事で、すっかり舞い上がっていた。だからこそ、気付かなかったのだ。今回の依頼が、只の人である、見えない人からである事に・・・。



我々は、見えるからこそ、見落としてしまったのだ。

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