3ー3
次回は未定となっております。
しばらく、時間を開けますので、ご了承下さいませ。
「この着物、憑いてますね」
私がそう言えば、三人が険しい顔に変わりました。龍崎さんなんて、眉間に皺が寄っています。
「すまないが、我々には見えないのだが?」
龍崎さん含め、三人は半信半疑みたいですが、それもそのはずです。だって、このキラキラした光の玉が邪魔をして、魂の輝きを隠しているんです。魂も、かなり清らかなものだからか、同化して見えにくいのです。私が見えたのは、本当にこの目のお陰なだけ。
「恐らく、同化して見えにくいんだと思います、気配とかはしているはずです」
この憑いている方は、長く着物と居るからか、負の感じはありません。だから、余計に分かりにくいのかもしれませんね。完全に着物と同化しています。
「うーん、言われて初めて気付くレベルだよ?」
矢上さんが、かなり微妙な顔をしています。龍崎さん、眉間に皺が寄ってますし、雅くんも首を傾げています。・・・・その姿が可愛いと思ってしまったのは、内緒です。
「流石、美鈴の目だね」
苦笑気味の雅君ですが、どこか困った顔に見えます。そして、次の言葉で、私も気付いたのです。
「これ、お祓いしたら、着物が駄目になるかな?」
これだけ希望等の力が染み付いている着物です。これを取ってしまったら、間違いなく、着物は時を刻んでしまうでしょう。
「そうですね・・・、ここまで良い気が染み付いていますし、急いで祓うのは、あまりお薦めは出来ませんね」
結論を言えば、困った状態の皆さん。しかし、実害は出ていますから、まずは女性の方を見た方が良いかもしれません。私はこの時点で、眼鏡をかけます。色んなモノが見えて、くらくらします・・・。目を制御できないので、視界からの情報が多いのが原因です。皆さんは、きちんと修行してますから、こんなことはおきないのです。
「豊城さん、申し訳ありませんが、息子さんとご婚約者の方にも、お会いしたいのですが」
代表者の龍崎さんが、依頼人さんに御願いしてくれました。そういえば、こちらは豊城さんと仰るんですね。基本的に、依頼人の名前は、リーダー役の方しか知らない場合が多いんですよ・・・。所長、そこら辺は抜けてますからねぇ。本来ならば、来る道中の車の中で教えて貰うんですが、今回は依頼が依頼だったので、抜けたんです。呆れていて、聞き忘れたなんて、恥ずかしいじゃないですか。
「あぁ、呼ばせよう、確か今日は二人とも居たはずだ」
豊城さんの合図で、執事さんの一人が呼びに行きました。本当に、この屋敷には使用人さんは何人いるんでしょうか?
「来るまで、良ければお茶でもどうかな?」
優しげなお言葉で誘われましたが、いいんでしょうか? 視界が落ち着いても、力を使った後は、音や気配に敏感になります。情けない話、あの短時間で疲れてしまったのです。普段から、眼鏡をつけて予防はしても、使えばこれですからね。あの山カフェの依頼の時も、体調は不安定でしたから・・・。まぁ、あまりにも霊が出てくるので、あれはあれで落ち着きませんでしたけど。
「ーーーーーでは、お言葉に甘えて」
あら? 龍崎さんの意外な言葉に、そちらを見たら、逆に心配そうな皆さんの顔がありました。えっと、知らぬ間に心配させてしまったみたいです。そんなに分かりやすいでしょうか?
「美鈴、大丈夫? 体調悪いんでしょう?」
雅くんにまで、コソッと聞かれました。 えっ? 本当に私、どんな姿なんでしょう?!
「顔色悪いよ?」
矢上さんにまで心配されました。そうですか、そんなに分かりやすいですか・・・。いつもの事とはいえ、いたたまれません!
「いつもの事ですから」
曖昧に流し、依頼人さんたる豊城さんのご厚意で、皆で応接の椅子に座ります。美しい彫刻がされた、飴色の木が美しい光沢を放っています。赤い光沢のある生地も、素晴らしいものなのでしょう。この家具も、アンティークでしょうが、手入れをされていますし、フカフカしていて、不快には感じません。
「先程よりも、随分顔色が悪いが、そちらのお嬢さんは大丈夫かね?」
怪訝そうに問われますが、私が口を開く前に、扉のノックの音が鳴り、執事さんに促された若い男女が入って来ました。ただし、全員が微妙な顔になったのは、彼等が原因です。
まず、男性は20歳くらいの年頃でしょうか? お金持ちのお坊ちゃんらしく、一目で一流と分かる白色のスーツ姿に、ビシッと決めた髪。体型は細身ですが、色んなところで、自分は金持ちというアピールがあります。腕時計がキラキラしていて、余計に目が疲れました。
女性の方は、若いのですが、きっちりメイクに、ブランド物の黄色のワンピース姿です。隙のない姿ですが、清楚感はありません。髪型は、茶髪にカールをしていて、胸元くらいの長さです。お綺麗な方なのですが、気が強い方のようです。ブランド物の香水が、離れた場所にもしますので、かなり強く付けていらっしゃるようです。なお、香水がブランドと分かったのは、この前、真由合さんが同じ香りをしていて、聞いたからです。あの時は、素敵な香りでしたが、付けすぎるとダメですね。
お客様ですから、言いませんけど・・・。
「来たか、紹介しよう、息子の倫太郎と、婚約者の冴子さんだ、お前達、こちらが以前話した、探偵の皆さんだ、失礼のないようにな」
紹介されたお二人は、若いからか、もろに顔に出ていました。不愉快と、怪しい者を見る目・・・。お客様と、家長が言ってる以上は、そんな顔は駄目でしょうに・・・・・。
「父さん、いくら何でも、子供までいるところに頼んで大丈夫なわけ? この着物、さっさと捨てちゃえばいいじゃないか」
あ、カチンと来ました。まぁ、女性は場を弁えているみたいで、特に口は出しませんでしたが、視線や態度が不愉快です。
「はぁぁぁ、何て事を言うんだっ!! こちらはちゃんとした活動をしている方々だ、お前よりも真面目にな!」
あ、何か家族の悩みやトラブルに、巻き込まれた気がします
ふと、雅くんの顔を見た私は、彼の顔が険しい事に気付きました。矢上さんも、龍崎さんも、険しい顔で冴子さんと呼ばれた方を見ています。ここで私も、とっさに眼鏡を外しました。まだ、体調は落ち着きませんが、状況として必要と思ったんです。
そうして見えた物には、流石に驚き、目を見開きました。
ーーーーー辺り一面、キラキラした光に、変わっていたんですから。