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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
絆が紡ぐ純愛歌
56/78

3ー4

長らくお待たせ致しました・・・。

また、不定期ではありますが、出来たら更新します。

眼鏡を外した瞬間。視界に見えた光景に、流石に驚き、目を見開きました。皆さんが、険しい顔で視ていた理由を、後れ馳せながら、ようやく理解したのです。

着物から伸びた光の紐が、依頼人の息子さんの婚約者、冴子さんに伸びていたのです。数本が絡まる程度ですけど。だから、視界一面が、キラキラした光景に見えたのですね。

更には、顔が別人に見えました。冴子さんのキリッとした感じが消えて、柔和な優しそうな女性の顔で、服装等がチグハグに感じます。顔立ちだけなら、両家の深窓のご令嬢と言えましょう。うっすらと着物が見えるのです。明らかに、憑かれています。


ーーーーーーこれは、生きている人に対して、許されない事です。



「失礼ですが、豊穣さん、どうも彼女の様子がおかしいようですが・・・」


龍崎さんが遠回しに言いましたが、息子さんは気付いていないのか、嫌そうな顔をするばかり。依頼人たる、主人の方も、理解できていないようです。怪訝そうな顔をしています。

普通の方は気付かないでしょう。ただ、静かに見ているだけ、なんですから・・・。意を決して、私が声をかけます。うぅ、依頼人さんや、他の方の顔が、変な人を見る目なんです。しかし、やらなければいけないのです!!


「貴女は着物に居る方ですね? その体は、貴女の物ではありません、どうか、お引き取りを」


私の言葉に、息子さんはムッとした顔をしています。意味の分からない事、なんでしょうね。見えない彼等にとっては。

しかし、我々にとっては、きちんと対処すべき事なんです。例え、理解が得られない事なんだとしても・・・。


「美鈴、彼女、完全に取り憑かれてるよ? 出るつもりはないみたいだ」


「・・・そうですね、予想以上に力をお持ちのようですし」


無理矢理、体から出す方法もありますが、あれは取り憑かれた体の方への負担が大きく、今回は止めた方がいいでしょう。


「何故、その体に入り込んだのです? 何か我々に、話したい事があるのですか?」


祓う事は諦めて、話せるうちに、話してもらった方が良さそうです。幸い、見えている範囲には、悪意やそう言った負のモノは見えませんでした。


「・・・邪魔を、しないで・・・・私の幸せを、邪魔をしないで・・・・・」


綺麗な声でした。美しくも儚い、そんな印象すら受けます。

恐らく、ようやく異変に気付いたのでしょう。社長は驚いた顔をしてますし、婚約者たる息子さんは、唖然としてました。初めて見るので、私の推察ですが、彼女は派手好きの方で、上昇思考も強い感じがしました。しかし、今の彼女は、儚い、今にも消えてしまいそうな、全く正反対の印象を受けます。だからこそ、息子さんも気付いたんでしょう。

性格が違いすぎますもの、今の彼女は。


「さ、冴子・・・?」


動揺、丸出しの声で、彼女、冴子さんに、近付いていきます。見た目はそのままですが、明らかに表情や、まとう雰囲気が違います。息子さんも、気付いたからこそ、いえ、信じたくないからこそ、近くで確認したいのでしょう。


「・・・はい、旦那さま・・・幸せになりましょう」


うっとりとして、息子さんを見る姿は、違和感が凄いですが、何よりも。息子さんの絶望にも似た、その顔からは、信じたくないという、意思を感じました。恐らく、着物に何かあるとすら、思っていなかったのでしょう。

だからこそ、実際に目にして、酷く動揺しているのです。


「だから、散々、申し上げたでしょう、この着物には昔の方が憑いていると」


呆れを含ませた物言いをする龍崎さんに、ようやく理解した依頼人さんと息子さんです。顔色が悪いのは、気のせいではないでしょう。


「憑いているのは、悪い方ではありませんよ、そこはご安心下さい」


一応、フォローだけはしておきます。問答無用で何かされても、後々面倒ですから。


「どうやら彼女は、この着物に憑いて、ずっと花嫁を幸せにしてきたみたいです、だからこそ、着物は幸せのジンクスがついて、大切にされて来たんでしょう・・・今は貴方が持ち主です、つまりは次の花嫁が彼女なんです、幸せな花嫁の」


これは人によるかもしれません。幸せな花嫁となる事を、彼女は約束されました。それを受け入れる事で、恐らくは代々繁栄してきたのでしょう、ーーーーー前の家は。

恐らくは、前の家で花嫁を着物が選ばなかったからこそ、この着物はここへ来たんでしょう。次の幸せな花嫁を探す為に・・・・・。


「これは・・・・・難しい依頼になるかもね」


雅くんの言葉は、ここにいる誰もが感じた事でした。


◇◇◇◇◇


一方で、同じように別の依頼を受けていたあたし達は、最初から頭を抱える事態になっていたわ。


「榊原さん、現実逃避はしないで、戻ってきてくれません?」


今回、一緒に依頼を受けている清流院に、やんわりと言われたけど、今回だけは絶対に無理よ!?


「無茶いわないで・・・、いくらなんでも、これはないわ!」


そう言いたくなる現場だったのよ・・・。文句くらいは言わせて欲しい。

本日の依頼は、とある歴史博物館の『お祓い』を目的としたもの。そう、歴史的な古いものだらけのこの場は、あたしらメンバーにとっては、現実逃避したくなるレベルで、色々居たのよ!


「この中から、悪さをしているモノを見つけ出せって・・・無茶言わないでちょうだい」


頭を抱えたのは、この際、見逃して欲しいわ。古い物は九十九神に変わる。そちらは、だいたいは無害なモノが多い。が、今回の依頼は、そんな中から、悪さをしている物を探しだし、お祓いをすること。間違っても、他の物は祓ってはいけないという、鬼畜な条件がある厄介な依頼よ。


「美鈴が居れば、楽なのに・・・」


違う依頼で居ない、可愛い後輩を思い出す。“視る”に関しては、美鈴はこの探偵事務所で一番強いのだ。もっとも、彼方は鑑定の依頼なので、美鈴は打ってつけの人材であり、此方に来る可能性は、かなり低いけれど。


「仕方ありません、彼方にも依頼があったようですから」


清流院の穏やかな慰めも、今のあたしには響かない。


「今回は和葉も居ないし・・・、清流院さんと白木、後は新人くん、水島くんだったかしら? このメンバーでどうしろと?」


明らかに人選ミスである。視るだけなら、ここに居るメンバーでも問題ない。が、バランスのいい陰陽師ならばまだしも、場を祓うに長けた神道の清流院と水島くん、僧侶の白木は霊を祓いはするが、個人で動くため集団では厳しい。で、たった一つの祓いのために、明らかなオーバー戦力な訳だが、あの所長が人選ミスをする訳がないため、鬱憤すら晴らせない。


「とにかく、館長さんが言う通り、まずは中を見せて頂きましょう」


今現在の場所は、歴史博物館の入り口のエントランス。本日は休館日であり、近くで汗を拭いている、気の弱そうな館長さんと、逆に神経質そうな副館長さんが、此方をしきりに気にしていたわ。まぁ、白木も水島くんも、未成年者だから、あたしと清流院は大人組になるけれども。


「あの二人、思ったより仲が良さそうね?」


「年も近いですし、何よりも社交的だからでは?」


「・・・そうね」


普通、仏教と神道は、あまり仲は良くないはずだが、元々、日本では曖昧な部分があるため、大丈夫だろう。これなら、あちらにも任せられそうだわ。

本日の水島くんの服装は、若者のファッションである、チェックのブラウスにジーパンというルックス。

一方の白木は、僧侶・・・のはずだが、オシャレな今時の若者にしか見えないのよねー。顔立ちも整っているから、たまにスカウトされるって、嫌そうにしてたっけ。


「ならば、始めましょうか」


怪異の始まりを探しに。

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[一言] 悪いヤツなら、問題ないのに!
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